RISCAD Update 2019年11月第5週【週刊化学災害ニュース】

2019/11/22 12:00 – 2019/11/29 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2019年12月04日 10時00分

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*2019/11/22発生の、佐賀・金型工場で機械から火災
:工場の天井の一部と稼働中の加工用機械が焼損。何かの原因で焼損した機械から出火した可能性

*2019/11/25発生の、東京・警視庁の研究所で薬物鑑定装置から液体ヘリウムが気化して噴出
:何かの原因で薬物鑑定装置に充塡された液体ヘリウムが気化して噴出。庁舎の窓ガラス2枚が破損し、破片が歩道に飛散したが、通行人などにけがはなかった

*2019/11/25発生の、北海道・美容室で給湯器の排気による一酸化炭素中毒
:従業員3名が一酸化炭素中毒による体調不良で病院に搬送された。何かの原因で給湯器の給排気筒の先端が破損し、店舗内が十分に換気されなかった可能性

*2019/11/27発生の、米国・石油化学プラントで爆発、火災
:合成ゴムや樹脂の製造に使用するブタジエンなどを製造する工場。爆発は2度起き、さらなる爆発や有害な煙による健康被害が起きる可能性があるため、同工場から半径約6.5km以内の住民約6万名に避難命令が出された

*2019/11/28発生の、福岡・工場でマグネシウム合金切断作業中に火災
:マグネシウム合金の切断作業中に、何かの原因で出火した可能性

*2019/11/28発生の、福島・ごみ処理施設の不燃廃棄物置場で火災
:廃棄物置場には、10月の台風の影響で発生した水害で出た災害廃棄物が保管されていた。何かの原因で廃棄物から出火した可能性

今年2月に、東京都で以下の事故が起きました。
2019/02/12 東京・食品会社の冷凍冷蔵倉庫で配管工事中に火災
食品会社の7階建ての冷凍冷蔵倉庫で配管工事中に火災が起きた。消防車など62台が出動して約8時間半後に消火したが、同倉庫の5階部分約1,000平方mが焼けた。建物内の作業員ら約40名のうち作業員8名が逃げ遅れてヘリコプタなどで救助され、うち4名が病院に搬送されたが,3名が死亡し、1名が軽傷であった。影響で近くの空港の滑走路4本のうち1本が約2時間にわたり閉鎖され、一部の便が遅延した。警察と消防の調べでは、5階の冷凍機の入替のため、直上階である屋上と外壁付近で工事業者による配管の溶接工事中で、溶接火花で可燃物に着火した可能性がある。
この事故について、警視庁が作業にあたっていた溶接工を書類送検しました。溶接工は「渡り」と呼ばれる金属棒を設置することによるアースを忘れた可能性があると供述しているそうです。

送検内容は、溶接工事の際に金属棒を使用したアースを設置しなければならなかったところ、設置を忘れたため「迷走電流」が発生し、それにより火災を発生させた業務上失火容疑、その火災により作業員3名を死亡させた業務上過失致死容疑とのことです。

原因として、「迷走電流」という聞きなれないワードが出てきます。

「迷走電流」とは、何かの原因で意図せず回路や電子機器から外部に漏れてしまう電流のことです。この事故においては、電気溶接時にアースを設置しなかったことにより、溶接する母材(溶接するもの)全体が溶接機を中心とした大きな電気回路になってしまい、溶接作業が行われていた7階建て倉庫の屋上から約20m離れた5階の壁が迷走電流により加熱し、その熱で壁内部の断熱材が着火して火災が発生したとのことです。

書類送検された溶接工は職歴40年のベテランであったとのこと。経験や慣れが原因となって起きてしまった事故だったのでしょうか。
さんぽニュース編集員 伊藤貴子