現場安全力の保存に向けて【月刊災害情報アーカイブス】by 若倉正英

※このコラムは特定非営利活動法人災害情報センターの会誌「月刊災害情報」に掲載されたコラムを再掲したものです(コラム内の情報は掲載当時のものです)。

月刊災害情報アーカイブス
現場安全力の保存に向けて
若倉正英

投稿日:2019年2月26日 10時00分

※月刊災害情報 2012.6 Vol.25,No.3 から転載(一部修正)※

  安全工学会ではコンビナートの工場長さんたちとの意見交換会を始めている。事業所のトップの方々が抱えている問題点や、うまくいっていることなどを、安全に絞って共有しようという試みである。意見交換の場で感じるのは、工場長さんたちが、時には悩みを感じつつ安全に心を砕いている真摯な姿勢である。そして、多くの方々が安全については、もっと情報を共有してもいいのではないかといわれる。これは重要な課題であり業界団体や学会が協力して、情報共有の仕組みをつくる必要があるだろう。

  中でも大きな問題は人である。現場力の要であるベテランの引退による技術伝承問題が片付くその前に、引退者の穴を埋めるため多くの若者が現場に投入され、その教育が課題となっている。教育については当センターの理事長である田村東大名誉教授が“初等中等教育から高等教育、大学教育、そして企業の教育まで”大きなフレームでの提案をされており、次回以降ご執筆いただきたいと考えている。

  今回はもう少し足元の教育に関する教材をご紹介したい。

  入社数年の人々に、現場の基本事項を理解してもらうために作成した「化学プロセスの安全1 プロセスの運転安全」(災害情報センター/安全工学会 監修、みみずく舎 刊)である。製油所や化学工場の安全管理や設備管理の経験者がトラブル事例や事故事例を使って、これだけは知っておいて欲しいと思う項目をQ&Aの形でまとめている。また、著書の方々は文章をできるだけ少なくし、イラストを入れるなどして“疲れずに読めて、気がついたら現場の常識をマスターしている”ことを目指して執筆をすすめたということである。

若倉 正英 / Masahide WAKAKURA

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 客員研究員
特定非営利活動法人保安力向上センター センター長

産総研での事故分析や保安力の評価などに従事。モットーは、”遊びと仕事の両立”。