RISCAD Update 2023年3月第3週【週刊化学災害ニュース】

2023/03/10 12:00 – 2023/03/17 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2023年03月22日 10時00分



*2023/03/08発生の、愛媛・アスファルト工場の埋設配管からA重油が漏洩して海に流出

:アスファルトの製造工程で使用するバーナの燃料であるA重油タンクの地中に埋設された鋼製配管が何かの原因で破損した可能性。A重油が漏洩して、最大約4,800Lが水路を通じて海に流出

*2023/03/09発生の、新潟・製菓工場でフライヤの火災

:煎餅やスナック菓子などを製造する工場での火災。フライヤなどが焼けた。出火時、工場は稼働中で、フライヤ付近で従業員2名が清掃作業をしていた

*2023/03/10発生の、福島・カセットこんろ用ガスボンベ工場のガス充塡施設でガス爆発

:何かの原因でガス充塡設備内に充満したガスに着火した可能性。工場の一部と付近の山林が焼けた。従業員4名が病院に搬送され、うち3名が全身やけどで重傷

*2023/03/12発生の、韓国・タイヤ工場で火災

:工場地下1階のタイヤ成型押出機の加硫工程付近で出火した可能性。工場の面積が広く、可燃性物質が多かったことや、タイヤの燃焼により有害ガスが発生したこと、風が強かったことなどで消火活動が難航した可能性。工場約87,000平方mが全焼

*2023/03/14発生の、京都・石炭火力発電所の木質ペレット供給設備で火災

:石炭とバイオマス燃料である木質ペレットを混ぜて燃焼して発電している石炭火力発電所での火災。木質ペレットをベルトコンベアでボイラに運搬中に何かの原因で設備から出火した可能性。木質ペレットのサイロ2棟とベルトコンベアの中継所2棟の計4棟が焼けた

*2023/03/15発生の、宮城・廃棄物処理施設の廃棄物ピット内で火災

:家庭から出た廃棄物が保管してあるピットでの火災。廃棄物から出火した可能性


2月第5週-3月第1週のRISCAD Updateでお知らせした事故で、ホテルのレストランで飲料水として次亜塩素酸ナトリウム入りの水が誤提供されたというものがありました。その事故概要は以下の通りです。

2023/2/26 大阪・ホテルのレストランで次亜塩素酸ナトリウム入りの水を飲料水として誤提供
ホテルのレストランで次亜塩素酸ナトリウムが入った水を飲料水として誤提供した。当時同レストランでは87名の団体客が会食中で,水差しで提供された次亜塩素酸ナトリウム入りの水を飲んだ16名のうち,3名が吐き気などで体調不良となり,病院に搬送されたが軽症であった。警察と消防の調べでは,同ホテルでは漂白や殺菌のため次亜塩素酸ナトリウムを使用しており,作業場には次亜塩素酸ナトリウム入りの水が出る専用の水栓があった。同水栓からの水が飲料用に提供された可能性がある。

また、3月初旬には岡山で以下のような事故が起きました。

2023/3/2 岡山・ホテルのレストランで次亜塩素酸ナトリウム入りの水を飲料水として誤提供 ホテルのレストランで次亜塩素酸ナトリウムが入った水を飲料水として誤提供した。飲料水提供用のドリンクサーバで提供された次亜塩素酸ナトリウム入りの水を飲んだ可能性がある9名のうち、3名が吐き気などの体調不良で軽症となった。警察と消防、保健所の調べでは、誤提供された次亜塩素酸ナトリウム水溶液の塩素濃度は100-200ppmと推定された。同レストランで提供しているウーロン茶のサーバ用タンクに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を入れて消毒中に、別の従業員がそのタンクを飲料水提供用ドリンクサーバに誤って取付けた可能性がある。

どちらも発生した場所がホテルのレストランということで、特に目に止まるニュースでした。誤提供された水を飲み体調不良となった方が出ましたが、いずれも軽症ということです。いずれの事故も、原因は人的ミスと考えられます。

このような事故を防止するためには、次亜塩素酸ナトリウム入りの水が出る専用の水栓には「消毒用」と大きく見えるように表示するとか、消毒中のタンクには「消毒中」と目立つ表示を貼り付ける、札をかけるなどして、従業員同士が情報を共有し合うことが大事であると思います。

今回の事故で被害に遭ったのは客で、それはレストラン(飲食店)という客にサービスをする業種であったからと考えられます。職種が変われば不注意等による事故で被害を被るのは従業員ということになります。

もうすぐ4月。新人を迎える職場は多いかと思います。業務でも、業務以外でも、組織内で「当たり前」、「常識」として慣例のように共有されていることが、実は新人にとっては「全く知らないこと」である可能性があります。特に事故につながるようなことについては、新人教育の場で早めに共有し、また「安全の見える化」のために、誰が見てもわかる「危険表示」などにより注意喚起することは大事だと思うのです。

さんぽニュース編集員 伊藤貴子