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2012年4月 OECD環境政策委員会のナノ廃棄物に関する取組

WPRPWの設置
2011年1月、「資源生産性の向上と持続可能な廃棄物・物質管理を実現するための政策」に関する議論を行う場として、OECD環境政策委員会(EPOC)の下に資源生産性・廃棄物作業部会(Working Party on Resource Productivity and Waste: WPRPW)が設置された。WPRPWが取り組んでいるプロジェクトには、グリーンな成長、資源生産性、物質管理と気候変動、ナノ廃棄物、持続可能な物質管理、廃棄物の経済学、環境上適正な廃棄物管理、廃棄物の越境移動などがある。

 

1回会合の開催
WPRPWの第1回会合は2011年6月21-22日に開催された。同会合に先立ち、前年にナノ廃棄物の対象設定調査が、オーストラリアの専門家に委託され、同会合で結果が報告されたようである。同会合の議事次第案では、ナノ廃棄物に関する議事について以下のように説明されている(注)。

議題4 ナノ廃棄物の対象設定調査

● この論文を準備するため、事務局は、オーストラリアのWorkCover New South Walesに所属するナノテクノロジーに関する技術専門家、Jeremy Allan氏と契約した。彼は、オーストラリア政府の会議開催要請を通じて参加し、彼の論文をこのグループで発表する。
● WPRPWにおける将来の作業に関する議論を更に助けるため、OECD環境局のKristan Markey氏がナノ材料作業部会(WPMN)における関連作業の概要を報告する。
● 事務局は、議場配布文書「ナノ廃棄物に関する将来の活動へのアイディア」を発表する。

調査の結論では、WPRPWが取り組むべきテーマとして、以下が挙げられた。

  • 社会的責任の課題(もし、社会に利益になるならば)
  • 分類の枠組み
  • 実験室での自然生態系モデル
  • ライフサイクルアセスメントと産業からの排出
  • ナノ材料の量的増加に対応するデータ調査

これを受けての議論では、以下に集約されたようである。

● ナノ廃棄物に関するデータ不足(生成、影響、関連する費用)

  • 政策決定の強固な基盤としての追加的情報
  • どのような政策が必要なのかを特定すること(エコデザイン手法又は予防原則を用いた予防?)
  • ナノ廃棄物のヒト健康と環境に対するリスクと潜在的危険性を評価すること(化学物質試験のためのOECDテストガイドラインだけでなく、廃棄物に係る既存の危害分類・リスク評価手法は、ナノ廃棄物にも適用可能か?)

● 環境上適正なナノ廃棄物管理に関するデータの欠如

  • 既存の環境上適正な廃棄物管理に関するOECDガイダンスは、ナノ廃棄物にも使えるか?

● ナノ材料の経路に関与する関係者の認識の欠如(生産者、消費者、廃棄管理者、規制当局等)

  • ナノ製品の透明性と持続可能な生産・消費を確保するため、何らかのガイダンスが有用かもしれない

● 化学物質のために設計された現行の規制の枠組みは、ナノ廃棄物にも適切か?

  • ナノ廃棄物のための適正な規制の枠組みの特定に向けた国際協力の必要性

 

ドイツでワークショップを開催
こうした議論を踏まえ、OECDとドイツ連邦環境・天然資源・原子力安全省(BMU)の共催で、2012年5月9~11日にミュンヘンで「ナノ廃棄物の安全な管理」と題するワークショップが開催される(プログラム案へのリンク)。このワークショップの主要な議題は、以下のとおりである。
● ナノ材料含有製品及び放出されたナノ材料の潜在的リスク
● 廃棄物管理と廃棄物に含まれるナノ材料の環境中運命

  • 既存の廃棄物処理と関連する工程の見直し:埋め立て、排水残さ処理、焼却、リサイクル
  • 廃棄物管理とナノ材料の環境中運命

● ナノ材料(ナノ廃棄物を含む。)の環境暴露の計測
● ナノ廃棄物が提起する問題の明示
● OECD加盟国及び国際機関においてナノ廃棄物に関して現在何が取り組まれているのか?
コメント

欧州のRoHS指令は、いわば、EUにおける廃棄物規制行政の一つの有力な法的ツールであるが、このRoHS指令の改正案を審議する過程で、特定の学説に基づいてナノ銀と「長い」多層カーボンナノチューブが規制対象として提案され、あわや実質使用禁止になりかけたことは記憶に新しいところである。上記のようなOECDのナノ廃棄物に関する取組にもナノ材料開発者は注視していくべきだと考えられる。

 

注)米国環境保護庁の参加報告を参考にした。このリンクをクリックすると、中国語のフォントをダウンロード・インストールするかどうか尋ねられる場合がある。しないと、表紙だけは文字化けするが、本文は問題なく読める。