危険予知トレーニング(KYT)のススメ その3【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2021年06月03日 10時00分

今回のRISCAD CloseUPは、みなさんと一緒にチャレンジする危険予知トレーニング(KYT)の第3回目です。「さんぽのひろば」の仲間であるさんぽさん、新型コロナウイルスの流行以降、密を避けて楽しめる新しい趣味を見つけたそうです。今回はさんぽさんの趣味からのKYTです。一緒にチャレンジしてみましょう。

危険予知トレーニング(KYT)について

前回までと同じ内容ではありますが、まずは、危険予知トレーニング(KYT)とはどんなトレーニングなのか、おさらいしてみましょう。

危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法です。ローマ字のKYTは、危険のK予知のY訓練(トレーニング)のTをとったものです。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト内 危険予知訓練(KYT) より引用)

より詳しい内容については、 「危険予知訓練(KYT)」厚生労働省 職場のあんぜんサイト内)をご覧いただくこととして、早速トレーニングの実践をしてみたいと思います。

これまでの「危険予知トレーニング(KYT)のススメ」

さんぽさんの密にならない新しい趣味

今回も、私たち「さんぽのひろば」からは、さんぽさん、わんぽさん、にゃんぽさんがトレーニングに参加しますよ。第3回目の例題は、新型コロナウイルスの流行以降、密を避けて楽しめる「ソロキャンプ」という新しい趣味を見つけたさんぽさんのキャンプ中のKYT。まずはさんぽさんがソロキャンプを始めるに至った経緯のお話からスタートです。

あいかわらずの新型コロナウイルスの流行で、外出ができなくてそろそろ息が詰まりそうだよ。

にゃんぽさんは旅行が趣味だもんね。ぼくはインドア派で、趣味は読書とかゲームとかだから、外に出かけられないからといってさほどストレスにはなっていないよ。

そうだよね。わんぽさんはずっと家にいても飽きないといっていたよね。ぼくもこの機会に何かステイホームでできる趣味を見つけようかなぁ。

そういえば、さんぽさんの趣味の話はあまり聞いたことがないですが、何かありますか?アウトドア、インドアにかかわらず。

趣味というか、暇を持て余さない程度にやることは色々あるかな。アウトドアだと、自転車でふらりと出かけて風景や動植物の写真を撮ったり、インドアだと、自分で撮影した写真のなかから動植物の写真を選んで、その絵を描いたり。それと、コロナ禍になってから新しく始めた趣味があるよ。これは旅行が好きだというにゃんぽさんにもオススメかもしれないよ。

なんですか?ぜひ教えてください。

「ソロキャンプ」って聞いたことあるかい?

お笑い芸人の人がハマっているということで、テレビ番組で取り上げられたりしている、ひとりでするキャンプのことですね。

屋外だし、ひとりでするから密を避けられるし、コロナ禍には持って来いと言われていますね。実際どうですか?

ぼくはもともと自転車に乗って出かけるのが好きだから、そのついでに、リュックにテントと寝袋と、少しの調理器具を入れて行って気軽に始めたのだけれど、なかなか楽しいよ。写真があるから見てよ。

まさかとは思いますが、ソロキャンプにも危険が潜んでいたりして。前回ぼくの部屋を見てもらったように、今回はさんぽさんのソロキャンプの写真でKYTしてみません?初めてのことをするときには、そこに潜んでいる危険を認識しておくことも大事ですよね。

おっ、それはいいね。ぼくのソロキャンプのKYT、やってみよう!

プロセス1:どんな危険性があるか意見を出し合う

ここにさんぽさんがひとりでキャンプに行った時のイラスト(3人の会話で出てきた写真にあたります)があります。みなさんはこれを参考にしてトレーニングに参加してくださいね。

さんぽさんのテント
さんぽさんのテントの内部

こだわりのキャンプスタイルですね。道具もかっこいいものを揃えていますね。

あはは。見た目から入るタイプだってばれちゃった?

テントの中でシングルガスバーナを使ってお湯を沸かしているのですか?

この時はまだ春先で寒くてね。テント内でお湯を沸かすと、外に出なくていいから寒くない上に暖がとれるから一石二鳥なのさ。もちろんお湯は飲食に使えるしね。
夜はカップ麺で軽く済ませて、朝は持っていったパンをかじりながら、コーヒーを飲むのだけれど、これがまた最高でね。自然の中で飲む朝のコーヒー、ふたりにも味わってほしいよ。

うーん、でも、テントの中での火気の使用は危険ですよね。テントは燃えにくくする加工をした素材を使用して作ってあるかもしれませんが、何れにしても可燃性の素材には変わりないですから。

それに、ガスバーナの近くに寝袋があるのも気になります。ガスバーナで暖をとっていると言っていましたが、もし寝袋に着火したらあっという間に燃え広がりそうです。
さすがに寝るときにはガスバーナは消していますよね?ガスバーナの火がさんぽさんが寝袋に入った状態で着火なんていうことが起きたら、命に関わる事故になりますよ。

う、うん。でもこの時はまだ寒かったし・・・。

寒いからといって、火災が起きる危険がある誤った道具の使い方をしていいということはないですよ。事故で怪我をしたり、命を落としたりすることだってあるんですから!

それとあと一点、締め切ったテント内で火気を使用するのが危険な理由がありますよね。

うん、ぼくもそれも気になっていたよ。

ふたりが言いたいことは分かっているよ。一酸化炭素中毒だろう?

わかっているじゃないですか。

いや、でも、これくらいだったら・・・。寝る前にはガスバーナはちゃんと消すようにしているし。

凍った湖の上のワカサギ釣りのテント内などでよくありますが、テント内で調理器具兼暖房がわりのカセットコンロをつけたまま、ついうとうとしてしまって一酸化炭素中毒で死亡といったような事故が毎年数多く起きています。

せっかくみせてもらったソロキャンプの写真に、続けざまにきついことを言ってしまって申し訳ないですが、これはさんぽさんが心配だから言っているのです。ソロキャンプを始めてからあまり時間がたっていない今、事故が起きる前に気がつけてよかったと思いませんか。

自分は大丈夫だと思っていても、ついうっかりということはありますからね。あのときそんなことをしなければという後悔をしないためにも、危険だと分かっていることはして欲しくないです。

分かったよ。ぼくの考えがちょっと甘かったようだ。自分だけは大丈夫、ちょっとだけなら大丈夫というのが命取りになるね。以後、気をつけるよ。

プロセス2:危険のポイントを把握する

ここで、さんぽさんのソロキャンプでの危険のポイントをまとめてみよう。

➀ガスバーナを可燃性のテント内で、また同じく可燃性の寝袋の近くで使用していること。テントや寝袋に着火すれば火災が起きる可能性がある。

➁締め切ったテント内でガスバーナを使用していること。換気不足により不完全燃焼が起きて一酸化炭素中毒が起きる可能性がある。

プロセス3:どうしたらよいか

次に、プロセス2であげた➀、➁にについて、どのような対策をとったら解決できるか、危険を避けられるか、まとめてみよう。

➀火災を避けるため、テント内で火気を使用しない。

➁一酸化炭素中毒を避けるため、締め切ったテント内で火気を使用しない。

プロセス4:危険を避けるために実施することの確認

では、まとめてみよう。
今回ぼくたちのKYTによりあげられた、さんぽさんのソロキャンプへの改善点は、火災や一酸化炭素中毒が起きるのを避けるため、テント内では火気を使用しないということでいいかな?

「さんぽのひろば」の3人のKYT結果

はい!良いと思います!

テント内での火気の使用はやめるとして、ソロキャンプ、なかなかいいよ!今度3人で緒に行かない?

ん?3人でキャンプに行くってこと?

それはもはやソロキャンプじゃなくて、普通のキャンプだよね(笑)

確かに!(笑)
ソロキャンプも楽しいけど、みんなでワイワイ、にぎやかにバーベキューしながらキャンプができる日が早く戻ってくるといいよね。

答えはこれだけではない

「さんぽのひろば」のおなじみ3人は、さんぽさんのソロキャンプでのKYTとして、以上の結論を導き出したようです。しかし、これはあくまでも彼らの視点で発見した危険の可能性です。読者のみなさんは他にも危険の可能性を発見されたかもしれません。

たとえば、別の視点から見てみると、
  • シングルガスバーナで使用すると思われる調理器具が大きすぎる。
     →バーナ用ガスボンベが加熱されて破裂する可能性
     →→機器にあった大きさの調理器具を使用する
  • 崖の下にテントを張っている
     →万が一の崖崩れや落石の可能性
     →→天候条件の急変などを考慮し、崖の下や崖の上、川の中州や川に近すぎる場所(上流での降雨による増水の恐れ)、木の下(落雷の恐れ)などを避け、危険が少ない場所にテントを張る
もちろん、KYTの答えは、今回のこのコーナーであげた事象に限りません。「これは危険につながるのではないか」と気づいたことがあれば、それがまたKYTのスタートとなり、別の答えが導き出されるのです。

まとめ

「KYTのすすめ」第3回目いかがでしたでしょうか。

今回は、コロナ禍で流行っていると聞く「ソロキャンプ」についてのKYTを取り上げました。ソロキャンプに限らず、家族や仲間で行うキャンプでもテント内での火気使用については同様のことが言えるかと思います。

このように、KYTはレジャーの場での危険を事前に予知するのにも役立ちます。今回、3人がKYTを行ったことで、さんぽさんは命拾いした可能性があります。さんぽさんが、自分だけは大丈夫、ちょっとだけなら大丈夫といった気持ちでテント内での火気使用を続けていたら、命を落とすような事故につながったかもしれません。

みなさんそれぞれのレジャーを楽しまれる際には、ぜひ事前にKYTを行ってみてください。それにより防げる事故があるかもしれません。

 

【参考情報】

厚生労働省
  職場のあんぜんサイト 危険予知訓練(KYT)

 公益社団法人日本キャンプ協会
  (キャンプに関する安全情報が掲載されています)
さんぽニュース編集員 伊藤貴子