RISCAD Update 2021年3月第2週【週刊化学災害ニュース】

2021/03/05 12:00– 2021/03/12 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2021年03月17日 10時00分



*2020/03/03発生の、岩手・ワカサギ釣りのテント内で一酸化炭素中毒

:ワカサギ釣りのテント内で釣人が一酸化炭素中毒で死亡。テント内に調理用のガソリンバーナを使用した形跡があり、換気不足によりテント内で一酸化炭素が発生し、滞留した可能性

*2021/03/07発生の、赤道ギニア共和国・軍施設で弾薬などが爆発

:爆発は複数回起き、家屋を含む同市内のほぼ全ての建物が被害を受けた。98名が死亡し、615名が負傷。軍施設内に安全管理が不十分な状態で保管されていた弾薬やダイナマイトなどに、野焼きの火が延焼した可能性

*2021/03/07発生の、宮城・建設会社の資材置場で火災

:資材置場に駐車中の車両2台が焼損。建設会社の従業員が焼却作業中に、強風により資材に延焼した可能性

*2021/03/10発生の、茨城・廃材置場で廃材の火災

:建設業者と自動車部品輸出業者が使用する廃材置場での廃材の火災。燃えた廃材は、以前廃材置場を使用していた別の業者のものであった

*2021/03/10発生の、千葉・高速道路でトラックの積荷のLPガスボンベが散乱

:高速道路上にLPガスボンベ約20本が散乱し、対向車線を走行中の車両2台が散乱したボンベに衝突。トラックの右前輪が破裂したことによりハンドルを取られた可能性

*2021/03/11発生の、愛知・停車中の電車の車両でライターから火災

:向きを反転できる2人掛け座席に置き忘れられたライターが、座席の向きを変えた際に加わった力で点火された可能性。座席の下部が焼損。けが人はなし


上記の岩手での事故を含め、私たちが情報を得ただけで、今年に入ってから3件のワカサギ釣りテント内での一酸化炭素中毒が発生しました。
2021/1/10 北海道・ワカサギ釣りのテント内で一酸化炭素中毒
湖上のテント内でワカサギ釣り中に一酸化炭素中毒が起きた。別のテントの仲間が異変に気付き,消防に通報した。同テント内には4名がいたが,うち2名は当初意識がなかったため,ドクターヘリで別の市の病院に搬送され,2名は救急車で市内の病院に搬送された。警察と消防の調べでは,同テント内の4名は別のテント内にいた3名とともに同湖にワカサギ釣りに来ていた。同テント内では,暖をとるために調理用ガスバーナを使用しており,換気不足によりテント内に一酸化炭素が滞留した可能性がある。
2021/1/12 北海道・ワカサギ釣りのテント内でガソリンストーブによる一酸化炭素中毒
湖上のテント内でワカサギ釣り中に一酸化炭素中毒が起きた。テント内では子供1名,子供の親とその知人の計3名が釣りをしていた。子供が嘔吐や意識朦朧などの症状となり,子供の親が消防に通報した。子供の他,子供の親と知人にも一酸化炭素中毒の症状がみられたため,病院に搬送された。警察と消防の調べでは,テント内では,暖房用にガソリン燃料ストーブを使用しており,換気不足によりテント内に一酸化炭素が滞留した可能性がある。
2021/3/3 岩手・ワカサギ釣りのテント内で一酸化炭素中毒
湖上のテント内でワカサギ釣り中に一酸化炭素中毒が起きた。同湖の漁業共同組合の監視員が,ファスナの閉まったテントに声をかけたが応答がないため,ファスナを開けて内部を確認したところ,釣人1名が椅子に座ったままの状態で冷たくなって動かないのを発見し,警察に通報した。警察と消防の調べでは,同テント内に調理用のガソリンバーナを使用した形跡があり,換気不足によりテント内で一酸化炭素が発生し,滞留した可能性がある。
今年のワカサギ釣りシーズンは終了間近であるとは思いますが、ワカサギ釣りのテント内での一酸化炭素中毒の事故は、毎年のように繰り返されています。

日々発生する多くの事故の中で、特に何度も繰り返されるタイプの事故には、いくつかの条件が揃うと発生確率が高くなる事例が存在すると考えます。そのような事故は、条件を排除していけば防げる可能性があるのではないでしょうか。

例えば、前出のワカサギ釣りのテント内での一酸化炭素中毒に関して言えば、以下のように考えてみるとどうでしょうか。

  • 可能であればテント内で火気を使用しない
  • →換気をしていないテント内であっても、火気を使用しなければ不完全燃焼が起きないので、一酸化炭素は発生しない
    =事故の発生を防げる

  • 換気不十分のテント内での火気使用は、間違いなく一酸化炭素が発生して内部に滞留すると考える
  • →化学反応として、酸素が不足している状態で燃焼反応がおきれば、一酸化炭素は確実に発生する。また、換気がされていなければ、滞留した一酸化炭素はテント外に出ることはなく、内部に充満すると理解する
    =事故の発生を防げる

  • 「これぐらいの火気ならば大丈夫」、「これぐらいの短時間ならば大丈夫」と考えない
  • →火気使用時に、予想以上の燃焼が起きたり、時間がかかったりする可能性を想定し、換気を確実に行う
    =事故の発生を防げる
このように、行動を起こす前に悪い条件を想定してその条件を排除していけば、起きずに済む事故が多数あるのではないかと思うのです。

作業などに潜む危険要因を発見して解決する能力を高める、危険予知トレーニング(KYT)というものがあります。KYTは様々なシチュエーションに当てはめて行うことができるので、日常生活やレジャーでも、危険が潜んでいそうなことを行う前にはKYTを実践してみてはいかがでしょうか?

 

【参考情報】

厚生労働省
 職場のあんぜんサイト
  危険予知訓練(KYT)
さんぽニュース編集員 伊藤貴子