(2016年8月23日)
TASC研究成果として、第43回日本毒性学会学術年会(2016年6月29日~7月1日)において、下記3件の研究報告を行いました。
(1)「細胞試験による多様な多層カーボンナノチューブの有害性評価」
発表者:福田 真紀子、遠藤 茂寿、丸 順子、加藤 晴久、中村 文子*、篠原 直秀、内野 加奈子、藤田 克英(*産総研)
(2)「分光学的手法によるラット肺中のカーボンナノチューブ含有量の評価」
発表者:丸 順子、遠藤 茂寿、藤田 克英
(3)「気管内投与試験における投与法の違いによる肺炎症の検討」
発表者:森本 泰夫†、和泉 弘人†、吉浦 由貴子†、藤嶋 けい†、丸 順子、遠藤 茂寿、藤田 克英、本田一匡(†産業医科大学)
(1)は、性状の異なる4種類の多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNT)を同様な濃度と長さに調製し、肺胞マクロファージに暴露した結果、多様な細胞応答が引き起こされることを明らかにしたものです。この結果は、一言でMWCNTと言っても、その物理化学特性によって、有害性に差異をもたらすことを示唆しています。
(2)は、MWCNTおよび単層カーボンナノチューブを気管内投与したラット肺内のカーボンナノチューブ(以下、CNT)含有量を測定し、これらの肺内残留特性(肺クリアランス)を評価したものです。ラット肺内のCNT含有量の測定は、演者らが新たに確立したタンパク質分解酵素と超音波処理による試料調製と分光学的な方法によるものです。この結果、いずれのCNTにおいても、投与後1日目に減少が認められましたが、90日及び180日までの肺内CNT含有量には、明確な減衰が見られず、長期間、CNTが肺組織に蓄積されていることが分かりました。すなわち、投与直後を除き、投与したCNTの種類に関わらず、その多くは肺から排出されないことが明らかになりました。
(3)は、気管内投与試験の基礎的検討を目的に、肺内炎症を指標として、その投与法の違いを検討したものです。3種類の方法(ゾンデにて垂直方向、スプレー式ゾンデで垂直、スプレー式ゾンデで傾斜45度)にてラットにMWCNTを気管内注入し、1日および3日後の肺の炎症を検討した結果、肺内炎症に顕著な影響に差異を及ぼさなかったことを明らかにしました。
リンク(抄録を閲覧できます)
(1)http://doi.org/10.14869/toxpt.43.1.0_P-13
(2)http://doi.org/10.14869/toxpt.43.1.0_P-210
(3)http://doi.org/10.14869/toxpt.43.1.0_P-211
(文責:藤田克英)