RISCAD Update 2022年11月第2週【週刊化学災害ニュース】
2022/11/04 12:00– 2022/11/11 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2022年11月16日 10時00分
:漏洩した絶縁油はボイラ内の機器の冷却用であったが、漏洩時、ボイラは撤去作業中で使用されていなかった
:排水口からは2018年以降42回シアンが検出されており、2022/9/30に県に再発防止策を提出し、二重のシアン処理や流入防止措置などの対策を講じていたが、再度シアンが検出された
:交通事故で横転したトラックの積荷のLPガスボンベ約10本が路上に散乱。ボンベの一部からガスが噴出したが、運転手がバルブを閉めるなどして処置し、漏洩したガスへの着火はなし
:年に一度の定期修理中の工場での火災。工場は稼働しておらず、石炭供給用エレベータの溶接補修作業中にエレベータ内の石炭の残渣に溶接火花で着火した可能性
:施設では農家や業者が持込んだ枯草を再利用して肥料を製造していた。約4mの高さに野積みされた枯草から自然発火した可能性
:トラックから廃材置場に枯葉を下ろす作業中に、何かの原因で枯葉や流木などの廃材に着火した可能性
2022/6 小学校で実験中にカセットこんろの火でメタノールに着火
小学校で理科の実験中にカセットこんろの火でビーカ内のメタノールに着火した。理科室にいた6年生の児童ら約25名のうち、児童1名がやけどで重傷、3名が軽傷を負い病院に搬送された。建物への延焼はなかった。市の教育委員会の調べでは、理科室では、アルコールでじゃがいもの葉を脱色してヨウ素液を加え、色の変化で澱粉の確認をする実験中で、教員が脱色に使用するメタノールを容量1Lのビーカに入れ、カセットこんろで加熱していた。メタノールの量が少ないことに気づいた教員が、カセットこんろを点火したままビーカにメタノールを注ぎ足した際、カセットこんろの火でメタノールに着火し、炎が上がった可能性がある。本来エタノールを使用すべきところにメタノールを使用し、本来行うべきではない直接加熱を行っていた。やけどを負った児童とメタノールを加熱していた教卓の距離は約3-4m離れていた。
事故の直接原因は、一斗缶からビーカに直接メタノールを注ぎ足した際にメタノールがこぼれ、点火したままであったカセットこんろの火で着火したとのことですが、この行為は素人でも危険だと分かるものです。報道では、このメタノールはアルコールランプ燃料用として使用されていたものとあるので、引火性液体に該当する濃度のものであったと推察されます。
また、この実験は、以下のように本来の手順に従わずに行われていたことが確認されています。教員はこの事故の1年前にも今回同様、手順に従わずに実験を行っていたそうです。
・メタノールを使用 →エタノールを使うべきであった
・ビーカをカセットこんろで直接加熱した →湯せんで温めるべきであった
事故により、児童4名がやけどを負いましたが、うち1名は未だ通院中とのこと。
薬品の性質とその扱い方を熟知しているはずのベテランの教員が、なぜ一斗缶から火にかけたビーカに直接メタノールを注ぎたすという危険な行為をしたのか、個人的には、注意義務を怠ったということで片付けるにはショッキング過ぎる事故でした。
さんぽニュース編集員 伊藤貴子