投稿日:2021年04月08日 10時00分
3月第2週のRISCAD Updateで、みなさんにお勧めした危険予知トレーニング(KYT)ですが、KYTを行うことで、作業などに潜む危険要因を発見して解決する能力を高めることができると言われています。また、KYTは様々なシチュエーションに当てはめて行うことができるので、職場での安全活動としてのみならず、私たちの日常生活やレジャーなどでの危険回避の手がかりとしても応用ができます。4月は新年度のスタートということで、事故のない1年を目指すためにも、RISCAD CloseUPでは、今回から数回にわたり「危険予知トレーニング(KYT)のススメ」と題し、KYTを学んでいきたいと思います。みなさんもぜひ一緒に考え、トレーニングしてみましょう。
危険予知トレーニング(KYT)について
まず、危険予知トレーニング(KYT)とはどんなトレーニングなのでしょうか。
危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法です。ローマ字のKYTは、危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTをとったものです。
( 厚生労働省 職場のあんぜんサイト内 危険予知訓練(KYT) より引用)
より詳しい内容については、 「危険予知訓練(KYT)」(厚生労働省 職場のあんぜんサイト内)をご覧いただくこととして、早速トレーニングの実践をしてみたいと思います。
第1回目の今回は、職場、家庭どちらでも使用している可能性がある、電源ケーブルに関するKYTです。
プロセス1:どのような危険性があるか意見を出し合う
ここに電源ケーブルの写真があります。この写真から、事故につながる可能性がある危険をあげてみましょう。(写真はKYT用に状況を設定して撮影したものです。)
私たち「さんぽのひろば」からは、さんぽさん、わんぽさん、にゃんぽさんがトレーニングに参加しますよ。みなさんも一緒に考えてみてくださいね。
(写真はKYT用に状況を設定して撮影したものです。)
さぁ、3人でKYTにチャレンジしてみよう。今回はぼく、さんぽが進行役をつとめるよ。さっそく、この写真から予測される、事故につながる可能性がある危険をあげてみよう。
一見普通の接地極付コンセント用電源ケーブルのようだけれど、何か危険なところがあるのかな。
右から2番目のコンセントに挿してあるものはなんだろう。
アース線付きのプラグ変換アダプタだね。2極のプラグを3極に変換するための器具で、緑色のコードがアース線だよ。でも、いまこれをコンセントに挿しておく必要があるだろうか?そもそもこの電源ケーブルは接地極付(3極用)だから、このアダプタは必要ないよね。それに、今のところ何にも使用していなさそうだ。
確かにそうだね。これは抜いておいた方がいいのではないかな。変換アダプタのコンセント部分にほこりが入りそうだし。左の白いものは電池の充電器みたいだけれど、これも今は充電に使用していないから、抜いておいた方がいいよね。
そうだね。充電器の電極の部品の隙間などにほこりが入りそうだ。実際に充電する際に、そのほこりが原因で事故が起きる可能性があるかもしれないよ。
でも、それを言ったら、他のどの未使用のコンセントにもほこりが入りそうだね。それにアダプタも充電器も抜いてしまうならば、この電源ケーブルは何にも使っていないということになるよ。
確かにそうだ。
それならば、電源ケーブル自体を抜いて保管しておいた方が良いのではないかな。
それが一番安全だね。もし、すぐに使う予定がありこのままにしておくのだとすれば、未使用のコンセントを保護するコンセントキャップを装着しておくといいね。
なるほど、そのような便利なグッズがあるんだね。
コンセントキャップの例
プロセス2:危険のポイントを把握する
では、この写真からわかった重要な危険のポイントはどこか、まとめてみよう。
使用していないアダプタや充電器を電源ケーブルに挿したままにしておくこと。アダプタのコンセントや、充電器の電極の部品の隙間にほこりが入ったり、異物が付着するなどすれば、使用時に短絡や火災の原因になる。
未使用の電源ケーブルを、コンセントキャップを装着せずに電源につないだままにしておくこと。ほこりが入ったコンセントにプラグを挿すと、わんぽさんの意見と同様、短絡や火災の原因になる。
プロセス3:どうしたらよいか?
では、プロセス2であげた危険のポイントについて、どのような対策をとったら解決できるか、危険を避けられるか、まとめてみよう。
使用していないアダプタや充電器は、ほこりなどが入る可能性を排除するために、電源ケーブルから抜いて保管しておく。
電源ケーブルの未使用コンセントにほこりなどが入る可能性を排除するために、さんぽさんが教えてくれたコンセントキャップを使用するか、電源ケーブル自体を電源から抜いて保管しておく。
プロセス4:危険を避けるために実施することの確認
では、わんぽさんとにゃんぽさんがあげてくれた改善策をまとめてみよう。
➀使用していないアダプタや充電器は電源ケーブルから抜いておく。
➁使用していない電源ケーブルは電源から抜いて保管しておく。
➂電源ケーブルの使用していないコンセントには、コンセントキャップを装着してほこり等の侵入を防ぐ。
今回、ぼくたちのKYTにより確認できた、写真の状況への改善策は、以上の3点ということでよいかな?
はい!良いと思います!
答えはこれだけではない
さんぽさんたちは写真から以上の結論を導き出したようです。しかし、これはあくまでも彼らの視点で発見した危険の可能性です。読者のみなさんは他にも危険の可能性を発見されたかもしれません。
たとえば、別の視点から見てみると、
- 写真の電源ケーブルは抜止タイプで、アダプタやプラグを挿して右に回転すると固定される仕組みだが、黒いアダプタは固定されていない状態で挿してある。この状態で電源プラグを差して使用すると、プラグが緩む可能性がある。
→機器使用中にプラグが抜ける可能性
→→使用時には必ず固定する
- 電源ケーブルの接地極を接地端子と勘違いし、アダプタのアース線を誤って接地極に挿す可能性がある。
→漏電が起きる可能性
→→誤認が起きないよう、表示をしたり、キャップをしておく
もちろん、先ほどの写真でのKYTの答えは、今回のこのコーナーであげた事象に限りません。「これは危険につながるのではないか」と気づいたことがあれば、それがまたKYTのスタートとなり、別の答えが導き出されるのです。
まとめ
「KYTのすすめ」第1回目いかがでしたでしょうか。
「危険予知」という、少し固い感じの言葉の響きではありますが、実際にKYTを行ってみると、意外とチャレンジしやすいということがわかっていただけたでしょうか。
次回は別のケースを想定したKYTを行ってみたいと思いますので、みなさんぜひまた一緒にチャレンジしてみてください。
【参考情報】
厚生労働省
職場のあんぜんサイト 危険予知訓練(KYT)
さんぽニュース編集員 伊藤貴子
