RISCAD Update 2019年11月第2週【週刊化学災害ニュース】

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投稿日:2019年11月13日 10時00分

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*2019/10/31発生の、沖縄・世界遺産の首里城で火災
:木造3階建ての正殿と呼ばれる文化財で火災が起き、周囲の建物にも延焼して計7棟が焼けた。正殿内の電気系統に何かの不具合が起きて出火した可能性

*2019/10/31発生の、京都府・建設工事中の競技場で溶接作業中に火災
:建設工事中の競技場1階の出入口天井付近での火災。出火前に外壁の溶接作業が行われており、防火のための養生が不十分で、飛散した溶接火花で天井裏の保温材や電線に着火した可能性

*2019/11/02発生の、兵庫・建設会社の資材倉庫で火災
:倉庫と倉庫内の建築資材,プレハブ事務所など計約160平方mが焼けた

*2019/11/03発生の、埼玉・ゴム製品工場で火災
:工場と、近隣の別の会社の工場が全焼し、店舗兼住宅1棟の一部が焼けた

*2019/11/04発生の、岐阜・世界遺産白川郷の観光客用駐車場にある小屋で火災
:全焼した小屋のうち1棟は軽トラックや除雪道具、肥料などが入った物置小屋で、もう1棟は配電設備小屋。物置小屋の裏側にあった配電設備で何かの原因で短絡が起きて出火し、隣接する配電設備小屋に延焼した可能性。焼けた小屋は世界遺産ではなかったが、飛散した火の粉で、世界遺産の合掌造り集落に延焼するのを防ぐため、村民が同集落で放水銃59基を使用して散水を行った

*2019/11/06発生の、愛知・紡績工場で機械から火災
:工場は稼働中で、何かの原因で原料綿を整える機械で過熱が起きた可能性

覚えていますか、昨年12月に起きたこの事故。事務所内で約120本もの消臭用エアゾールを噴霧していたということで、とても衝撃的な事故でした。
2018/12/16 北海道・不動産仲介店で消臭スプレーの処分中にガス爆発、火災
木造2階建て雑居ビル1階の不動産仲介店内で消臭用エアゾールの処分作業中にガス爆発、火災が起きた。約10分後に同ビルが炎上した。消防が出動し、約5時間半後に消火したが、同ビル述べ約360平方mが焼け、周辺の建物41棟、車両32台が破損するなどした。同ビルには、同店の他に飲食店、整骨院があった。同店の店長1名が重傷となり、同店の従業員、飲食店やビル外の飲食店の客、通行人など計51名が骨折や切創などで軽傷を負った。うち、同ビル1-2階の飲食店では、1階にいた18名、2階にいた26名の客らが負傷した。窓ガラスが破損するなどした住宅の住民が避難所に避難した。現場周辺は立入規制と交通規制された。警察と消防の調べでは、同店内で店長と従業員2名が部屋のドアや窓を閉め切った状態で消臭用エアゾールを噴霧して処分する作業をしており、店長が手を洗うために湯沸かし器をつけた際に、エアゾール噴出剤のジメチルエーテルに着火した可能性がある。同店では消臭用エアゾールを200本以上所有しており、使用期限が近いものの処分のため、うち約120本を噴霧し処分していた。爆発時に同店外の20kgのLPガスボンベ2本と同ビル内の飲食店外の50kgのLPガスボンベ5本のうち、一部の配管が外れてLPガスが漏洩し、着火した可能性がある。
この消臭用エアゾールを噴霧した不動産仲介店の店長について、重過失激発物破裂容疑および重過失致傷容疑で北海道警が今月中にも書類送検する方針を固めたとのことです。

「重過失激発物破裂」はあまり耳慣れない言葉なので、どのような場合に適用されるのか調べてみました。

「激発物破裂罪」は刑法第117条に定められたもので、火薬、ボイラその他激発すべき物を破裂させて建物などを損壊させた罪のことだそうです。それに「重過失」がつくということで、室内で消臭用エアゾールを大量に噴霧した場合、可燃性のガスが室内に滞留し、何かの原因で着火れば爆発するということを極めて容易に認識し・予見できたにも関わらず、それを回避するための行為を怠った罪ということになります。

この不動産仲介店の入居する雑居ビルには、居酒屋も入居しており、年末の忘年会シーズンも手伝って多くの客がいました。しかしながら、同ビル内にいた人や通行人に死者が出なかったことは本当に不幸中の幸いであったと感じたことが思い出されます。
さんぽニュース編集員 伊藤貴子