(2023年8月22日)
産総研の研究成果として、10th International Congress of Asian Society of Toxicology (ASIATOX-X)(2023年7月17~7月20日、NTUH International Convention Center、Taipei、Taiwan)においてポスター発表により下記の研究報告を行いました。
・発表題目:Pulmonary toxicity following the intratracheal instillation of cellulose nanofibrils and multi-walled carbon nanotubes in rats
・発表者:藤田克英、小原佐和枝、丸順子、遠藤茂寿
本研究は、セルロースナノファイバー(CNF)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の肺毒性の評価を目的に、化学修飾(リン酸化CNFおよびTEMPO酸化CNF)および機械的解繊処理によって製造された3種類のCNFと、1種類の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を、3用量(0.5、1.0、2.0 mg/kg)でラットの気管内に投与し、投与90日後までの気管支肺胞洗浄液分析、病理組織学的検査を行いました。この結果、CNF曝露後の急性炎症は時間の経過とともに減少しました。3種類のCNFにおけるこれらの反応の違いは、異なる製造工程に起因するCNFの形状とサイズ分布に関連していたことが分かり、肺に対するCNFの毒性は、直径、長さ、形態、官能基、不純物など、材料のさまざまな物理化学的特性によって評価することが必要であることが示唆されました。さらに、様々なCNFによって誘発された肺の炎症の程度は、MWCNTによって誘発された炎症と比較して低いことも分かりました。本研究で得られた知見は、製造工程や物理化学的特性によって異なる各種CNFの職業暴露レベルを設定する上で有用と考えます。
本発表は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/CNF安全性評価手法」および「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。
次回の11th International Congress of ASIATOX(ASIATOX-XI)は、2026年にMalaysiaでの開催が予定されています。
(文責:藤田克英)
会場のNTUH International Convention Center