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研究開発項目:②初期有害性情報取得のための低コスト・簡便な有害性評価技術の構築
ナノ材料について、最も懸念されているヒトの暴露経路は、吸入経路です。これまで報告されている試験動物を用いた有害性試験の多くは、吸入経路での暴露を想定したものです。また、米国では、有害物質管理法(TSCA)の下、各社のナノ材料について90日間の吸入暴露試験を課す等の法令適用事例も見られます。
吸入暴露試験は、吸入経路の有害性の評価としては、ゴールドスタンダードです。しかし、ナノ材料の吸入暴露試験は、①エアロゾルの生成や吸入チャンバーの設置が必要になる等の技術的な困難さや、②時間・費用が格段にかかるといった事情から、広範多岐にわたるナノ材料の初期有害性情報を得るための標準的な試験方法として活用するには、現実的でない面があります。一方、気管内投与試験は、エアロゾルの吸入の代わりに、ナノ材料の分散液を気管内に滴下する等によって試験試料を肺に到達させる手法です。これまでその活用は、有害性の定性的な評価の目的にとどまり、OECDのテストガイドラインに採用されていないことから伺えるように、行政上利用できる標準的な試験手法としては確立されていませんでした。
このため、気管内投与試験について、吸入暴露試験との関係を明らかにするとともに、標準化に係る検討を行うことによって、行政上利用できる初期有害性情報の取得を可能にする試験手法を確立します。また、気管内投与試験を広く一般的に活用される技術とするため、作業環境でのナノ材料エアロゾルやそれを模擬した発生器からのナノ材料エアロゾルを、液相捕集によって気管内投与試験に供する試料の作成手法を構築します。