(2022年9月22日)
産総研の研究成果として、”Potential issues specific to cytotoxicity tests of cellulose nanofibrils”と題した総説論文が、Journal of Applied Toxicology(Wiley)において2022年9月5日付けで発行されました。
セルロースナノファイバー/セルロースナノフィブリル(CNF)は、優れた物理化学的特性を持ち、様々な用途が期待できる新規材料ですが、健康への影響は不明です。その安全性評価のために、特に近年では実験動物に依存しない評価として培養細胞を用いた試験が注目されています。本総説では、CNFの細胞影響試験に関する最近の情報をレビューし、試験評価に関連する問題点を明らかにしました。文献を見ると、様々な細胞株やCNFの曝露濃度で評価されていることが分かりました。また、エンドトキシンや微生物汚染、CNFと細胞培地の相互作用が評価されていない報告も多く見受けられました。そこで、CNFの細胞試験において、(1)エンドトキシンの混入、(2)微生物の混入、(3)培地成分のCNFへの吸着、(4)培地成分によるCNFの凝集・分散状態の変化という、具体的に起こりうる問題について考察し、これらの問題に対して、利用可能な測定方法と解決策について議論しました。これらの問題点を解決することで、CNFの細胞への影響についての理解が深まり、より安全なCNFの開発につながると思われます。本論文は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。
リンク
https://doi.org/10.1002/jat.4390
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(文責:森山章弘)