RISCAD Update 2023年4月第2週【週刊化学災害ニュース】

2023/04/07 12:00 – 2023/04/14 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2023年04月19日 10時00分



*2023/03/27発生の、タイ・水産加工工場で冷媒配管が破損してアンモニアが漏洩

:製造ラインの冷蔵庫の天井の一部が崩落したことで配管が破損し、冷媒のアンモニアが漏洩した可能性。従業員8名と近隣住民1名が嘔吐やめまいなどの体調不良で病院に搬送されたが、いずれも軽症

*2023/03/31発生の、新潟・産業廃棄物処理会社でガスバーナで洗濯機を解体中に着衣着火

:ガスバーナを使用して廃棄物の業務用の大型洗濯機の解体作業をしていた際の事故。洗濯機内に残留していた何かの可燃物にガスバーナの火花などで着火し,その火で着衣に着火した可能性。作業中の社員1名が全身やけどで病院に搬送された

*2023/04/07発生の、新潟・米菓工場で火災

:煎餅などの米菓を製造している工場での火災。ベルトコンベアで運搬中の煎餅と同工場の天井の一部が焼けた

*2023/04/11発生の、米国・リサイクル工場で火災

:工場敷地内でセミトレーラ(荷台付被牽引車)から出火し、プラスチック製品に延焼した可能性。発生した煙に有害物質が含まれる恐れがあり、当局が工場から半径約800m以内の住民約2,000名に避難命令を出した

*2023/04/11発生の、新潟・原子力発電所のランドリ建屋で洗濯機の火災

:放射線管理区域内にある、放射線管理区域に入る際に着用する衣服を洗濯する施設での火災。2台ある洗濯機のうちの1台のモータ付近から出火した可能性

*2023/04/13発生の、福島・港の埠頭で防舷材の取替作業中に火災

:コンビナート防災区域内の港で、船舶を保護するために岸壁に取付けられたゴム製の防舷材の取替作業中に、工具などから出た火花で防舷材に着火した可能性


上記のように、4/7に新潟の製菓工場で火災が起きました。

この工場では煎餅などの米菓を製造していたとのことです。稼働中の工場での火災による被害は、ベルトコンベアで運ばれていた煎餅と工場の天井の一部の焼損とのことで、人的被害がなく幸いでした。

米菓を製造する工場での火災というと、2022/2に同じく新潟で発生した、7名が死傷した火災が記憶に新しいところです。

2023/02 新潟・製菓工場で火災
鉄筋コンクリート一部2階建ての米菓製造工場で火災が起きた。警備会社が消防に通報した。消防車など22台で約11時間後に鎮火したが、同工場が全焼した。清掃担当の従業員4名と製造担当の従業員2名の計6名が死亡し、従業員1名が煙を吸って病院に搬送された。警察と消防の調べでは、同工場は24時間操業で、火災のあった建物では、煎餅やあられを製造しており生地の作成、成型や乾燥、焼成、包装などの工程ごとの区画に分かれていた。煎餅焼成用の長さ数10mの焼釜付近か乾燥工程付近で、炭化した煎餅のかすなどから出火した可能性がある。出火時は生産ラインは休憩時間で、清掃作業が行われていたが、製造機械は点火されたままであった。また、同工場内には約30名の従業員がいたが、火災により停電が起き、避難に支障が出た可能性がある。

先月末、この火災について総務省消防庁火災原因調査報告書を公開しました。

報告書によれば、乾燥機内に堆積した油分を含んだ煎餅のかけらが乾燥機から熱を受け、さらに、油分の酸化反応による酸化熱も加わったことで、煎餅のかけらの温度が発火点を超え、出火原因となったと判定したとのこと。

そして、死傷者が多く出た(死者6名、傷者1名)のは、火災が発生したのが夜間であったこと、出火直後に停電が発生したこと、さらに有毒ガスを含んだ黒煙が多量に発生して避難を困難にさせたことが原因と考えられるとのことです。

さらに、消防訓練に参加したことがない従業員がおり、また、防火シャッター及び非常時の避難口が周知されていなかったことが避難を困難にさせたと考えられるとのこと。

従業員の消防訓練への確実な参加や避難口等の周知など、組織が率先して行っておけば、万が一火災が発生しても従業員がより多く救われたかもしれないと考えると、安全に関する教育・訓練の重要性を改めて認識させられます。

【参考情報】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子