住宅火災〜死者が出た火災の傾向〜【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2023年12月7日 10時00分

過去にこのコーナーで何度か取り上げている住宅火災。その際にも触れたように、冬から春にかけては、寒さ対策として使用方法によっては火災の着火源にもなりうる暖房器具を使用する季節であることや、乾燥や強風といった気象条件が増えることなどから、火災が多く発生する傾向にある時期となります。そのような時期の入り口である12月の「RISCAD CloseUP」は、火災の発生を防ぐ一助となるべく、最近起きた火災の事例や消防白書総務省消防庁)をもとに、特に私たちが暮らす住宅等の火災に着目し、その傾向をみていきたいと思います。それでは「住宅火災〜死者が出た火災の傾向〜」スタートです。

この秋以降の住宅での火災事例

冒頭で述べたように、今回は最近起きた火災の事例や消防白書総務省消防庁)をもとに、特に私たちが暮らす住宅等の火災に着目し、その傾向をみていこうと思います。

まずは今年11月以降に起きた住宅火災事例の一部をみていきます。私たちが暮らす住宅ではどのような火災が起きているのでしょうか。

2023/11 静岡・住宅で火災
木造2階建ての住宅で火災が起きた。住人が消防に通報した。消防が約20分後に消火したが、同住宅1階の一部が焼けた。通報したのとは別の住人1名が死亡した。警察と消防の調べでは、死亡した住人の衣類にこんろの火で着火した可能性がある。

2023/11 神奈川・住宅で火災
木造平屋建ての住宅で火災が起きた。住人が消防に通報した。消防が消火したが、同住宅の一部が焼けた。警察と消防の調べでは、屋外にある、同住宅の薪ストーブから取出した灰などを保管する場所から出火した可能性がある。

2023/11 大阪・集合住宅で火災
木造3階建ての集合住宅の1階で火災が起きた。通行人が消防に通報した。消防車35台が約1時間半後に消火したが、同住宅の一部約80平方mが焼けた。同室の住人1名が煙を吸って病院に搬送された。警察と消防の調べでは、病院に搬送された住人が、電気ストーブをつけたまま就寝し、毛布に着火した可能性がある。

2023/12 三重・住宅で火災
住宅で火災が起きた。消防が約1時間半後に消火したが、同住宅が全焼した。住人は避難してけが人はなかった。警察と消防の調べでは、同住宅の寝室の電気カーペットから出火した可能性がある。

2023/12 大阪・マンションで火災
8階建てのマンションの6階の部屋で火災が起きた。住人が消防に通報した。消防車15台が約1時間後に消火したが、同部屋が焼けた。同部屋の住人1名が煙を吸って病院に搬送されたが軽症であった。警察と消防の調べでは、同室内のこたつから出火した可能性がある。

寒くなってきたこともあってか、暖房器具類が関係する火災が多く起きているようです。そして、これ以外にも住宅が関連する火災は多数起きています。

令和3年中の出火件数、火災による死傷者数

さて、ここからは、令和4年版消防白書*を参照し、住宅が関連する火災の内容を抜粋してみていきたいと思います。
(*令和4年版消防白書には令和3年までのデータがまとめられています)

まず、大きなデータから見てみると、令和3年中の出火件数は3万5,222件*1、そして火災による死者数のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者を除いた死者数は、1,143名*2、負傷者数は 5,433名*3とのことです。ここ10年ほどの間で、出火件数、死傷者数ともにおおむね減少傾向にあるようです。
*1,*2,*3 令和4年版消防白書 P.49より)

建物火災の内訳

次に、令和3年に起きた「建物用途別の死者発生状況」の資料を見てみます。建物火災のうち、死者が出た火災の90.8%(1,058名)が住宅火災であることがわかります。一般住宅、共同住宅など形は違えど、これはいうまでもなく、私たちが生活している住居での火災ということになります。

 「第1-1-7図 建物用途別の死者発生状況」
令和4年消防白書 P.54より)

住宅火災における発火源

次の資料は住宅火災に関してのものです。まずは「住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)」を見てみましょう。

 「第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)」
令和4年消防白書 P.56より)

発火源として1番目に多いのはたばこで13.6%(131名)、2番目に多いのはストーブで11.3%(109名)となっています。そしてその後に電気器具、こんろが続きます。

禁煙が声高に叫ばれ、その志向も強くなったと思われる昨今ではありますが、死者が出た住宅火災のうち、たばこが発火源となった火災が最も多くなっています。紙巻たばこでの喫煙は、直火をあつかう行為であるため発火源になりやすい可能性があるのかもしれません。また、それに次ぐストーブ等をはじめとした暖房器具に起因する火災については、冒頭で確認した火災事例にもあったように、使用頻度が高くなるこれからの季節は特に念頭に置いて注意したいところです。

住宅火災における着火物

次に、「住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)」を見てみましょう。こちらは住宅火災の着火物別死者数についての資料ですが、その全体数とうち65歳以上の数の資料があります。

 「第1-1-12図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)」
令和4年消防白書 P.56より)

最も多いのは寝具類の11.2%(108名)(うち65歳以上85名)で、次に衣類の6.2%(60名)(うち65歳以上47名)となっています。年齢により着火物の割合に大きな差は見られないようですが、寝具類及び衣類に着火した火災による死者数を合わせると、全体のおおよそ20%近くなることがわかります。冒頭で確認した火災事例でも、着衣着火や、就寝時の電気ストーブからの毛布への着火などがみられました。寝具類も衣類も私たちの身体のとても身近な場所で使用する、または身体に直接身につけるなどするもので、かつ燃えやすいものですから、火気に近づけすぎないなど注意をすることが大事です。

死亡に至った経過

次は、「火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)」の資料を見てみます。これは、火災により死亡に至った経過についての資料ですが、その46%が「逃げ遅れ」であることがわかります。避難行動を起こしたものの逃げきれなかったと思われるケースや、火災に気付いた時にはすでに逃げ道がなかったと思われるケースなど、逃げようとしても逃げられなかったというケースがほとんどですが、逃げ遅れでの死者が半数近くを占めることを考えると、火災の際には、命を守るためにまず避難と考えて行動することが大事であると言えます。

「第1-1-4図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)」
令和4年消防白書 P.52より)

事故事例と資料から考える気をつけるべきポイント

ここまで、最近起きた住宅火災事例と、「令和4年版消防白書」から住宅火災が関連する資料を一部抜粋してみてきました。

これに注意すれば火災が起きないというポイントを掴むのは困難ではありますが、事例や資料から過去の火災の傾向を知って用心することで、火災の発生を防ぐ一助となればと願っています。

【参考情報】

・総務省消防庁
  消防白書
  令和4年版消防白書

さんぽニュース編集員 伊藤貴子