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「事故分析手法PFA®」を活用した「事故進展フロー図」作成に携わって【のぶさんのさんぽ道(SANPO-DO)】by 中島農夫男

さんぽコラム のぶさんのさんぽ道(SANPO-DO)
「事故分析手法PFA®」を活用した「事故進展フロー図」作成に携わって
中島 農夫男

投稿日:2017年06月18日 09時00分

*事故分析手法PFA®(PFA:Progress Flow Analysis)

 化学系民間会社の退職後に産総研にご厄介になりました。比較的長く勤めた石油化学系コンビナートの工場やビジネス街の姿とは別世界の感がします。緑多き木々の間の静寂な研究施設には四季のそれぞれの良さがありますが、特に秋は落葉や苔を踏みしめながら通勤する落ち着いた仕事場です。化学産業出身者として主に事故進展フロー図作成に携わっております。

 産総研では、化学産業の事故事例を集めた化学災害情報データベースを公開していますが、複雑な事故の理解支援に一部の事故例について時系列で整理し、原因を分析した「事故進展フロー図」を作成して収録しています。主に国内の大事故について作成していますが、一部は海外の事故調査報告情報も分析し収録しています。

 海外では、米国のCSB(Chemical Safety Board)のように政府専門の独立した事故調査機関が年に数件を深く調査して事故の根本原因、行政機関や業界団体の現在の規則やガイダンスの有効性、さらには緊急時対応の行動も含めて社会への影響を把握して国、地域の保安対策向上につなげているものもあります。化学物質管理や技術上の問題解明が有益には違い無いのですが種々の保安管理プログラムを動かしても大事故に至ったり、ルールや行政システムが有効に機能されなかった調査結果等も改善と向上の示唆となります。何が起きたのかを時系列で編集して上流にさかのぼり具体的な気付き情報を利用者にお伝えすることが最後の引き金事象や事故の回避成果につながるものと期待をいたしております。何がいけなかったかからは基本的なことが浮かび上がります。

 最近作成した事例では、

・材料技術/触媒技術の変化/進化の見直しが無いままの旧い技術基準と保安管理
・運転と現場確認の基本が欠けたまま机上の保安議論を繰り返した定期的保安活動
・協力会社を含む工場の組織間連携、情報伝達が不足した変更や作業の管理
・縁切り方法と維持管理が不適切で液密閉化が生じて安全装置を有効に働かなくした設備等

が見受けられました。

 変更管理やリスク評価等の保安管理システムの活動は定着し、実施されておられると思いますが、活動ありきに振り回されている懸念も米国の事例にはみられます。多角的に潜在リスクを深堀するための活動構成員や方法等の質が問われてきている感がいたしております。

中島 農夫男 / Nobuo NAKAJIMA

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 客員研究員

化学系民間会社で事業と技術のライフサイクルの各ステージを広く薄く携わった後、産総研にて事故情報収集と原因分析業務などに従事しております。
事例の物語風編集で”気づきセンス”の研ぎ澄ましにお役に立てればと思っています。