新生活で気をつけたい、居住空間での火災【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2024年4月4日 10時00分

4月になりました。この季節は新生活のスタートに胸を躍らせている方がたくさんいらっしゃると思います。また、それに伴い、親元を離れるなどしてひとりでの生活をスタートされる方もいらっしゃると思います。初めての一人暮らし、これまでチャレンジしたことのなかった家事をするようになる方、自炊を始める方など、新生活に伴う「はじめて」がいろいろあるのではないかと思います。今回の「RISCAD CloseUP」では、昨年秋からこの春にかけて起きた住宅火災事例をもとに、新生活をスタートするみなさんが気付きそうで気付けない、居住空間に潜む火災の可能性について考えていきたいと思います。事故事例を知ることで、事故に遭う可能性を減らす一助となれば幸いです。それでは、「新生活で気をつけたい、居住空間での火災」スタートです。

住宅などではどのような火災が起きているのか

冒頭で述べたように、今回は住宅火災事例を参考に、私たちの居住空間に潜む火災の可能性について考えていきたいと思います。昨年秋からこの春にかけて、住宅などではどのような火災が起きたのでしょうか。事例を確認するとともに、気をつけたいところを見ていきましょう。

身の回りの可燃物への着火

 ー着衣着火ー

2023/11 静岡・住宅で火災
木造2階建ての住宅で火災が起きた。住人が消防に通報した。消防が約20分後に消火したが、同住宅1階の一部が焼けた。通報したのとは別の住人1名が死亡した。警察と消防の調べでは、死亡した住人の衣類にこんろの火で着火した可能性がある。


これは着衣着火の事例です。着衣着火とは、文字通り、着ている衣服に火が着くことです。 居住空間内での着衣着火は、燃えやすい素材の衣服の袖口になどに、ガスこんろなどの調理の火気で着火することで起きることが多い傾向にあります。冬場であれば、火気を使用した暖房器具からの着火にも気をつける必要があります。身体に身につけている衣服に着火する着衣着火は、被災者がやけどを負うケースが多く見受けられます。

また、着衣着火では「表面フラッシュ現象」と呼ばれるものが起きることがあります。これは、綿、化学繊維などの生地表面が洗濯や長期着用などにより毛羽立ち、そこに着火することで瞬く間に衣類に火がまわる現象です。その場合には、被災者が重度のやけどを負ったり、死亡したりするケースがあります。調理時の服装などには十分気をつけたいところです。

 ー暖房器具による就寝中の火災

2023/11 大阪・集合住宅で火災
木造3階建ての集合住宅の1階で火災が起きた。通行人が消防に通報した。消防車35台が約1時間半後に消火したが、同住宅の一部約80平方mが焼けた。同室の住人1名が煙を吸って病院に搬送された。警察と消防の調べでは、病院に搬送された住人が、電気ストーブをつけたまま就寝し、毛布に着火した可能性がある。


この事例は暖房器具からの寝具への着火です。距離を空けて使用していたはずの暖房器具に、寝ている間にいつのまにか布団を近づけてしまうことがないとは言えません。また、あとで消そうと思って、暖房器具をつけたままでうとうとしてしまうといったこともあり得ます。②の事例のような火災を防ぐためには、就寝時には火気を使用した暖房器具を必ず消すようにすることが大事です。

電気製品からの火災

 ー電気製品全般

2023/12 大阪・マンションで火災
8階建てのマンションの6階の部屋で火災が起きた。住人が消防に通報した。消防車15台が約1時間後に消火したが、同部屋が焼けた。同部屋の住人1名が煙を吸って病院に搬送されたが軽症であった。警察と消防の調べでは、同室内のこたつから出火した可能性がある。

2023/12 三重・住宅で火災
住宅で火災が起きた。消防が約1時間半後に消火したが、同住宅が全焼した。住人は避難してけが人はなかった。警察と消防の調べでは、同住宅の寝室の電気カーペットから出火した可能性がある。


これらは電気製品から出火した事例です。電気製品が原因となる事故は、漏電や短絡、感電など様々ですが、火災に至るものは少なくありません。私たちにできることとしては、電気製品の正しい使用を心がけることや、古くなった電気製品を適宜更新することなどがあります。

また、電気製品を使用する際に使用する電源ケーブルやコンセントの管理として、使用していない電源ケーブルのプラグをコンセントから抜いておくことや、使用していないコンセントにはコンセントキャップを装着してほこり等の侵入を防ぐこと、そして周辺に埃がたまらないようにこまめに掃除をすることなどを心がけましょう。

 ー使い方に注意したい、電子レンジ

2024/3 愛知・住宅で火災
木造平家建ての住宅の離れで火災が起きた。住人が消防に通報した。消防車13台が約4時間後に消火したが、同離れと木造2階建ての母屋が全焼した。住人1名が意識不明の重体となり、別の住人2名と消防士1名が軽傷を負った。警察と消防の調べでは、離れの台所の電子レンジから何かの原因で出火した可能性がある。


こちらは電子レンジから出火した可能性がある火災です。原因が電子レンジの何であったかまでは情報がありませんが、電子レンジという手軽に使用できる便利な電化製品についても、使用方法を間違えると大変危険なことがあります。

東京消防庁のサイトに「火災に注意!電子レンジを安全に使用しましょう!」という記事があります。どのような使用方法が危険なのか、何を加熱すると危険なのかなど、このページを参考に確認しておきましょう。

カセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶などに関連した事故

 ー容器の加熱による破裂

2024/1 山梨・アパートでカセットこんろ用ガスボンベが破裂して火災
2階建てのアパートの1階の部屋でカセットこんろ用ガスボンベが破裂して火災が起きた。同室の住人が自力で消火したが、同室の窓ガラスが破損し、毛布や枕が焼けた。同室の住人1名が腕や足にやけどで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、同室の住人が石油ファンヒータをつけたまま就寝しており、付近に置かれていたカセットこんろ用ガスボンベが加熱されて内圧が上昇し、破裂して漏洩した可燃性ガスに、石油ファンヒータの火気で着火した可能性がある。

2024/3 兵庫・住宅で火災
木造2階建ての住宅で火災が起きた。同住宅の2階部分約60平方mが焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、電気ストーブの近くに置いてあったヘアスプレー缶が加熱されて内圧が上昇し、破裂して漏洩した可燃性ガスにストーブの火気などで着火した可能性がある。


これらの事例は、暖房器具のそばに置いたカセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶の破裂事故です。このような事故を防ぐためにはどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。

使用中の調理器具付近や暖房器具付近などにカセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶を置くと、それらが異常に加熱される可能性があります。上記の2つの事例はいずれも暖房器具の近くにカセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶をおいていたことにより加熱され、その内圧が上昇して容器が破裂し、漏洩した可燃性ガスに暖房器具の火気で着火したものです。

また、使用していない調理器具付近や暖房器具付近に置くのもやめましょう。調理器具や暖房器具を使用するつもりがなくて置いても、ついうっかりわすれてそれらを作動させてしまうことなどでカセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶が加熱され、事故につながる可能性があります。

そして、カセットこんろ用ガスボンベについては、カセットこんろ使用中に装着したガスボンベが加熱されるような使い方をしないことも大事です。例えば、こんろを覆うような大きな鍋や鉄板などの調理器具を使用したり、こんろを2台以上並べて使用したりすることは、熱がこもってガスボンベが加熱される可能性がありますので大変危険です。このような使用は絶対にしないようにしましょう。

 ーガス抜き中の事故

2024/2 栃木・住宅でカセットこんろ用ガスボンベのガス抜作業中に爆発
住宅でカセットこんろ用ガスボンベのガス抜作業中に爆発が起きた。同住宅の台所の食器棚の一部約0.7平方mが焼けた。住人1名が右足にやけどを負った。警察と消防の調べでは、住人がカセットこんろ用ガスボンベのガス抜作業をしていた際に、ボンベから漏洩した可燃性ガスに何かの原因で着火した可能性がある。

2024/2 長野・団地でスプレー缶のガス抜作業中に爆発
9階建ての団地の8階の部屋で殺虫剤のスプレー缶のガス抜作業中に爆発が起きた。同団地の別の部屋の住人が消防に通報した。消防車など12台が消火したが、同室の窓ガラスが割れ、部屋にあったごみ袋が焼けた。住人1名が顔などにやけどを負って病院に搬送されたが軽傷であった。警察と消防の調べでは、住人が室内で殺虫剤のスプレー缶のガス抜作業をしていた際に、ボンベから漏洩した可燃性ガスに暖房器具の火気で着火した可能性がある。


この2つの事例は、カセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶が関係した事故なかでもそのガス抜き中の事故です。

自治体の決まりに則した方法でカセットこんろ用ガスボンベやスプレー缶の処置をして廃棄することはもちろん大事なことですが、ガス抜きの必要がある場合には、火気のない風通しのいい屋外で行うことは忘れないようにしましょう。なお、換気扇があるからと台所や風呂場でガス抜きを行うと、こんろの火や風呂釜の種火、換気扇のスイッチなどで着火する可能性があるので危険です。これらについても念頭に置いておきたいところです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。もちろん、居住空間で起きる可能性がある事故はこれだけではありませんが、危険なこと、注意したい点を一つでも多く知っておくことで事故を減らすことはできます。みなさん、安全で快適な新生活を!

【参考情報】

東京消防庁
  「火災に注意!電子レンジを安全に使用しましょう!」

さんぽニュース編集員 伊藤貴子