(2021年10月26日)
産総研の研究成果として、第48回日本毒性学会学術年会(2021年7月7~9日、ハイブリッド開催)においてポスター発表により下記の研究報告を行いました。
・発表題目:リン酸エステル化セルロースナノファイバーの遺伝毒性
・発表者:藤田 克英、小原 佐和枝、丸 順子、遠藤 茂寿
軽量で高強度、低熱膨張性等の特徴を有するセルロースナノファイバー/セルロースナノフィブリル(CNF)は、新材料として期待される一方、繊維状で超微細な特性を持つことから、発がん性のリスクも懸念されています。このため、OECDのテストガイドラインに基づき、細菌復帰突然変異試験(Ames試験)、in vitro染色体異常試験、ラット赤血球小核試験を実施し、化学修飾により作製されたリン酸エステル化CNFの遺伝毒性を評価しました。CNFは、粘度が時間経過やせん断速度とともに変化することから、CNFの繊維長やレオロジーなどの測定が必要です。また、CNFは生物由来であることから微生物汚染防止も必要です。これらの特性に注意をしながら分散調製することが重要と考え、以上3種類の遺伝毒性試験を実施した結果、本研究に供試したリン酸エステル化CNFは、遺伝毒性を示さない陰性と結論しました。
本発表は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/CNF安全性評価手法」および「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。
リンク
https://doi.org/10.14869/toxpt.48.1.0_P-30
来年の第49回年会は、札幌コンベンションセンターでの開催が予定されています(2022年6月30日から)。
(文責:藤田克英)