営業再開の前に、安全点検を【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2021年10月07日 10時00分

10月になりました。コロナ禍による緊急事態宣言・蔓延防止等重点措置が適用されていた地域において、それらが全面解除となりました。様々な面での生活への影響があると思いますが、中でも、営業休止や営業時間短縮をやむなくされていた飲食店の営業再開は、影響が大きい事かと思います。今回のRISCAD CloseUPは、「営業再開の前に、安全点検を」と題してお送りします。

緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の全面解除

2021年10月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止のために該当地域に適用されていた緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が全面解除されました。

同宣言、措置の適用期間中は、飲食店、特にアルコールを提供する飲食店の営業休止、または営業時間短縮が強く要請されましたが、同宣言、措置が全面解除されたことにより、アルコールを提供する飲食店を含む飲食店の営業休止要請、営業時間の短縮要請の緩和がなされ、営業再開できる運びとなりました。

店舗の営業を休止していたといっても、定期的に店舗の清掃、空気の入れ替えなどをして店舗を維持されていたことと思いますし、その期間を利用して店舗の大規模な清掃、メンテナンスなどを行っていたところもあるでしょう。場合によっては店舗の改装をしたところがあるかもしれません。
 

郡山の飲食店でのガス爆発

昨年夏、COVID-19の感染拡大の影響による休業期間中に改装工事をしていた飲食店でガス爆発事故が起きました。

2020/7 福島・改装工事中の飲食店でガス爆発
休業して改装工事中の鉄骨造平屋建ての飲食店でガス爆発が起きた。火災は起きなかった。同店舗延べ約160平方mが全壊し、現場から数100mの範囲内にある銀行やビル、住宅など計184棟で窓ガラスや外壁などが破損した。店内にいた内装工事の現場責任者1名が死亡した。近くの銀行内にいた銀行員2名と同銀行の現金自動預払機を利用中の客2名、通行人など15名、計19名が負傷して病院に搬送され、うち2名が重傷となった。警察と消防の調べでは、同店舗厨房内のガスコンロは以前から不具合があったため、7/29に厨房内の加熱調理器具をガスコンロからIH調理器に交換するためのコンセントの増設工事が行われた。その後、20時頃に作業員がセキュリティをかけて退出した。事故当日、死亡した現場責任者が店舗のセキュリティを解除し、その後約5分で爆発が起きたことから、前日の工事終了後から朝までの間に、店舗内でガスが漏洩して充満し、着火した可能性がある。7/29に異臭がしたとの証言があった。同店舗は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響により4/24から休業中で、4月の休業時にガス栓を閉めており、LPガス業者の6月の点検では異常はなかった。7/21から改装工事をしており、8/3から営業再開予定であった。その後の調べで、同店舗で使用されていたガス管は、法令でコンクリート面から離して設置する必要があったが、調理場の流し台下のコンクリート床面に接触して設置されていた。ガス管とコンクリート床面との接触や、流し台付近の水分の影響で、ガス管が腐食して穴が開き、LPガスが漏洩した可能性がある。県は、保安機関と同店舗のLPガス供給事業者に対して、ガス管の設置状況の法令違反の改善等の指導を怠ったとして、改善を要求した。また、県は、2020/12の同保安機関への立入検査時に、法令で定められた4年以内に1度の点検が4年を超えていたことを確認し、厳重注意の行政指導を行った。

大規模なガス爆発として記憶に新しいこの事故では、1名が死亡し、2名が重傷、17名が軽傷を負いました。

この事故については、2021年9月2日に福島県警が、当時の店舗運営会社社長や、同店舗の設備工事を行ったLPガス販売事業者、保安機関の担当者ら4人を業務上過失致死傷容疑で書類送検しました。

書類送検の内容は、同店舗を建設した2006年に、設備工事業者(LPガス販売事業者)が、液化石油ガス法に違反して、湿気に弱く腐食しやすい白管と呼ばれるガス管を調理場の流し台下のコンクリートの床に直に設置したこと、また、店舗運営会社のガス管の管理が不適切であったこと、そして保安機関も配管の設置方法や腐食を見過ごすなどしたことで、それにより、配管が腐食して開いた穴からガスが漏洩して何かの原因で着火したことで爆発が起き、20名の死傷者を出した容疑とのことです。

また、事故により死亡した内装工事の現場責任者も、事故につながる過失との関わりが否定できないとして、業務上過失傷害容疑で書類送検されたとのことです。

この事故は、COVID-19の感染拡大の影響による休業期間中の店舗改装工事中に発生したものではありますが、店舗建設時からの複数の要因が積み重なった結果、発生した事故といえるかと思います。

改装工事のみに原因があるわけではないと考えられるということは、このガス爆発は、改装前、または改装後の店舗の営業中に発生してもおかしくなかったと推測されます。客で賑わう飲食店の厨房でガス爆発が発生していたら、死傷者数はこの限りではなかった可能性があります。現に、同事故での負傷者には、爆発があった店舗の近隣にある銀行にいた方も含まれていたことから、この事故の大きさが伺えるかと思います。
 

営業再開の前に、安全点検を

さて、最後になりましたが、タイトルにした営業再開前の安全点検についてです。

休業時には、長くガスの元栓を閉めていたり、電気器具の電源を落としていたりしたケースがあると思われます。店舗の営業再開時には、それらの機器類を再稼働させることになります。その際には動作に異変はないか、ほこりや油がたまっていないか、作動時におかしな臭いがしないかなど、細かく安全点検をすることが大切です。

もちろん、これは店舗の営業再開時のみならず、どのような業種においても同様のことが言えます。稼働を停止したものを再稼働させるときには、再開のための念入りな準備と、安全点検を怠らないようにしましょう。

 

【参考情報】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子