投稿日:2019年08月01日 10時00分
過去のニュースから、さんぽチームで活発に議論がされた内容をご紹介いたします。
8月に入り、令和最初の夏も本番。そして夏といえば、花火大会、夏祭りに音楽の野外フェスティバルなど、その他たくさんのイベントが目白押しです。花火大会はもちろんですが、そのような夏のイベント時によく登場するのが打上花火です。打上花火が関連する事故は、ほとんどと言っていいほど毎年起きており、現に、7月後半にも、報道されただけですでに2件の事故が起きています。今回は打上花火に関係する事故とその用語についてClose UPです。
今年の7月は記録的な日照不足、そして気温が低い日が続きました。しかし、関東甲信地方は7/29に梅雨明けしたとみられるとのことで、それ以降は猛暑日、またはそれに近い気温が連日続いています。急にきた暑さのせいか、この頑健な私も、夏バテのような症状が出ています。暑いせいか、毎週末のラーメン行脚もはかどりません。(注:編集員伊藤はラーメンが大好きで、基本的には、週末の食事のうち1食はラーメンを食べています)
夏といえば、夏休み。それに合わせるかのようにしてイベントも盛りだくさんですね。中でも夏は特に花火大会が開催されるイメージが強いです。特に7月後半からお盆ごろまでは、大きな花火大会が週末ごとに開催されるイメージがあります。若い頃は浴衣を着てウキウキと出かけたものですが、悲しいかな、今はそんなこともすっかりなくなりました。
お祭りのイメージが強い花火大会ですが、一説には、もともとはお盆の送り火として、ご先祖様の霊を供養するために開催されたのが始まりとも言われています。この時期に花火大会が集中しているのもわかりますね。
花火大会などでの事故
さて、大きな尺玉が打上げられる花火大会では、手持ちで行うおもちゃの花火(がん具煙火)とは規模が違う事故が発生することがあります。RISCADではそのような花火(煙火、煙火玉)関連の事故も取り上げてきました。(現在、RISCADはリニューアルのため公開停止中です)
確かに、打上花火に関連する事故は1年に何件かは起きるイメージがありますね。ここでRISCADの登録事故事例から、打上花火に関連する事故を4事例ほど見ていきたいと思います。
2017/07/29 岐阜県・花火大会で煙火玉が低空開発
花火大会で直径約60cm、重さ約70kgの煙火玉(2尺玉)の低空開発が起きた。落下した火の粉で河川敷の下草が焼け、駐車中の車の一部が焦げた。観客約10万人にけが人はなかった。警察と消防の調べでは、本来500-600mの高度で開発するはずの煙火玉が、低空で開発した可能性がある。同大会は安全確認のため約15分中断され、その後再開された。
2017/07/30 山形県・花火大会で筒ばね
花火大会で打揚煙火の筒ばねが起きた。打揚げ従事者12名のうち2名が腕や肘に軽傷を負った。警察の調べでは、負傷した2名は花火師の資格所持者で、導火線への着火を担当していた。何かの原因で煙火玉が打揚がらず、筒の中で爆発した可能性がある。同大会は事故後に中止された。
2017/10/07 宮崎県・自治体の祭りの打上花火で筒ばね
自治体が主催する祭りで直径約9cmの打揚煙火(3号玉)の筒ばねが起きた。金属製の筒の一部が破損した。打揚げを担当していた1名が腹などにやけどを負い、打揚場所から約数10m離れたところにいた見物客の小学生1名に破片があたり、左足を11針縫うけがを負った。何かの原因で煙火玉が打揚がらず、筒の中で爆発した可能性がある。同祭りは自治体が毎年開催しており、当時は数100名が見物中であった。
2018/07/28 岩手県・花火大会で花火が地上開発
花火大会で直径9cmの3号玉打揚煙火が黒玉となり、地上開発が起きた。観客7名がやけどで軽傷を負った。警察の調べでは、煙火は地上開発した場所から約数10mの距離の高台から打揚げられ、何かの原因で空中で開発せずに地面に落下して開発した可能性がある。当日は、15分間で約75発を打揚げる予定であったが、開始後5分で事故が起きた。当時観客席には約1,000名がいた。
打上花火の事故の際に使用される用語
これらの事例のうちのいくつかを、「さんぽのひろば」内の「RISCAD Update」のコーナーで取り上げた際に、用語について詳しく知りたいとご意見をいただいたことがあります。例えば、「開発」、「地上開発」、「低空開発」、「黒玉」、「筒ばね」などです。
また、この機会に「打上花火」(タイトルでの表記)と「打揚煙火」(本文中での表記)の混在についても、RISCADでそのように記載する理由をお伺いしようと思います。実はこれまで不思議に思っていながらもそのままにしていたのです。
わかりました。それでは、それぞれの用語の解説をしていきたいと思います。
前後しますが、まずは、「打上花火」と「打揚煙火」について。これらは同じものですが、「打揚煙火」という表記は、「火薬類取締法」上の法令用語で、「打上花火」より専門性の高い表記です。正確には「火薬類取締法施行規則」に出てきます。もうお気づきかと思いますが、「花火」の法令上での表記は「煙火」で、これと同様に、「おもちゃの花火」の法令上での表記は「がん具煙火」になります。
では次に、5つの用語についてです。
「開発」とは
煙火玉が開く(内部の火薬が爆発する)こと
「地上開発」とは
煙火玉が打揚筒から上空に発射されたあと、上空で開発せずに落下して地上で開発すること
「低空開発」とは
煙火玉が打揚筒から上空に発射されたあとすぐに開発したり、上空まで上昇したがそのまま降下してきて低空で開発すること
「黒玉」とは
煙火玉が打揚筒から上空に発射された後、何かの原因で上空で開発せずに落下したもの。また、それが地上開発せずに残ったもの
「筒ばね」とは
煙火玉が打揚筒の中で開発すること
簡単ですが、それぞれこのような感じの意味になります。
そして補足として、後のコメントで出てくる「星」という用語についても説明させてください。
「星」とは
炎や火の粉を発する和剤(花火の原料用の火薬又は爆薬)を固めたもの
ありがとうございます。これでみなさんが煙火関連の事故事例を読まれる際にわかりやすくなるかと思います。
煙火玉は打揚筒の内部で揚げ薬(黒色火薬)の燃焼によって推進力を得て発射されると同時に、その火を導火線で煙火玉の内部に伝え、正確に時間を制御して、ほぼ最高到達点で開発するように作られています。揚げ薬の入れ忘れによる筒ばねは可能な限り防がなければなりませんが、何かの原因で導火線が異常燃焼して起こる筒ばねや低空開発、逆に導火線が着火しないために起こる黒玉とそれが落下して起こる地上開発は、確率的にゼロにするのは困難です。ですので、花火大会を安全に開催するために、遠隔電気点火で筒ばねが起きても花火師さんたちが負傷しないよう対策をすることや、黒玉が起きて、風に流されて落下して地上開発した場合の火花(星)の飛散範囲を実験と計算によって予測し、安全距離を定めて、観客席はそれより離れた位置に設置する必要があります。大きな事故が起これば、翌年からその花火大会がなくなってしまうかもしれませんから、みなさんも安全距離の内側にこっそり入り込んで鑑賞する、といったことのないようにお願いします。
毎年美しい花火を鑑賞できるよう、観る側にも心得が必要ということですね。
【編集後記】
今回は季節に合わせて花火関係の用語(特に事故の際に耳にする用語)について触れてみました。さて、読者の皆さんはご存知かと思いますが、花火のカラフルな発色は、物質の炎色反応によるものです。お子さんやお孫さんと花火大会に行く前に、花火がなぜカラフルに発色するのか、どの物質が炎色反応を起こすと何色に見えるのかを学んでみるのもいいかもしれませんね。
さんぽニュース編集員 伊藤貴子
