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横目で見たアメリカの連邦行政機能の保安・安全改善活動(その1/3)【のぶさんのさんぽ道(SANPO-DO)】by 中島農夫男

さんぽコラム のぶさんのさんぽ道(SANPO-DO)
横目で見たアメリカの連邦行政機能の保安・安全改善活動(その1/3)
中島 農夫男

投稿日:2017年10月25日 15時00分

 米国の大統領が替わりまして、前大統領署名のルール替え意志の強い新大統領の政策混乱期に、前大統領の保安ルール改善指令の施行継続が危ぶまれる懸念もありますが、関連した化学施設事故の「事故進展フロー図」を作成した関係からICTを活用した保安課題の改善活動がワークフレームや組織体の俊敏性思考の参考になると思い、その報告から知りえた是正の一端を述べてみたいと思います。

1, 大統領令発令の背景となった事故
・2013年4月17日(水)20時頃、テキサス州の肥料小売り倉庫で肥料用硝酸アンモニウム(推定量約30t)が爆発し、死者15名(内、消防士12名)、負傷者260名以上、学校を含む建物150件以上の損壊を招いた。保安ルール上は、小売業が免責対象(労働安全)や規制対象外物質(環境汚染)であった。
(参考:2015年8月12日(水)中国の天津港危険物倉庫の事故では、保管硝酸アンモニウム800tの爆発があり、死者行方不明者173名(内、消防士104名)となった。)

・2012年8月6日(月)15時50分頃、カルフォルニア州製油所で原油処理装置の炭素鋼配管が硫化腐食で開裂し、噴出炭化水素が大きな白雲となって風下の市民約15,000名の診察や治療被害となった。事故調査では、ルール遵守が製油業界の効果的な大事故防止に至っていないとした。

・2010年4月2日(金)真夜中頃、ワシントン州製油所のガソリン製造工程の炭素鋼製熱交換器が清掃後の復帰操作段階で破裂し、火災で従業員7名が死亡した。破裂原因は,高温高圧水素による水素脆化であった。水素脆化の業界技術基準(通称ネルソンカーブ)の安全範囲で運転されてきたが、炭素鋼の適用範囲が不適切なことが判明した。

2, 大統領令(2013年8月1日発令)“化学製品施設の安全と保安のルール改善” 要旨
・化学製品のハンドリングと貯蔵の悲劇は、“危険性無し”とは言えない
・行政機関が利害関係者や従業員と協力し化学施設の安全施策の一層の向上を図る
・国土安全保障(DHS)、労働安全衛生(OSHA)、環境保護(EPA)の
合同作業部会を軸に司法、農務、運輸等の関係機関が参加して取り進める

とした。

RISCAD登録事例
米国の肥料工場で火災,爆発 – RISCAD(2013年4月17日)
米国の製油所で火災 – RISCAD(2012年8月6日)

中島 農夫男 / Nobuo NAKAJIMA

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 客員研究員

化学系民間会社で事業と技術のライフサイクルの各ステージを広く薄く携わった後、産総研にて事故情報収集と原因分析業務などに従事しております。
事例の物語風編集で”気づきセンス”の研ぎ澄ましにお役に立てればと思っています。