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2016年9月 欧州毒性学会(EUROTOX)第52回年会報告

(2016年9月16日)

欧州毒性学会(EUROTOX)第52回年会が、2016年9月4日から7日まで、スペインセビリアで開催されました。欧州毒性学会は、シンポジウムやポスター発表、展示会を中心に、例年9月に年会が開催され、毒性学に携わる各国の企業、大学、研究機関、政府の関係者が多数集います。今回の年会の公式参加登録者数は、1,000名以上と報告されています。なお、当初、開催地はトルコイスタンブールでしたが、テロの影響を考慮してセビリアに変更になりました。

口頭発表およびポスター発表において、カーボンナノチューブやグラフェン等のナノ炭素材料の有害性評価についての報告や発表、それに対する質疑応答から、研究内容や本プロジェクトに対する種々の質問やアイデアなどを得ることができました。

Nanotoxicologyに関するセクションは、シンポジウム(Nanosafety: Present and future、5題)、ポスターセッション(Nanomaterials、50題)で構成されていました。CNTに関する研究発表では、ヘルシンキ大学によるCNT吸引ばく露による肺の免疫毒性(Alenius, Immunotoxic and pulmonary effects of engineered nanomaterials)や、デンマークナノ安全センターらによる工業ナノ材料による発生毒性(Hougarrd et al., Development toxicity of engineered nanomaterials)がありました。前者は、マウス単回吸入法により、棒状の多層CNTでTh2型の方がTh1型に比べ上昇が認められたことから、CNTの形状により、免疫毒性のパターンの違いが認められたというものでした。

ポスタ-発表では、金属ナノ酸化物(銅、亜鉛、二酸化チタン等)が多く、CNTに関しては、発表キャンセルが多く残念でした。グラフェンのインビトロ試験結果(Farcal et al., In vitro and in vivo investigations to obtain validated toxicity data of graphene nanoplatelets)がありました。6種類のグラフェンと1種類のグラファイトを超音波処理で調製した後、RAW264.7, primary rat macrophage, MRC-5で細胞試験を行った結果、単層のグラフェンが最も毒性が高かった(RAW264.7において)とのことです。試験を始めて約半年のため、あいにく培地中のグラフェンのキャラクタリゼーションがまだ行われておらず、細胞試験結果との関係性について明確な説明を得ることができませんでした。

TASCでの研究成果をポスター発表(Effects of short single-walled and multi-walled carbon nanotubes on pulmonary and pleural inflammation)し、これに対する質疑応答から、研究内容やプロジェクトに対する種々の質問やアイデアなどを得ることができました。本研究は、比較的短く調製した単層CNTおよび多層CNT(Mitsui-7)のラット気管内投与90日までの肺および胸腔の炎症をエンドポイントとする毒性影響評価をまとめたものです。比較的短く調製した単層CNTは、多層CNTに比べて肺での初期の炎症は強いが、胸腔での炎症は弱いことが分かりました。また、走査型電子顕微鏡観察により、両被験材料が投与後90日目に縦隔リンパ節で確認されたことから、比較的短く調製した単層CNTおよび多層CNTは、肺から胸腔を経てリンパ液を介して移行することが示唆されました。

来年の第53回年会は、スロバキアBratislavaでの開催(2017年9月10日から13日)が予定されています。

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会場となったFIBES, CONFERENCE AND EXHIBITION CENTREでの様子

(文責:藤田克英)