台風による塩害【注目の化学災害ニュース】2018年10月のニュースから RISCAD CloseUP

投稿日:2018年11月01日 10時00分

2018年10月のニュースから、さんぽチームで活発に議論がされた内容をご紹介いたします。前回のRISCAD CloseUPでは自然災害に起因する産業事故Natech(ナテック:Natural-Hazard triggered Technological Accidents)について触れましたが、今回もそのNatechを引き起こす可能性がある、台風による塩害にClose UPです。

台風24号が日本列島を通過した後に、「塩害」という言葉がよく聞かれました。RISCADでも、塩害により停電が起きた事例を登録しました。私のイメージでは、塩害というのは、例えば灌漑や連作などで起きる事象で、農業方面の専門用語かと思っていました。

塩害は農業以外でも起きます。塩害で停電が起きた例では、強風で電柱や電線に海水が吹き付けられ、それが雨に洗い流されずに残ったことにより、電柱や電線から火花や異常音が発生して停電が起きました。千葉県、茨城県、東京都、神奈川県、静岡県、沖縄県など、各地の沿岸部で塩害が確認されたようです。

停電はなかったのですが、ここつくば市でも塩害が発生したことに驚いています。茨城県は海に面した県ではありますが、つくばは海からは結構な距離があるのでまさかとは思ったのですが、塩害により街路樹の一部がチリチリに茶色く枯れていました。また、台風通過の翌日の朝、車に乗り込もうとしたら、やけに窓ガラスや車体がベタベタしていたのです。しばらくしてから塩害である可能性を考えて洗車しました。まさかとは思いますが、そのままにしておいて錆びたら大変なので・・・。猛烈な台風の風は海水を巻き上げて、内陸部まで持ってくるのですね。

電線や電柱の塩害はなぜ起きるか

台風での塩害が海水中の塩分が原因なのであろうと思うのですが、どうして塩分が電柱や電線からの火花や異常音につながるのでしょうか?「塩害で停電か」と納得したふりをして、実はその仕組みがよくわかっていません。

子供の頃、理科の授業で、乾電池と豆電球をつないだ被覆銅線にアルミニウムホイルの電極をつけて、食塩水に漬けると豆電球が点灯する、という実験を行った記憶があると思います。これは食塩水が電気を通すことを理解するための実験なのですが、これと同じことが、電線などに取り付けられている絶縁用の碍子(ガイシ)の表面などで起こっていると考えられます。つまり、台風によって運ばれてきた海水中の塩分が碍子の表面などに付着し、雨の水分によって食塩水になって、本来、絶縁されていなければならないところに高圧の電気が流れて火花が飛んだりするということです。

なるほど、これで納得したふりではなく、遠い遠い記憶をたどって、なぜ塩害で電柱や電線に支障が起きるのかを理解することができました。

加えて、今回の塩害を発生させた台風24号は、風は強かったですが、関東地方では雨が少なく、塩分が付着しやすい条件となり、数日後の雨で塩分が溶けた際に多数の塩害をもたらしたと考えられます。

台風も年々勢力を増している気がします。これからは内陸部でも電柱や電線への塩害対策が必要になるかもしれませんね。

【編集後記】

9月の北海道での地震の際の全道ブラックアウト、今回のような塩害による停電。電気がないと私たちの生活がどんなに不便になるかを身につまされる出来事が相次いでいます。自然災害が増えゆく現代、いざという時の備えをしておかなくてはいけませんね。とりあえず、家にランタンとカセットコンロはありますが・・・。

さんぽニュース編集員 伊藤貴子