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2023年12月 COPD病態モデルマウスを用いた先端ナノ材料の肺毒性評価についての研究報告

(2023年12月11日)

産総研の研究成果として、” Effects of advanced nanomaterials on the respiratory system of a murine COPD model”と題した研究論文が、Toxicology Reports(Elsevier)において2023年12月2日付けで発行されました。

セルロースナノファイバー(CNF)やカーボンナノチューブ(CNT)などの先端ナノ材料は、様々な産業での利用が期待されていますが、ヒトの健康への潜在的な影響が懸念され、特に作業環境での安全な取り扱いが求められています。CNTの吸入が肺疾患に関連する可能性が示唆されつつも、そのメカニズムは未解明です。本研究では、CNFとMWCNTに焦点を当て、たばこ主流煙誘発の慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルマウスに気管内投与を行い、28日後の肺炎症への影響を評価しました。80 µgのCNFの気管内投与では肺への影響が小さく、たばこ煙による炎症の回復に支障がないことが示唆されました。一方で、同濃度のMWCNT投与では肺に有意な影響があり、たばこ煙誘発の炎症反応の回復を妨げたことが明らかになりました。本研究から、先端ナノ材料の包括的な安全性評価には、ヒトの健康状態を考慮する必要があり、長期的な影響や炎症以外の毒性評価も今後不可欠と考えます。

本論文は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」の結果から得られたものです。

リンク
https://doi.org/10.1016/j.toxrep.2023.11.009
オープンアクセスになっていますので、全文を無償で閲覧できます。

(文責:藤田克英)