RISCAD概要【RISCAD Story 第4回】by和田有司
さんぽコラム RISCAD story 第4回/全10回
RISCAD概要
-リレーショナル化学災害データベースと事故分析手法PFA-
和田 有司
投稿日:2017年12月14日 10時00分
2017年12月末現在のリレーショナル化学災害データベース(RISCAD、リスキャド)の概要は下記の通りである。
・公開方法:インターネットで無償で公開
・収録件数:7,151件
・収録期間:1949年10月28日-2017年12月07日
・収録物質数:5,605件
・事故進展フロー図件数:108件
開発当初は、それ以前に産総研の研究情報公開データベース(RIO-DB)の一つとして公開していた「災害事例データベース」の高圧ガスや火薬類の事故に関する情報、RISCAD開発グループのメンバが事故調査に関与するなどして独自に所有していた比較的詳細な化学プラントの事故情報を収録した。現在はこれに加え、RISCAD運用グループで化学物質関連の事故情報をインターネットのメディア情報を中心に日々収集し、登録している。
化学物質の危険性情報については、比重、融点、沸点や特に熱的危険性に着目して、発火点、引火点、爆発範囲などの物性データを収録した。また、熱分析データを収録し、目的に応じて利用者がウェブブラウザ画面上でダイナミックに解析できる機能を搭載した(※本機能は最新版では削除)。
化学物質の検索で常に問題になるのは、化学物質には多数の別名があることである。例えば、エタノールが関連物質である事例を検索した結果と、エチルアルコールが関連物質である事例を検索した結果は同じでなければならない。そのため、RISCADでは開発当時の日本化学物質辞書(日化辞)をシステムに組み込み、登録されたどの化合物名で検索しても同じ結果が得られるようにした。
事故事例の分類に関しては、利用者が調べたい対象、特定の工程や特定の装置について検索できるように検索キーワードを作成することにしたが、特定の工程や装置では事故事例のヒット件数が少ない場合に検索範囲を広げて類似の事例を検索できるように、キーワードを階層化した。開発メンバの専門家によって、最終事象、工程、装置、推定原因、被害事象について階層化キーワードの作成を行い、それらの各階層のキーワードによる検索機能を搭載した。階層化キーワードの作成にあたっては、開発当時の海外の著名な化学事故データベースを参考にし、さらに実際の事故事例分析から特徴的に現れたキーワードを追加した。例えば、工程では、「廃棄・資源化」の際の事故事例が多数あったので、他のデータベースにはなかった、「廃棄・資源化」の項目と関連するキーワードを追加した。装置では、「安全装置」などが同様にして追加された。最新のシステムでは、利用頻度が高いと思われる「工程」と「装置」に関してのみ、階層化キーワードによる検索が可能となっている。ただし、その他の階層化キーワードによる分類も引き続き行っており、事故事例の検索結果には表示される。
階層化キーワードによる検索画面 図左:「工程」、図右:「装置」
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境安全本部 安全管理部 次長 (兼)安全科学研究部門付
1件でも事故を減らし、1人でも被害者を減らしたい、という一心で事故DBに携わって25年になります。趣味は事故情報の収集です。