研究開発項目:①ナノ材料の同等性判断のための評価技術の構築

通常の化学物質であれば、同一化学式で記述できる物質の有害性については、メーカーや製法が変わっても一度有害性試験を実施すればその結果が共用できると考えられています。一方、ナノ材料の場合は、同一化学式の材料でも粒子の大きさ、形状等の物理化学特性が変化すれば有害性が変わり得るとの見方があります。これを前提に、材料の製造ロットごとに有害性試験を実施するような非現実的な対応が求められることになれば、ナノ材料の開発・応用を停滞させることが懸念されます。

ナノ材料の安全性を効果的・効率的に確保するためには、メーカーや製法が異なるナノ材料について個々に有害性試験を行わなくても、物理化学特性の類似性に着目して体系的に評価できるようにすることが重要です。そのためには、ナノ材料の同等性に関する判断基準(有害性が変わらないと考えてよい物理化学特性の変化の範囲)を確立することが有効です。しかし、既往の有害性試験データの解析のみによって同等性の判断基準を構築するのは困難である一方、物理化学特性の有害性への影響を検討するために多数の吸入暴露試験を実施するのも、費用や技術的な困難さから現実的ではありません。

以上の事情を考慮し、物理化学特性の異なるナノ材料を用いた系統的な気管内投与試験によって、ナノ材料の物理化学特性の違いによる体内動態及び生体反応の違いを明らかにし、同等性の判断基準を確立します。