RISCAD Update 2019年10月第5週-11月第1週【週刊化学災害ニュース】

2019/10/25 12:00 – 2019/11/01 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2019年11月06日 10時00分

(現在、RISCADはリニューアルのため公開停止中です)


*2019/10/12発生の、神奈川・沈没した貨物船から燃料の重油が流出
:台風19号の影響で沈没した貨物船から燃料の重油が漏洩し、海に流出。海上保安部や船会社が措置を行ったが、沈没から約2週間経過後も海上に油膜が確認され、海岸には重油が漂着した

*2019/10/21発生の、福島・台風による浸水で溶剤リサイクル工場から有害物質入りのドラム缶などが流出
:台風19号による大雨の影響で、溶剤リサイクル工場からフッ化水素アンモニウム溶液、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、イソプロピルアルコールなどの有害物質が入ったドラム缶、一斗缶、樹脂容器など多数が川に流出。管理帳簿も水没し、正確な流出量は不明。一部は発見され回収されたが、蓋が開いたり、容器に穴が開いたりして内容物が漏洩しているものがあった

*2019/10/26発生の、福島・亜鉛精錬工場のタンクから硫酸が漏洩
:容量約3,000tのタンクに入った硫酸約1,900tのうち、約930tが漏洩。漏洩した硫酸は工場敷地内のフェンスでとどまり、敷地外への流出はなかった

*2019/10/26発生の、茨城・花火大会で花火が地上開発
:打揚煙火が何かの原因で空中で開発せずに、打揚場所から約250m離れた観客席付近の地面に落下して開発した可能性
打上花火に関係する事故とその用語については過去の RISCAD CloseUPをご参考ください)

*2019/10/29発生の、北海道・建設会社のビルで火災
:約15時間半後に鎮火。鉄筋コンクリート造地上10階、地下2階建てのビルのうち、4階と10階を中心とした約5,000平方mが焼けた。何かの原因で4階から出火し、吹抜けの構造の影響で10階まで延焼した可能性

*2019/10/31発生の、パキスタン・列車でガス爆発、火災
:乗客が車内にガスコンロを持ち込んで朝食を調理しており、燃料のガスボンベから何かの原因で漏洩したガスに着火した可能性

10/31、沖縄県の首里城で火災が発生し、建物7棟、約4,800平方mが焼け、収蔵品の絵画や漆器など約1,500点のうち、約430点が焼失したそうです。

首里城は、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一部としてユネスコの世界文化遺産に登録され、今年初旬には、およそ30年にわたる復元工事が完了したばかりでした。

現在までの調べでは、城のメインの建物である正殿内で何かの電気系統トラブルが起きて火災につながった可能性があるとのことです。また、この火災がこれほど拡大したことについて、専門家等からはいくつかの推定される要因があげられており、それらが重なったことでこの火災がここまで拡大した可能性があるともいわれています。

・消防法に基づくスプリンクラの設置義務がなく、スプリンクラが設置されていなかったため、初期消火に対応できなかった可能性
・漆塗り箇所が、消火しづらく、また燃焼速度が速かった可能性
・沖縄文化に特有の、桐油(とうゆ、アブラギリという植物の種から採る油)に顔料を混ぜた琉球塗装により、燃焼速度が速かった可能性
・首里城が標高約120mの高台に位置していたことで、風の影響を受けやすかった可能性
・放水消火のために、首里城を囲んだ城壁を迂回しながらホースを延長する必要があった可能性
・建物同士の距離が近かったため、輻射熱で延焼した可能性

ざっとニュース等を確認しても、これだけの要因が語られていました。未だ実況見分の途中ですので、今後まだ他の要因が明らかになっていくことと思われます。

11/4には、白川郷の小屋の一部が焼ける火災がありました。こちらは世界文化遺産の「合掌造り集落」の建物への延焼はありませんでしたが、木造のものが多い日本の文化遺産と火災について考えさせられる週末となりました。


   2013年のノートルダム大聖堂      今年10月、火災後の修復作業中
今年4月に火災が起きたフランス・パリのノートルダム大聖堂。1991年に「パリのセーヌ河岸」として、周辺の建造物等とともにユネスコ界文化遺産に登録された
                         (「さんぽのひろば」和田撮影)

さんぽニュース編集員 伊藤貴子