RISCAD Update 2022年10月第4週【週刊化学災害ニュース】

2022/10/21 12:00– 2022/10/28 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2022年11月02日 10時00分



*2022/09/01発生の、京都・廃棄物処理施設の放流水から六価クロム化合物を検出

:施設の運転委託業者の作業員が、焼却炉の灰の一部を受ける水槽の清掃後に水槽の水抜きをする際、他の水槽を経て希釈すべきところを作業手順を誤認して作業工程を短縮した可能性。2022/9/1に実施した放流水の定期検査で判明したが、市の指導で約1ヶ月間の観測を行ったところ基準値の超過はなかった

*2022/10/21発生の、北海道・製鉄所のコークス炉で保守作業中に酸欠

:保守作業中の混炭機の高さ約2mのタンク内での酸欠事故。作業員2名が死亡。当日はタンク内の整備予定はなく、最初に倒れた1名が同タンク内に工具を落として取りに入った可能性

*2022/10/25発生の、神奈川・建設中の市役所庁舎で断熱材の火災

:地上25階、地下2階建ての建設中の市役所庁舎24階の天井裏での火災。天井に設置された型枠用の鋼板をガスバーナで切断中に、鋼板の上の天井裏に設置された断熱材がガスバーナの熱で出火したか、ガスバーナの火花で着火した可能性

*2022/10/26発生の、静岡・清掃工場の跡地から鉛などを検出

:清掃工場跡地の土壌への含有量調査で、環境基準の約40倍の鉛や鉛化合物が検出され、土壌への溶出量調査では環境基準を超えるヒ素とフッ素が検出された。住民などへの健康被害はなかったが、市が周辺の320棟を対象に井戸水の水質検査を行い、安全が確認されるまでは飲用しないように呼びかけた

*2022/10/27発生の、秋田・木材工場のチップサイロで木材チップの火災

:工場の容量約400立方mのサイロ内に貯蔵されていた木材チップから出火した可能性。消防が約47時間後に鎮火したが、サイロ内のチップ約200立方mが焼けた

*2022/10/27発生の、秋田・合板工場で乾燥機の火災

:工場内の合板乾燥工程に設置された乾燥機から出火した可能性


上記10/27発生の秋田・チップサイロ内の木材チップの火災が起きた木材工場ですが、この会社の工場では、2016年に2度の火災が発生しています。事故の概要は以下の通りです。

A工場:2016/4 合板工場で乾燥設備の火災 鉄骨造一部2階建ての合板工場で乾燥設備の火災が起きた。消防が約37時間後に鎮火したが、同工場1棟約19,000平方mが全焼し、同敷地内の別の工場の一部が焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同工場の木材乾燥設備付近から出火した可能性がある。

B工場:2016/6 合板工場で大型集塵機の火災 合板工場で大型集塵機の火災が起きた。同工場の大型集塵機約21平方mが焼けた。警察と消防の調べでは、研磨作業で出た火花が飛んで集塵機の配管に着火した可能性がある。

A工場は10/27の火災と同一の敷地内にある別の工場建屋での火災のようです。また、B工場は、A工場がある敷地とは別の市にある工場です。

初めに述べたようにA工場とB工場は同じ会社の工場で、同じ県内の30kmほど離れた場所にあります。2ヶ月という短い期間で同一の会社の2つの工場で火災が起きたというわけです。

というのも、この会社は合板の生産量が国内トップクラスで、A工場がメインで合板の生産をしていました。しかしA工場で火災が起きたことを受け、B工場はA工場の稼働停止分をカバーすべくフル稼働していたようです。そんな時にB工場の火災が発生したという背景があるようです。

事情があるから事故が起きてもよいということはありませんが、B工場での火災発生時、現場ではA工場の火災を受けての生産量増加により、通常とは違う流れの作業が発生したり、作業を急いでいたりといったことが起きていたのかもしれません。

想定の話も入りましたが、「急いては事を仕損じる」という言葉を思い出しました。生産現場でも私たちの生活でも、急ぐ時ほど慎重になることは大事ではないかと思うのです。

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子