はじめに

ADMER(正式名称:産総研-曝露・リスク評価大気拡散モデル(national institute of Advanced Industrial Science and Technology – Atmospheric Dispersion Model for Exposure and Risk assessment : AIST-ADMER ) は、化学物質のリスク評価のために開発された大気拡散モデルであり、PCで動くソフトウェアです。

気象、人口等の基礎データを内蔵しているため、排出量と簡単な物性を入力データとして用意すれば、化学物質の大気中濃度と地表への沈着量の分布を、詳細な空間解像度(5kmから100m四方格子)で推定することができます。

また、排出量や気象データを計算に使える形に加工する機能、計算結果を解析し地図やグラフに表示する機能、操作や結果の管理を助けるユーザー・インターフェイスなど、実務でリスク評価を行うときに手助けとなる便利な機能を搭載しています。

ADMERは、2002年にβ版(ver.0.8β)を最初に公表して以来、ユーザーの方々からの要望をできるだけ取り入れ、様々な改良やバグフィックスを重ねてきました。

ADMERは化学物質の長期的な暴露による慢性的なリスクを評価することを目的に開発された経緯があり、比較的長期の平均的な濃度(月平均が基本)を推定、評価するのに便利なようにデザインされています。

しかしながら、近年、特に東日本大震災以降は、地震などの自然災害や産業事故が原因で汚染物質が突発的に放出されるような場面を想定した汚染状況予測のニーズが高まってきました。

そこで、最新版のVer.3は、短期間評価への対応、ワーストケース条件抽出、ソースリセプターマトリックス解析機能などの新たな機能を搭載し、事故などによる突発的な放出を想定した短期間の汚染状況の推定に対応しました。

ADMERは、現在、国、自治体、教育機関、企業などすでに様々な場所で、大気系化学物質のリスク評価に活用されています。新しいADMERの公開により、さらに多くの方に、様々な場面でご活用いただくことを期待します。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
安全科学研究部門
環境暴露モデリンググループ
研究グループ長

東野 晴行