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2015年11月 特定の多層カーボンナノチューブをがん原性指針の対象物質等に追加することについてパブコメ開始

2015年11月17日、特定の多層カーボンナノチューブをがん原性指針の対象物質等に追加することについて、意見公募(いわゆるパブコメ)が開始された。

電子政府の窓口(イーガブ)のパブリックコメントのサイトに『【案件番号:495150224】「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質の一部を改正する件」等に係る意見募集について』として掲載されている。意見受付締切は、2015年12月16日。

追加の対象になるのは、以下の4物質(「エチルベンゼンほか3物質」という)。

① エチルベンゼン

② 4-ターシャリーブチルカテコール

③ 多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)

④ メタクリル酸2,3-エポキシプロピル

エチルベンゼンほか3物質について、労働安全衛生法第28条第3項の規定(厚生労働大臣は、次の化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表するものとする。一 第57条の3第4項の規定による勧告又は第57条の4第1項の規定による指示に係る化学物質【筆者注記:事業者による有害性調査に係る化学物質】 二 前号に掲げる化学物質以外の化学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるもの)に基づき、以下が行われる予定である。

【化学物質の告示】

「労働安全衛生法第二十八条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質を定める告示」を官報に掲載する。「エチルベンゼンほか3物質」が追加される。

【指針の公示】

「労働安全衛生法第二十八条第三項の規定に基づく健康障害を防止するための指針に関する公示(健康障害を防止するための指針公示第26号)」を官報に掲載する。

健康障害を防止するための指針(いわゆる、がん原性指針)については、2014年10月31日に現行指針が公示された際の「化学物質を取り扱う事業者・労働者」向けパンフレットを見ると、どのようなものか理解しやすい。そして、今回のパブコメの概要では、「労働者の健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」の案が示されていないことに気付かされる。

指針では、まず、対象物質等と対象業務を定める。対象物質等は、「対象物質及び対象物質を含有する物(対象物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。)」と規定されることになるので、上記③の多層カーボンナノチューブを含有する複合材(CNTコンポジット)は、その含有量が多ければ、指針の対象となる。この③の多層カーボンナノチューブの場合、対象業務は、「製造し、又は取り扱う業務」と規定されることになる。

なお、従来の指針では、物質名と併せてCAS登録番号を表示していたが、③の特定の多層カーボンナノチューブについて1対1対応する適当なCAS登録番号が存在しない状況で、例えば、「CAS登録番号なし」と表示されることになるのかにも注目したい。ちなみに、米国有害物質規制法(TSCA)に基づく重要新規利用規則(SNUR)では、多層・単層カーボンナノチューブについて「CAS number: Not available.」と記述するか、又は秘匿している。OECDのドシエでは、多層カーボンナノチューブにCAS登録番号の表示は一切ないが、単層カーボンナノチューブに「CAS number: 308068-56-6」と「As-produced SWNT (CAS No. 7782-42-5), generated by the HiPco method」の記述がある。

【厚生労働省労働基準局長通達の発出】

上記③の多層カーボンナノチューブを特定するため、都道府県労働局長等宛てに厚生労働省労働基準局長通達を発出する。

労働安全衛生法の関係で発出された厚生労働省労働基準局長通達は、業務を特定したり、研修を特定したり、値を定めたり、認定基準を定めたりするもので、今回の「がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるもの」を定める通達は、おそらく、初めてであろう。パブコメの概要では、「MWNT-7(名称変更後のNT-7及びNT-7K)」と記述しているが、これは、「製造事業者により当該製品の名称がNT-7、NT-7Kに変更されたため、これら変更後の名称の製品も含む。」(参照)の意味であろう。

(文責:五十嵐卓也)