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2024年11月【論文】セルロースナノファイバーの細胞毒性と生体適合性の評価についての研究報告

(2024年11月18日)
産総研の研究成果として、”Assessing cytotoxicity and biocompatibility of cellulose nanofibrils on alveolar macrophages”と題した研究論文が、Cellulose(Springer Nature)において2024年11月15日付けで発行されました。

セルロースナノファイバー(CNF)は、バイオマス由来の軽量かつ高強度な素材であり、石油由来の素材に代わる有望な材料です。本稿では、CNF製品の安全性評価の一環として、肺胞マクロファージを用いたCNFの細胞毒性試験の結果を中心に、CNF暴露の潜在的影響に関する知見をまとめました。
本研究では、原料供給源や製造工程、物理化学的性質が異なる6種類のCNFを肺胞マクロファージに暴露し、その影響を評価しました。その結果、すべてのCNF暴露群で顕著な活性酸素(ROS)の生成は確認されませんでしたが、一部のCNFでミトコンドリア脱水素酵素活性の増加や炎症性サイトカインの産生が認められ、炎症関連遺伝子の発現誘導も観察されました。一方で、これらの影響が見られないCNFもありました。また、すべてのCNF暴露群で細胞内への取り込みが確認され、参照物質である微結晶セルロース(MCC)とは異なる細胞応答が示されました。さらに、CNF懸濁液中の細菌やエンドトキシンなどの生物学的汚染と細胞への影響との明確な相関は認められず、CNFが顕著な細胞毒性を持たない可能性が示唆されました。
これらの結果から、一部のCNFは肺胞マクロファージを適度に活性化し、他のCNFは生体適合性を示す可能性があることが示唆されました。また、CNFの生体影響には、原料供給源や製造工程、物理化学的性質が大きく関与していることが確認されました。
本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。

リンク
https://doi.org/10.1007/s10570-024-06238-4
オープンアクセスになっていますので、全文を無償で閲覧できます。
(文責:藤田克英)