はじめに
産総研-水系暴露解析モデル(AIST-Standardized Hydrology-based AssessmeNt tool for chemical Exposure Load,通称AIST-SHANEL)は、気象データ、化学物質の排出量、基本的な物性(分子量、蒸気圧、水溶解度、Koc、半減期)を入力し、1kmメッシュ単位の月ごとの河川流量、河川水中濃度、河川底泥濃度を推定するモデルです。
2004年9月に、多摩川水系をはじめとする4水系を対象としたAIST-SHANEL Ver.0.8を公開、2005年11月には、日本の主要な広域13水系を対象としたVer.1.0を公開しました。その後、対象水系を全国1級109水系へと拡張し、排出量推計の精度向上も図り、2010年10月にVer.2.0の公開に至りました。2012年4月には、Ver.2.0にバックグラウンド濃度の入力および溶存態と懸濁態の各濃度の出力機能を追加し、Ver.2.5として公開しました。
2015年10月に、これまでの3次メッシュ別に月単位で河川水濃度を推定する定常解析モデル「3次メッシュ一級水系版」と,時間解像度を日単位,空間解像度を250mとした非定常解析モデル「250 mメッシュ全国水系版」の2つで構成されるVer.3.0を公開しました。Ver.3.0では、日常的に排出される化学物質の水系リスク評価だけでなく、事業所等における化学物質の漏洩事故のリスク評価にも対応できるようになりました。
本モデルを活用することにより、1つの水系から全国の水系まで、リスクの高い地域や時期を推定することが できます。また、観測値がない地域の河川水中濃度も推定できます。さらに、業界の排出量削減対策や下水処理除去率の向上による濃度低減効果も推定することができます。
化学物質を取り扱っている企業や国、地方自治体、教育機関、NPO等の方々が河川流域における化学物質のリスク評価を行うときに、本モデルがお役に立てることを願っております。