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2016年4月【速報】特定の多層カーボンナノチューブを「がん原性指針」の対象物質に追加

2016年3月31日、特定の多層カーボンナノチューブが「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針」(いわゆる「がん原性指針」)の対象物質に追加された。エチルベンゼン、4-ターシャリーブチルカテコール及びメタクリル酸2,3-エポキシプロピルも併せて追加された。さらに、厚生労働省労働基準局長通達2件(今回の追加に関するもの、そして、がん原性指針全般に関するもの)が3月31日付けで発出された。

 

【パブリックコメントの結果の公示】

3月31日午前11時頃、電子政府の窓口(イーガブ)のパブリックコメントのサイトの結果公示案件に『【案件番号:495150224】「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質の一部を改正する件」等に係る意見募集についての結果について』が掲載された(→意見募集開始の際の記事)。意見募集結果のPDFファイルには、七つの「御意見等の要旨」が記載されており、うち二つがエチルベンゼンに関するもの、四つが多層カーボンナノチューブに関するもの、一つが名称等の通知の方法に関するものである。これら提出意見を踏まえた案の修正は、なかった。

 

【化学物質の告示】

3月31日付け官報号外第73号の「告示」欄に、厚生労働省告示第125号「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質の一部を改正する件」が掲載された。3月31日15時頃、ウェブサイト「厚生労働省法令等データベースサービス」の「法令検索」に、告示本文新旧対照表が掲載された。この告示によって、以下の4物質が指針の対象に追加され、指針対象物質の総数は、38となった。

  •  エチルベンゼン
  •  4-ターシャリーブチルカテコール
  •  多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)
  •  メタクリル酸2,3-エポキシプロピル

 

【指針の公示】

3月31日付け官報第6746号の「官庁報告」欄に、健康障害を防止するための指針公示第26号「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく健康障害を防止するための指針に関する公示」が掲載された。3月31日15時頃、ウェブサイト「厚生労働省法令等データベースサービス」の「公示閲覧」欄に、公示本文新旧対照表別添(とけこみ版)が掲載された。

指針は、まず、対象物質等と対象業務を定める。対象物質等は、「対象物質及び対象物質を含有する物(対象物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。)」と規定している。指針では、物質名と併せてCAS登録番号を表示しているが、今回追加された特定の多層カーボンナノチューブ(本件MWCNT)の場合は、適当なCAS登録番号が存在しないため、その表示はない。対象業務は、本件MWCNTの場合、「対象物質等を製造し、又は取り扱う業務」と規定している。

本件MWCNT及びこれを含有する物(含有量が重量の1%以下のものを除く。)を製造し、又は取り扱う業務について、指針が求める措置を全て書き出すと、以下のとおりとなる。正確を期す場合には、必ず、指針と関連通達や表示・通知促進指針の原文、さらに、施行期日に留意して最新の労働安全衛生規則を参照されたい。

  • 3(4) 対象物質へのばく露を低減するための措置

ア 事業場における対象物質等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、危険性又は有害性等の調査等を実施し、その結果に基づいて、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
(ア)作業環境管理
① 使用条件等の変更
② 作業工程の改善
③ 設備の密閉化
④ 局所排気装置等の設置
(イ)作業管理
① 作業を指揮する者の選任
② 労働者が対象物質にばく露しないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
③ 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
④ 対象物質にばく露される時間の短縮
イ 上記アによりばく露を低減するための装置等の設置等を行った場合、次により当該装置等の管理を行うこと。
(ア)局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。
(イ)局所排気装置等については、定期的に保守点検を行うこと。
(ウ)対象物質等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染の防止を図ること。
ウ 保護具については、同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、労働者に送気マスクを使用させたときは、清浄な空気の取り入れが可能となるよう吸気口の位置を選定し、当該労働者が有害な空気を吸入しないように措置すること。
エ 次の事項に係る基準を定め、これに基づき作業させること。
(ア)設備、装置等の操作、調整及び点検
(イ)異常な事態が発生した場合における応急の措置
(ウ)保護具の使用

  • 4(3) 作業環境測定

ア 屋内作業場について、対象物質の空気中における濃度を定期的に測定すること。なお、測定は作業環境測定士が実施することが望ましい。また、測定は6月以内ごとに1回実施するよう努めること。
ウ 作業環境測定の結果の記録を30年間保存するよう努めること。

  • 5 労働衛生教育

(1)対象物質等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者に対しては速やかに、また、当該業務に従事させることとなった労働者に対しては従事させる前に、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
ア 対象物質の性状及び有害性
イ 対象物質等を使用する業務
ウ 対象物質による健康障害、その予防方法及び応急措置
エ 局所排気装置その他の対象物質へのばく露を低減するための設備及びそれらの保守、点検の方法
オ 作業環境の状態の把握
カ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理
キ 関係法令
(2)上記の事項に係る労働衛生教育の時間は総じて4.5時間以上とすること。

  • 6 労働者の把握

対象物質等を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者について、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録すること。
(1)労働者の氏名
(2)従事した業務の概要及び当該業務に従事した期間
(3)対象物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要
なお、上記の事項の記録は、当該記録を行った日から30年間保存するよう努めること。

  • 7(3) 危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付

[対象物質等]を譲渡し、又は提供する場合は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の14及び第24条の15並びに化学物質等の危険性又は有害性等の表示又は通知等の促進に関する指針(平成24年厚生労働省告示第133号、表示・通知促進指針)第2条第1項及び第3条第1項の規定に基づき、容器又は包装に名称等の表示を行うとともに、相手方に安全データシート(SDS)の交付等により名称等を通知すること。また、労働者([対象物質等]を製造し、又は取り扱う事業者の労働者を含む。以下同じ。)に[対象物質等]を取り扱わせる場合は、表示・通知促進指針第4条第1項及び第5条第1項の規定に基づき、容器又は包装に名称等を表示するとともに、譲渡提供者から通知された事項([対象物質等]を製造し、又は輸入する事業者にあっては、表示・通知促進指針第4条第5項の規定に基づき作成したSDSの記載事項)を作業場に掲示する等により労働者に周知すること。

 

※労働安全衛生規則第24条の14の規定(ただし、2016年6月1日の改正規則施行によって、例えば、「ロ 成分」が削除される。)
化学物質、化学物質を含有する製剤その他の労働者に対する危険又は健康障害を生ずるおそれのある物で厚生労働大臣が定めるもの(…「危険有害化学物質等」という。)を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に次に掲げるものを表示するように努めなければならない。
一 次に掲げる事項
イ 名称
ロ 成分
ハ 人体に及ぼす作用
ニ 貯蔵又は取扱い上の注意
ホ 表示をする者の氏名(法人にあっては、その名称)、住所及び電話番号
ヘ 注意喚起語
ト 安定性及び反応性
二 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
2 危険有害化学物質等を前項に規定する方法以外の方法により譲渡し、又は提供する者は、同項各号の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付するよう努めなければならない。

※労働安全衛生規則第24条の15の規定(ただし、2016年6月1日の改正規則施行によって対象の規定振りが変わる。)
特定危険有害化学物質等(危険有害化学物質等(法第57条の2第1項に規定する通知対象物を除く。)をいう。以下この項において同じ。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付又は相手方の事業者が承諾した方法により特定危険有害化学物質等に関する次に掲げる事項(前条第2項に規定する者にあっては、同条第1項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方の事業者に通知するよう努めなければならない。
一 名称
二 成分及びその含有量
三 物理的及び化学的性質
四 人体に及ぼす作用
五 貯蔵又は取扱い上の注意
六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
七 通知を行う者の氏名(法人にあっては、その名称)、住所及び電話番号
八 危険性又は有害性の要約
九 安定性及び反応性
十 適用される法令
十一 その他参考となる事項
2 特定危険有害化学物質等を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付又は相手方の事業者が承諾した方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方の事業者に通知するよう努めなければならない。

※表示・通知促進指針第2条第1項の規定(「労働安全衛生法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係告示の整備に関する告示」案のパブリックコメント募集が3月3日に終了しており、当該告示の2016年6月1日適用によって、「ロ 成分」は削除される)
危険有害化学物質等を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、当該容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供する場合にあっては、その容器。以下この条において同じ。)に、当該危険有害化学物質等に係る次に掲げるもの(※「表示事項等」)を表示するものとする。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りではない。
一 次に掲げる事項
イ 名称
ロ 成分
ハ 人体に及ぼす作用
ニ 貯蔵又は取扱い上の注意
ホ 表示をする者の氏名(法人にあっては、その名称)、住所及び電話番号
ヘ 注意喚起語
ト 安定性及び反応性
二 則第24条の14第1項第2号の規定に基づき厚生労働大臣が定める標章(平成24年厚生労働省告示第151号)において定める絵表示

※表示・通知促進指針第3条第1項の規定
特定危険有害化学物質等を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付又は相手方の事業者が承諾した方法により当該特定危険有害化学物質等に関する次に掲げる事項(…)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知するものとする。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として特定危険有害化学物質等を譲渡し、又は提供する場合については、この限りではない。
一 名称
二 成分及びその含有量
三 物理的及び化学的性質
四 人体に及ぼす作用
五 貯蔵又は取扱い上の注意
六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
七 通知を行う者の氏名(法人にあっては、その名称)、住所及び電話番号
八 危険性又は有害性の要約
九 安定性及び反応性
十 適用される法令
十一 その他参考となる事項

※表示・通知促進指針第4条第1項の規定
事業者(化学物質等を製造し、又は輸入する事業者及び当該物の譲渡又は提供を受ける相手方の事業者をいう。以下同じ。)は、容器に入れ、又は包装した化学物質等を労働者に取り扱わせるときは、当該容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装した化学物質等を労働者に取り扱わせる場合にあっては、当該容器。…)に、表示事項等を表示するものとする。

※表示・通知促進指針第5条第1項の規定
事業者は、化学物質等を労働者に取り扱わせるときは、第3条第1項の規定により通知された事項又は第4条第5項の規定により作成された文書に記載された事項(以下この条においてこれらの事項が記載された文書等を「安全データシート」という。)を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により労働者に周知するものとする。

※表示・通知促進指針第4条第5項の規定
事業者(化学物質等を製造し、又は輸入する事業者に限る。)は、化学物質等を労働者に取り扱わせるときは、当該化学物質等に係る第3条第1項各号に掲げる事項を記載した文書を作成するものとする。

 

【指針の改正に関する厚生労働省労働基準局長通達の発出】

4月6日午後、ウェブサイト「厚生労働省法令等データベースサービス」の「通知検索」欄に、3月31日付け基発0331第24号厚生労働省労働基準局長通達「「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」の周知について」が掲載された。この通達の位置付けについて、「本通達はがん原性指針の改正事項のみを示しており、改正指針の全般的事項については別途通達を発出する」としている。

本件MWCNTについては、「多層カーボンナノチューブのうち、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものは、哺乳動物を用いた長期毒性試験で発がん性が確認された、株式会社物産ナノテク研究所、ナノカーボンテクノロジーズ株式会社又は保土谷化学工業株式会社が製造した、MWNT-7(ナノサイズ(直径で概ね100nm以下)のものに限る。以下同じ。)及びNT-7Kであること。」「これにより、MWNT-7又はNT-7K及びこれらを1%を超えて含有する物(以下「MWNT-7等」という。)について改正指針に基づく措置が必要となるが、MWNT-7又はNT-7Kをナノサイズ(直径で概ね100nm以下)を超える粒径に造粒したもの又はこれらが樹脂等の固体に練り込まれている状態のもの等を取り扱う場合であって労働者がMWNT-7又はNT-7Kにばく露するおそれがないときは、改正指針に基づく措置を要しないこと。ただし、当該造粒品や固体等を粉砕する等により労働者にMWNT-7又はNT-7Kへのばく露のおそれがある業務については、改正指針に基づく措置が必要となること。」と規定している。

また、「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドラインについて(平成17年3月31日付け基発第0331017号)」の別表第2を改正し、本件多層MWCNTについては、以下のとおりとしている。
別表第2 労働者の健康障害を防止するために厚生労働大臣が指針を公表した化学物質に係る試料採取方法及び分析方法

物の種類 試料採取方法 分析方法
23 多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。) ろ過捕集方法 炭素分析法又は高速液体クロマトグラフ分析方法

さらに、通達の末尾では、「MWNT-7等を含むナノマテリアルについては、改正指針による措置に加え、「ナノマテリアルに対するばく露防止のための予防的対応について(平成21年3月31日付け基発第0331013号)」によるばく露防止対策等が必要であることに留意すること。」と念を押している。

 

【がん原性指針全般に関する厚生労働省労働基準局長通達の発出】

4月6日午後、ウェブサイト「厚生労働省法令等データベースサービス」の「通知検索」欄に、3月31日付け基発0331第26号厚生労働省労働基準局長通達「「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」について」が掲載された。この通達の位置付けについて、「今般、がん原性指針全体に関する留意事項を改めて示すこととする」としている。以下、この通達の構成を示しながら、本件MWCNTに関連する規定を紹介する。

 

第1 全般的事項

1 がん原性指針の対象物質

2 がん原性指針の対象となる業務等
(1)がん原性指針3(対象物質へのばく露を低減するための措置について)関係
(2)がん原性指針4(作業環境測定について)関係
(3)がん原性指針5(労働衛生教育について)及び6(労働者の把握について)関係
(4)がん原性指針7(危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について)関係

 

第2 細部事項

1 がん原性指針3(1)関係
(1)がん原性指針3(1)ア関係
(2)がん原性指針3(1)イ関係
(3)がん原性指針3(1)エ関係

2 がん原性指針3(2)関係
(1)がん原性指針3(2)ア関係
(2)がん原性指針3(2)イ関係
(3)がん原性指針3(2)エ関係

3 がん原性指針3(3)関係
(1)がん原性指針3(3)ア関係
(2)がん原性指針3(3)ア(イ)③関係
(3)がん原性指針3(3)イ(ウ)関係
(4)がん原性指針3(3)エ関係

4 がん原性指針3(4)関係
(1)がん原性指針3(4)ア関係
(2)がん原性指針3(4)ア(イ)③関係
(3)がん原性指針3(4)イ(ウ)関係
(4)がん原性指針3(4)エ関係

5 がん原性指針4(1)関係

6 がん原性指針4(2)関係

7 がん原性指針4(3)関係
(1)がん原性指針4(3)ア関係
(2)がん原性指針4(3)イ関係
(3)がん原性指針4(3)ウ関係

8 がん原性指針5関係

9 がん原性指針6関係

10 がん原性指針対象各物質に係る留意事項
(5)多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)

 がん原性指針対象となる多層カーボンナノチューブは、平成28年3月31日付け基発0331第25号「「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」の周知について」において示したとおり、哺乳動物を用いた長期毒性試験で発がん性が確認された、株式会社物産ナノテク研究所、ナノカーボンテクノロジーズ株式会社又は保土谷化学工業株式会社が製造した、MWNT-7(ナノサイズ(直径で概ね100nm以下)のものに限る。以下同じ。)及びNT-7K(以下「MWNT-7等」という。)であり、MWNT-7等及びこれらを1%を超えて含有する物(以下「MWNT-7等含有物等」という。)については、がん原性指針に基づく措置が必要となるが、MWNT-7等をナノサイズ(直径で概ね100nm以下)を超える粒径に造粒したもの又はMWNT-7等が樹脂等の固体に練り込まれている状態のもの等を取り扱う場合であって、労働者がMWNT-7等にばく露するおそれがないときは、がん原性指針に基づく措置は要しないこと。ただし、これらを粉砕する等により、労働者にMWNT-7等へのばく露のおそれがある業務については、がん原性指針に基づく措置が必要となること。

なお、MWNT-7等は、炭素製品又は炭素原料の一種であることから、MWNT-7等を製造し、又は取り扱う業務のうち一部の業務については、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)別表第1に規定する「粉じん作業」及びじん肺法施行規則(昭和35年労働省令第6号。以下「じん肺則」という。)別表に規定する「粉じん作業」に該当するため、粉じん則及びじん肺則に定められた措置が必要になること。さらに、「ナノマテリアルに対するばく露防止のための予防的対応について(平成21年3月31日付け基発第0331013号)」に示すところの、ばく露防止対策等(外部への汚染防止や、爆発火災防止対策を含む。)にも引き続き留意すること。

 

第3 物理化学的性質に関する参考資料

 

第4 その他

 

別記 (本通達をもって別記の通達は廃止する。)

 

別紙1 がん原性指針と有機溶剤中毒予防規則及び特定化学物質障害予防規則との関係
※「2 がん原性指針の対象となる業務等」の柱書で参照

 

別紙2   ※「(2)がん原性指針3(4)ア(イ)③関係」で参照

呼吸用保護具

物質名 奨励されるもの(作業環境中の濃度や作業時間を考慮して適切なものを選択すること。) 規格
多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。) 平成21年3月31日付け基発第0331013号「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について」の別紙の3(1)及び(2)を踏まえ、必要に応じて3(4)エ(ア)を参考にする等適切に対応すること。

保護衣、保護手袋等

物質名 奨励されるもの 規格
多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。) 平成21年3月31日付け基発第0331013号「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について」の別紙の3(1)及び(2)を踏まえ、必要に応じて3(4)エ(イ)及び同(エ)を参考にする等適切に対応すること。

保護眼鏡

物質名 奨励されるもの 規格
多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。) 平成21年3月31日付け基発第0331013号「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について」の別紙の3(1)及び(2)を踏まえ、必要に応じて3(4)エ(ウ)を参考にする等適切に対応すること。

 

別紙3 作業環境測定の方法及び測定結果の評価の指標(評価指標)
※「(1)がん原性指針4(3)ア関係」及び「(2)がん原性指針4(3)イ関係」で参照
番号23で本件MWCNTに係る「作業環境測定の方法」と「作業環境測定の方法の詳細(参考例)」を示しているが、「管理濃度等」は、空欄となっている。

 

別添 (別紙の関係事業者団体の長宛て周知依頼)

 

(文責:五十嵐卓也)
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あとがき:我が国でCNTを取り扱う(化学物質自主安全管理の意識の高い)事業者は、おおむね、2009年3月の厚生労働省労働基準局長通達「ナノマテリアルに対するばく露防止のための予防的対応について」による暴露防止対策に加えて、NEDOプロジェクト「ナノ粒子特性評価手法の研究開発」(P06041)の成果である2011年8月の「CNTリスク評価書」で提案されたCNTの作業環境中許容暴露濃度(1日8時間、週5日の暴露で15年程度の作業期間を想定し、10年程度後の見直しを前提とした時限許容暴露濃度)0.03 mg/㎥を用いて作業環境管理に取り組んできたのではないだろうか。作業環境測定に当たっては、必要に応じ、NEDO「低炭素化社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」(P10024)の成果である2013年10月の「カーボンナノチューブの作業環境計測の手引き」等も参照されたかもしれない。今般、労働安全衛生法に基づくがん原性指針において、非常に限られたMWCNTについてではあるが、とるべき措置が明らかにされたことによって、これまで取り組まれてきたCNTの自主安全管理に正当性が与えられたように感じられる。指針に準じた追加的措置を積極的に講じる事業者も少なくないだろう。さらに、「ナノ」というだけで色眼鏡で見られた時代から、CNTもトリクレンやパークレン並みの普通の化学物質として扱われる時代に移りつつあるという見方もできるかもしれない。もちろん、管理を怠れば、普通の化学物質であっても、胆管がん集団発生のような惨事を引き起こすことを忘れてはならないのだが。このがん原性指針の公表を契機として、CNTの普及に弾みがつくことを願う。