あの事故のその後【週刊化学災害ニュースまとめ】 RISCAD LookBack

投稿日:2022年06月30日 10時00分

早いもので、6月も末。2022年の上半期が終わろうとしています。そんな節目の時期に合わせ、「あの事故のその後」と題し、RISCAD LookBackをお送りいたします。過去のあの事故はどのような原因で起きたのか、今回は、2020年の事故2件と2021の事故1件の計3件の事故についてまとめました。

2020年、道路工事パトロール車内での硫化水素中毒による死亡事故

高速道路に停車中の道路工事パトロール車内で硫化水素が発生し、車内にいた交通誘導作業員2名が死亡した事故です。当時の事故概要は以下の通りです。

2020/5 新潟・高速道路に停車中の道路工事パトロール車内で硫化水素中毒
高速道路に停車中の道路工事パトロール車内で硫化水素中毒が起きた。車内で意識不明となった交通誘導作業員2名を同僚が発見し,消防に通報した。2名は病院に搬送されたが死亡した。警察と消防の調べでは,同車両は作業員の待機用などに使用されており,死亡した2名は,高速道路上の道路舗装工事現場で5/25夕方から5/26早朝まで,交通誘導業務に従事していた。救助にあたった消防隊員が異臭を感じており,同車両の後部座席に装備されたパソコンや回転灯などへの電力供給用のバッテリから発生した硫化水素を吸込んだ可能性がある。

【その後判明した原因等】
交通誘導作業員2名の死亡原因は硫化水素による中毒死であった。
パトロール車の後部座席に備え付けられた補助バッテリが劣化し、硫化水素が発生した可能性。
【その後の対応等】
パトロール車を改装した業者が安全管理を怠ったとして、警察が同業者の責任者を業務上過失致死の疑いで書類送検。
→バッテリの取り扱いについての注意喚起(危険性、点検の必要性など)を怠った疑い
→毒ガス発生時に対処する装置の設置を怠った疑い
 

 

2020年、下水道内の汚泥除去作業中の酸素欠乏による死亡事故

市の依頼で下水道内の汚泥除去作業中であった浄化槽管理会社の作業員2名が、マンホール内で酸素欠乏により死亡した事故です。当時の事故概要は以下の通りです。(以下の概要文は当時のままであるため、文中では「酸素欠乏」ではなく「中毒」となっています)

2020/10 茨城・下水道内の汚泥除去作業中に中毒
下水道内の汚泥除去作業中に中毒が起きた。浄化槽管理会社の作業員1名が深さ約7mのマンホール内での作業後,はしごを登ろうとしてマンホールの底に落下し,別の作業員1名が救助のためマンホール内に入って落下した。2名は病院に搬送されたが,死亡が確認された。警察と消防の調べでは,現場から数100m離れた地点のマンホールから水が溢れたため,市の依頼で浄化槽管理会社の作業員4名が汚泥除去作業を行っていた。最初に落下した1名は,マンホール内に下り,高圧洗浄機で詰まった汚泥の除去作業を行い,残りの3名は地上で高圧洗浄機の操作などをしていた。マンホール内から硫化水素と一酸化炭素が検出されたことから,中毒が起きた可能性がある。

【その後判明した原因等】
マンホール内から硫化水素と一酸化炭素が検出されたが、浄化槽管理会社の作業員2名の死亡原因は酸素欠乏による窒息死であった。
【その後の対応等】
警察が同作業の現場責任者(事故により死亡)を業務上過失致死の疑いで書類送検。
→現場責任者が現場に酸素欠乏危険作業主任者を配置しておらず、マンホール内で人が倒れた場合に無防備に救助に入らないなどの指示を怠った疑い
→作業時のガス検知などの措置を講じなかった疑い
 

 

2021年、花火工場での煙火打揚装置の点検中の爆発事故

開催予定の花火大会の準備のための、装置点検中に起きた爆発事故です。従業員1名がやけどで重傷を負い、社長と別の従業員の計2名が軽傷を負いました。当時の事故概要は以下の通りです。

2021/10 北海道・花火工場の火薬庫で装置の通電点検中に爆発
煙火製造工場の火薬庫内で煙火打揚装置の点検中に爆発が起きた。従業員が消防に通報した。消防が約1時間半後に消火したが,火薬庫2棟が全焼し,隣接する車庫と事務所の壁の一部が焼けた。従業員1名がやけどで重傷,社長と別の従業員の計2名が軽傷を負った。警察と消防の調べでは,負傷した3名は,開催予定の花火大会の準備をしており,火薬庫内にあった煙火打揚装置の通電確認作業中に出火した可能性がある。また,火薬庫内に保管されていた煙火に着火して被害が拡大した可能性がある。

【その後判明した原因等】
電流管理装置(モジュール)を付けないまま電気導火線の試験を行ったため、爆発が起きた可能性。
【その後の対応等】
警察が同工場の元役員と元従業員(軽傷を負った2名、事故後退職)を業務上過失傷害の疑いで書類送検。(後日不起訴。)
→事故防止の指示を適切に行わなかった疑い(元役員)
→決められた点検方法を守らず、電流管理装置(モジュール)を使用せずに導火線に通電した疑い(元従業員)
労働基準監督署が会社と元役員を書類送検。
→火薬庫内で火災の防止措置をとらずに導火線の試験を行った疑い
2022/6/27、検察庁が労働安全衛生法違反で略式起訴。
 

編集後記

以上、3件の事故のその後をお送りしました。どの事故も、「安全管理」に問題があったことが見て取れます。
大きなけがをしたり、場合によっては命を落としてしまうこともある作業中の事故。完全に無くすことは難しいと言われていますが、1件でもそんな事故が減ることを願ってやみません。

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子