(2024年9月18日)
産総研の研究成果として、58th Congress of the European Societies of Toxicology (EUROTOX2024)(2024年9月8~9月11日、Tivoli Congress Center、Copenhagen、Denmark)においてポスター発表により下記の研究報告を行いました。
・発表題目:Assessment of pulmonary inflammation induced by cellulose nanofibrils: Insights from rat model intratracheal instillation study.
・発表者:藤田克英、小原佐和枝、丸順子、遠藤茂寿
これまでの研究において、我々は気管内投与後90日間にわたり、異なるタイプのセルロースナノファイバー(CNF)および多層カーボンナノチューブがラットの肺炎症に与える影響を報告しました(Fujita et al., 2021)。さらなるCNFの吸入リスクを評価するために、本研究では、3種類のCNFをラットに気管内投与し、28日間の肺炎症への影響を調査しました。使用したCNFは、TEMPO酸化CNF(CNF1)、機械解繊CNF(CNF2)、および短尺の機械解繊CNF(CNF3)です。病理組織学的検査の結果、CNF1は肺胞に到達してマクロファージによって貪食されましたが、CNF2とCNF3は細気管支に留まり、肉芽腫を形成することが多く観察されました。気管支肺胞洗浄液の分析では、CNF1群で白血球とマクロファージの増加が認められ、CNF3群では白血球と好中球の増加が観察されました。また、CNF2群では総タンパク質とLDHの増加が見られ、CNF3群では炎症性サイトカインの有意な上昇が確認されました。これらの結果から、CNFの特性(繊維径、繊維長、製造方法など)が肺炎症に与える影響は異なり、CNFを安全に利用するためにはこれらの理解が重要であることが明らかになりました。
本発表は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。
次回の59th Congress of the European Societies of Toxicology (EUROTOX2025)は、2025年にギリシャ、アテネでの開催が予定されています。
(文責:藤田克英)