引越しシーズンにチェック!配線器具類【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2023年04月06日 10時00分

早いものでもう4月です。東京地方においては、平年より早く開花して記録的な早さで満開を迎えた桜はすっかり散ってしまいました。この季節は新生活のスタートに胸を躍らせている方がたくさんいらっしゃると思います。また、それに伴い引越しをされる方(4月に入ってしまったのですでに引っ越しを終えた方が多いかもしれません)もいらっしゃると思います。そして、そのような折にはテレビや洗濯機、冷蔵庫などの電化製品を揃えることになるかと思いますが、ほとんどの電化製品は電源コードのプラグをコンセントに差込むことで使用できるようになります。今回の「RISCAD CloseUP」は、それらの配線器具類に起因する火災についてお送りします。実は電源コード、テーブルタップ、延長コード、コンセントなどが原因となる火災は少なくないのです。それでは、「引越しシーズンにチェック!配線器具類」スタートです。新生活で火災を起こさないためにも、ぜひご参考に。

増加する配線器具類の火災

今回は配線器具類が原因となる火災について見ていきますが、まずはそれらの火災についての資料を参照してみたいと思います。

東京消防庁「令和4年 火災の実態」に、以下のような資料があります。

これは最近10年間の東京消防庁管轄区域の配線器具類が関連する火災の年別発生状況です。
最近10年間の配線器具類による火災の年別発生状況
東京消防庁 「令和4年 火災の実態」より引用
   「表1-6-3 最近10年間の配線器具類による火災の年別発生状況」)
資料によれば、令和3年に起きた、配線器具類から出火したことによる火災は 451 件で、最近 10 年間では最も多くなっているとのことです。

また別の情報として、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)からは、テレワークの普及・増加で配線器具の使用が増えたことが、それらに起因する火災件数の増加に関係していると推定されると発表されています。

令和2年(2020年)から令和3年(2021年)にかけては、新型コロナウイルスの流行に起因する緊急事態宣言の発出などにより、ステイホームが叫ばれた時期とほぼ合致します。その時期には、テレワークが一段と普及し、外出せずに家で過ごす時間が増加しました。それにより必然的に電化製品などの使用が増加し、それに伴って配線器具類の使用も増え、結果としてそれらが原因となる火災も増加したと考えられます。

配線器具類からどのように出火するのか

私たちの周りには、電化製品をはじめとして電気を使用して作動するものは無数にあります。それらを使用する際には必ずと言っていいほど配線器具類を使用しているわけです。それほど身近にある配線器具類からの火災がどのような原因で起きるのかを知っておくことは、事故を防ぐ意味で非常に重要だと考えます。

ここでまた、東京消防庁「令和4年 火災の実態」の資料を参照したいと思います。
配線器具類による火災に至った経過別の状況(最近10年間)
東京消防庁 「令和4年 火災の実態」より引用
   「表1-6-4 配線器具類による火災に至った経過別の状況(最近10年間)」)
火災に至った経過は、その他、不明を除き5つあります。

 ・電線が短絡する
 ・金属の接触部が過熱する
 ・トラッキング
 ・半断線により発熱する
 ・過多の電流(含電圧)が流れる


「短絡」や「トラッキング」など、よく耳にする言葉ですが、実際にどのような現象なのでしょうか。

wikipediaによれば、「短絡」については「電気回路の二点が相対的に低いインピーダンスで電気的に接続される状態。」と書かれています。「トラッキング現象」については「主に電気コンセントや配電盤などにおいて、ほこりなどが原因となり樹脂などの絶縁体が劣化する現象及び木材などで漏電し物質が炭化することである。」とのこと。いずれも一般常識レベルだとは思いますが、私の場合には噛み砕いて頭に入れるのに少し時間がかかりました。

それぞれの現象を動画で確認してみましょう!

私は業務として「短絡」や「トラッキング」について調べてみましたが、もし、このコーナーを読者として読んでいたら、上記のような説明がずらずらと並んだ時点で読み飛ばしてしまうかもしれないと考えました。ここではあくまでも私の場合を想定したわけですが、いずれにしても、今回のこのコーナーでみなさんにお伝えしたいのは、配線器具類による火災を起こさないために気をつけたいことなのですから、ぜひ最後まで読んで(観て)いただきたいのです。

そこで、それぞれの現象についての解説や再現実験など、わかりやすい動画をYouTubeから探してみました。動画では、配線器具類から出火するに至る過程を見ることができ、出火時は激しく炎や火花が発生することがわかります。また、火災を起こさないための注意点などは文字と音声の両方で解説されています。少し数がありますが、いずれも短い動画ですので、ぜひご視聴いただければと思います。
○ 電線の短絡
『電気火災に注意してください~ショート~』舞鶴市公式ムービーチャンネル
 【nite-ps】テーブルタップ・延長コード「2.束ねたコードの発火 1」Nite official
○ 金属の接続部の過熱
そのプラグ、大丈夫?!<ゆるプラグ火災編>堺動画チャンネル
【燃焼実験】コンセントの劣化による放電郡山消防YouTubeチャンネル
○ トラッキング
電気火災に注意してください~電源プラグ~舞鶴市公式ムービーチャンネル
【nite-ps】コンセント 「1.トラッキング現象によるコンセントの発火」Nite official
○ 半断線による発熱
電源コードからの火災再現実験(半断線)郡山消防YouTubeチャンネル
【nite-ps】 電源コード 「8.半断線で発火」NITE official
○ 過多の電流(含電圧)が流れる
【nite-ps】コンセント「2.消費電力の超過による発熱」NITE official

今年発生した配線器具類による火災

ここで、今年起きた配線器具類が関係する火災の事例を見てみましょう。

2023/1 兵庫・共同住宅で延長ケーブルの短絡による火災
3階建ての共同住宅で延長ケーブルの短絡による火災が起きた。近所の住人が消防に通報した。消防車31台が約3時間後に消火したが、同建屋300平方mのうち1階と2階部分の一部計約26平方mが焼けた。1階の住人4名が死亡し、2名が重体、2名が重傷となった。同共同住宅には約30名が居住していたが、2階と3階の住人にけがはなかった。警察と消防の調べでは、1階の住人の畳敷きの部屋にあったキャスター付きテーブルのキャスターに延長ケーブルが踏まれるなどして断線し、短絡して出火した可能性がある。同延長コードには複数箇所の短絡跡があった。

2023/2 石川・食品加工工場で短絡による火災
木造平屋建て、鉄骨造平家建て一部2階建ての鶏卵加工工場で火災が起きた。火災報知器が作動したため警備員が駆けつけ消防に通報した。消防車26台が約14時間後に鎮火したが、同工場建屋約1,500平方mが全焼し、近隣住宅1棟に延焼した。同工場は終業後で無人で、けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同工場内の洗濯場内の衣類乾燥機が稼働しており、同乾燥機に接続された延長ケーブルがねじれや劣化などにより短絡して出火した可能性がある。

1月の兵庫の火災では、共同住宅が内廊下の構造であったことや、足腰の不自由な高齢の住人複数が逃げ遅れたことなどから、4名が死亡し、2名が重体、2名が重傷を負うという痛ましい事故となりました。また、2月の石川の食品加工工場の火災では、工場内のプロパンガスボンベに延焼したため、鎮火までに長時間を要したとの情報があります。

いずれも、配線器具類が火災原因の可能性があるとのことですが、前項で紹介した、配線器具類が火災に至った経緯に関連する、動画にもあった現象が発生していたと推測されます。

(兵庫の火災の概要より)

1階の住人の畳敷きの部屋にあったキャスター付きテーブルのキャスターに延長ケーブルが踏まれるなどして断線 *し、短絡して出火した可能性がある。同延長コードには複数箇所の短絡跡があった。
  →延長コードが踏まれるなどして断線 *・・・半断線による発熱
  →複数箇所の短絡跡・・・電線の短絡

*報道などでは「断線」という言葉が使われていましたが、正確には「断線」は完全にケーブル内の線が切れて導通がないことを指すため、実際に起きていたことは「半断線」である可能性があります。

(石川の火災の概要より

工場内の洗濯場内の衣類乾燥機が稼働しており,同乾燥機に接続された延長ケーブルがねじれや劣化などにより短絡して出火した可能性がある。
  →延長ケーブルがねじれや劣化などにより短絡・・・電線の短絡、半断線による発熱

まとめ

配線器具類の火災は、その使用方法を誤ったり危険に気づかずに使用していたりすることで起こりますが、知識をもって気をつけていれば未然に防ぐことができます。配線器具類の上に家具などを乗せない、配線器具類を束ねたまま使用しない、配線器具周辺に可燃物を置かない、埃を溜めないなど、日頃から気をつけておくことが大事です。

特に引越しをされたばかりの方は、無理な位置に配線器具類を置いて家具などが乗っていないか、購入したときのまま、コードが束ねられた状態で電化製品を使用していないかなどを確認して安全な新生活を送りましょう。

【参考情報】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子