私たちの身近な場所での一酸化炭素中毒【注目の化学災害ニュース】2018年6月のニュースから RISCAD CloseUP

投稿日:2018年07月05日 10時00分

2018年6月のニュースファイルから、さんぽチームで活発に議論がされた内容をご紹介いたします。
6月は飲食店などでの一酸化炭素中毒の事故が目立ちました。一体どんな場合に一酸化炭素中毒は起きるのでしょうか?今回は私たちの身近な場所での一酸化炭素中毒についてClose UPです。

6月は飲食店や食品工場での一酸化炭素中毒の事故がありました。
2018/06/12 飲食店で宴会中に一酸化炭素中毒
2018/06/21 弁当工場で不完全燃焼による一酸化炭素中毒
2018/06/30 飲食店で不完全燃焼による一酸化炭素中毒

1件目は換気不足による一酸化炭素中毒、他の2件はガスの不完全燃焼による一酸化炭素中毒ですね。

私たちの身近な場所において、一酸化炭素はどのように発生するのでしょうか?火災による死因が一酸化炭素であったという記事はよく目にしますが。

炭素や、炭素を含む物質が燃焼する際に酸素の供給が十分であれば完全燃焼して二酸化炭素が発生します。逆に、酸素の供給が不十分であった場合には、不完全燃焼を起こして一酸化炭素が発生します。特に、換気が不十分な場所での一酸化炭素の発生は中毒につながります。私たちの身の回りにあるもので一酸化炭素中毒のきっかけになったものとしては、ガス器具や炭火などがよく聞かれますね。

確かにそうですね。先にあげた6月の3件の事故でも、1件目は飲食店の囲炉裏での炭火料理中で換気不足が原因だった可能性があるようですし、後の2件はそれぞれ食品工場と飲食店ですが、ガス調理器具の不完全燃焼が原因の可能性があるようです。

一酸化炭素はなぜ怖いか

一酸化炭素は私たちの身体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?異臭がしたり、気分が悪くなったりという症状はあるのでしょうか?たとえば硫化水素の場合、俗に卵の腐ったような匂いがすると言われていますよね。

一酸化炭素は無色・無臭で、空気と比べた比重は1:0.967と、室内で発生した場合は私たちのいる空間全体に広がる傾向にあります。また、一酸化炭素中毒の身体症状としては、頭痛、吐き気、めまい、意識障害などがありますが、症状がゆっくり進行するため体調変化に気づくのが遅れ、自覚なく長時間一酸化炭素を吸い続けたことで突然意識を失うなど、重篤な症状に陥ったり、死亡したりするケースがあります。

一酸化炭素が「サイレント・キラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれるのはそういう理由なのですね。

一酸化炭素中毒にならないためには

では、一酸化炭素中毒にならないために、私たちはどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?

6月の事故例でいうと、1件目の事例のような一酸化炭素が発生する可能性のある室内の場合、窓を開ける、換気扇を回すなどの十分な換気が重要です。他の2件の事例のようなガス器具などの不具合によるものは、日頃のしっかりとした器具の点検で未然に防ぐことができます。もちろんその上で、換気を含め説明書に従って正しく使用することが大切であることは言うまでもありません。

なるほど、換気と点検ですね。覚えておきます。

【参考記事】

「さんぽのひろば」さんぽコラム:産業を識る、保安を語る
Dating Chemistry 人と化学のランデヴー:若倉正英コラムより
労働災害と酸素欠乏症【Dating Chemistry 人と化学のランデヴー】by 若倉正英
*コラム内で一酸化炭素中毒にも触れています

【編集後記】

一酸化炭素中毒は飲食店などのみならず、私たちの家庭でも起こりうる事故です。しかし、換気と点検で防げる事故でもあります。それを念頭において、場所、状況、器具などの確認をしていくことが大事ですね。

さんぽニュース編集員 伊藤貴子