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2023年9月 【論文】セルロースナノファイバーの細胞影響試験における微生物汚染の影響とガンマ線滅菌による不活性化

(2023年9月29日)

産総研の研究成果として、” Contaminant microorganisms in the in vitro evaluation of cellular responses of cellulose nanofibers and their microbial inactivation using gamma irradiation”と題した論文が、Toxicology Mechanisms and Methods(Taylor and Francis)において2023年8月にオンラインで先行発表されました。

セルロースナノファイバー(CNF)は植物から生産される繊維状ナノマテリアルです。ナノマテリアルの中には、有害なものも知られており、CNFを有効に利用するにはリスク評価が欠かせません。培養細胞を用いたin vitro試験は、メカニズムの解明や動物代替試験として毒性評価で広く行われています。一方、CNFをin vitro試験で評価する場合、細胞に影響を生じる可能性があるため、防腐剤などが添加できない場合があります。植物由来であるCNFには、微生物が混入している可能性があり、工業用途では問題になりませんが、in vitro試験では汚染微生物によりCNFの有害性を誤ってしまうリスクがあります。そこで、本研究では、CNF サンプルの汚染微生物が in vitro 試験に及ぼす可能性を検討しました。HaCaT、A549、Caco-2、MeT-5A、THP-1、 およびNR8383細胞といったin vitro試験に良く用いられる培養細胞に対しての影響を評価したところ、細胞の種類によってサイトカインの誘導などの影響が認められました。このとき、 CNF サンプルから細菌が見いだされ、懸濁液はエンドトキシン活性を示しました。 ガンマ線照射により、CNF 懸濁液に含まれる微生物が効果的に不活化されました。吸収線量が1.0 kGy以下ではCNFへの影響は小く、滅菌効果も得られることがわかりました。本研究では、CNF 懸濁液が微生物で汚染されている可能性があり、CNF本来の影響ではない予期しない影響を引き起こす可能性があることが示されました。 ガンマ線照射は、CNFの生体毒性評価における懸濁液の微生物不活化に有効でした。 CNF の in vitro 評価では、汚染物質の影響に注意する必要がることが示され、CNFの適正な評価に貢献するものです。

本論文は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。

リンク
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/15376516.2023.2238061

(文責:堀江祐範)