目標
ナノ材料には、化学組成のみならず、サイズ、形状、比表面積、表面状態など材料特性の多様性があります。そのことが有害性に影響している可能性が指摘されているものの、多種多様なナノ材料の全てについて詳細な評価を実施することは必ずしも現実的ではないとの指摘もあります。そのため、実社会におけるリスク管理を可能にする有害性評価の枠組みが必要となっています。
そこで、本プロジェクトでは、多様なナノ材料の安全・安心確保のため、合理的かつ効率的な有害性評価技術を構築することを目標とします。
具体的には、以下の図に示すように、有害性評価に段階的アプローチ(tiered approach)を導入し、経気道暴露に係る有害性評価試験のゴールドスタンダードである吸入暴露試験の前に二つの段階を設定します。
● 対象のナノ材料を、既に有害性評価済みのナノ材料と同等とみなすことができるかどうかを判断(Tier 0)
● 既存のナノ材料と同等とはみなせない場合、有害性のスクリーニング試験法としての気管内投与試験を実施(Tier 1)
目標達成のためには、初期有害性情報を得るための低コスト・簡便な有害性評価技術の構築や有害性評価試験・評価に必要な手技・手法の確立と標準化が必要であることから、以下の課題を設定して本研究開発を進めます。
① ナノ材料の同等性判断のための評価技術の構築
② 初期有害性情報取得のための低コスト・簡便な有害性評価技術の構築(初期有害性評価としての気管内投与試験法の確立)
③ ナノ材料の有害性試験・評価のための基盤技術の開発
なお、本プロジェクトでは、吸入経路の暴露(現在最も懸念される暴露経路)を対象とし、主に「肺の炎症・線維化」を評価のエンドポイントとしています。
また、本プロジェクトにおける全ての動物試験は、実施機関ごとに倫理審査を経て、3R精神(代替試験法の活用、動物数の削減、苦痛の軽減)に則って適正に実施しています。
以下に、これらの課題に対する研究開発項目の位置付けについて整理します。