RISCAD Update 2023年6月第3週【週刊化学災害ニュース】

2023/6/8 12:00 – 2023/6/16 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2023年6月21日 10時00分



*2023/6/8発生の、愛媛・産業廃棄物処理施設で機械の火災

:高さ2.5m、幅1m、奥行0.85mの発泡スチロールを溶融する機械から出火した可能性

*2023/6/13発生の、富山・コンクリート資材工場で切断作業中のドラム缶で爆発

:ガス溶接機を使用してドラム缶の切断作業をしていた際に、ドラム缶内に残留していた可燃性ガスに溶接火花で着火した可能性。ドラム缶が破裂して約7m吹飛んだ。切断作業中の従業員1名が約6m吹飛ばされ、左足を骨折して重傷

*2023/6/14発生の、新潟・化学工場でプラントの配管切断作業中に爆発

:クロロプレンゴムなどの合成ゴムを製造するプラントでの配管切断作業中の爆発事故。協力会社の作業員1名が心肺停止で病院に搬送されたが、約3時間後に死亡。別の作業員2名が軽傷

*2023/6/13発生の、長野・森林組合の木質ペレット工場で火災

:松を破砕してストーブの燃料などに使用する木質ペレットを製造する工場での火災。木材を乾燥させる工程で出火した可能性

*2023/6/15発生の、千葉・市営プールで消毒薬の誤投入により塩素ガスが発生

:地下1階の濾過機械室で、次亜塩素酸ナトリウムをタンクに補充しようとして誤ってポリ塩化アルミニウムを投入して塩素ガスが発生した可能性。職員1名が目の痛みで軽症。プールの利用者と施設に併設されている高齢者福祉施設の利用者など計433名が屋外に避難

*2023/5/31発生の、山口・新築工事現場で水道の配管工事中に一酸化炭素中毒

:介護施設の新築工事に伴い、水道の配管工事を行うため床のコンクリートをエンジンカッタで切断していた際に起きた一酸化炭素中毒。換気不足によりエンジンカッタの排気ガスが滞留した可能性。作業員3名が体調不良となったが軽症


6月のRISCAD CloseUPでは「理科の実験に関連した体調不良」をお送りしましたが、同記事で取り上げた硫化鉄を作る実験に関連した生徒の体調不良が、今月に入りまた数例発生しました。

6/2 福岡・中学校の理科の実験で硫化水素による体調不良
中学校の理科室で硫化水素を発生させる実験後に体調不良が起きた。生徒10名が体調不良となり、病院に搬送された。いずれも軽症であったが、うち6名が念のため入院した。教育委員会の調べでは、理科室で2年生の生徒30名が、鉄と硫黄を化合させてできた硫化鉄に塩酸を加えて硫化水素を発生させる実験を行い、硫化水素の発生を確認するために臭いを嗅ぐなどした。実験中、同室は窓を開け、換気扇を回していた。

6/2 埼玉・中学校の理科の実験で異臭による体調不良
中学校の理科室での実験後に異臭による体調不良が起きた。生徒11名が頭痛や吐気、喉の痛みなどで体調不良となり、病院に搬送されたが軽症であった。警察と教育委員会の調べでは、理科室で2年生の生徒35名がグループごとに分かれ、鉄と硫黄を試験管に入れて加熱する実験を行った。実験中は窓を全開にしており、実験に使用した試料の量は適切であった。

6/8 福岡・中学校の理科の実験で硫化水素による体調不良
中学校の理科室で硫化水素を発生させる実験後に体調不良が起きた。生徒16名が頭痛や吐気で体調不良となり、病院に搬送されたがいずれも軽症であった。教育委員会の調べでは、理科室で2年生の生徒36名が、鉄と硫黄を化合させてできた硫化鉄に塩酸を加えて硫化水素を発生させる実験を行った。硫化水素の発生を確認する際に、生徒が誤った方法で臭いを嗅ぐなどして硫化水素を吸込んだ可能性がある。実験中、同室は窓を開けて換気をしていた。

6/15 東京・中学校の理科の実験で硫化水素による体調不良
中学校の理科室で硫化鉄を作る硫化水素を発生させる実験後に体調不良が起きた。生徒8名が頭痛などで体調不良となり、病院に搬送されたがいずれも軽症であった。教育委員会の調べでは、理科室で2年生の生徒36名が、硫化鉄を作って硫化水素を発生させる実験を行っており、生徒は硫化水素を吸って体調不良となった可能性がある。

「また起きた」と言っているだけでは、何も改善しません。例えば学校の理科室に局所排気装置(ドラフトチャンバ)を設置するなどの方法がとれればよいのではないかと思うのですが、経費を考えるとなかなか難しいことなのであろうと推察します。いずれにしても、悩ましい問題です。

さんぽニュース編集員 伊藤貴子