1. ホーム
  2. セルロースナノファイバーの安全性評価>
  3. 情報提供等>
  4. 2023年9月 セルロースナノファイバーおよび多層カーボンナノチューブのラット気管内投与による肺毒性についての研究報告

2023年9月 セルロースナノファイバーおよび多層カーボンナノチューブのラット気管内投与による肺毒性についての研究報告

(2023年9月29日)

産総研の研究成果として、57th Congress of the European Societies of Toxicology (EUROTOX2023)(2023年9月10~9月13日、Ljubljana Exhibition and Convention Centre、Ljubljana、Slovenia)においてポスター発表により下記の研究報告を行いました。

・発表題目:Lung burden of cellulose nanofibrils in rats following intratracheal instillation.

・発表者:藤田克英、小原佐和枝、丸順子、遠藤茂寿

これまでの研究において、我々は気管内投与後90日間にわたり、異なるタイプのセルロースナノファイバー(CNF)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)がラットの肺炎症に及ぼす影響を報告しました(Fujita et al., 2021)。肺の炎症は、CNFが肺内に残存することと関連している可能性がありますが、肺におけるCNFの残留性についてはほとんど知られていません。CNFは無色であるため、分光分析が困難でした。このため、本研究では、TEMPO酸化CNFおよび機械的解繊処理によって製造されたCNFをそれぞれ化学染料で染色し、ラットに気管内投与した後、注入後30日および90日にわたってラットの肺を分析しました。肺に残存するCNFは、化学染料の吸光度を測定して推定しました。この結果、CNFを投与したラットの肺において、CNFの有意な減少は観察されず、肺に吸入されたCNFはこれらの臓器から排除されにくい可能性が示唆されました。本研究結果は、CNFの生体内分布と肺からのクリアランスの評価の重要性を強調しています。しかしながら、CNFへの曝露による潜在的な長期的影響とその毒性については、さらなる研究が必要と考えます。

本発表は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/CNF安全性評価手法」および「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。

次回の58th Congress of the European Societies of Toxicology (EUROTOX2024)は、2024年にCopenhagenでの開催が予定されています。

(文責:藤田克英)

 

会場のLjubljana Exhibition and Convention Centre