家庭での火災原因〜暖房器具〜【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2022年02月03日 10時00分

今日は節分ですね。明日は二十四節気の立春で、暦の上では春ということになりますが、実際には寒い日がまだまだ続きます。四季がある日本に暮らす私たちは、晩秋から冬、そして春先までの寒い季節を快適に過ごすため、こたつ、ホットカーペット、エアコン、ファンヒータ、ストーブなど、様々な暖房器具を使用して暖を取ります。また、最近、薪ストーブを使用するご家庭も増えているようです。反面、かつて主流であった火鉢や囲炉裏といったものはだんだん少なくなっていると思われます。こうして思いつく暖房方法をあげてみただけでも、当然のことながら火気を使用するものは少なくありません。火気を使用する暖房器具を使うシーンが多くなる冬季は、空気が乾燥しており、もし暖房に使用している火気が身の回りの可燃物に着火すれば、火災が発生する可能性があります。今年の冬も例外ではなく多くの火災が発生しており、毎日のようにそのニュースを耳にします。それだけ毎日多くの方が火災で負傷したり、ひどい場合には命を失ったりしているのです。また、命が助かったとしても、家や財産を失ってしまう方が多くいるということでもあるのです。今回のRISCAD CloseUPは、「家庭での火災原因〜暖房器具〜」と題し、火災を起こさない、火災に遭わないために、家庭の中で私たちが気をつけたいことを考えてみたいと思います。

暖房器具の使用が増える冬

みなさんはどのような暖房器具を使用されていますか?

我が家は石油ファンヒータとエアコンを併用しています。石油ファンヒータについては、燃料である灯油を燃焼させ熱源とする火気を使用した暖房方法なので、その扱いには気をつけていますが、万が一消し忘れてもタイマーで自動的に運転を停止する機能や、地震の振動を察知した際に自動で運転を停止する機能などがついているので、さほど神経質になることなく使用しています。

ただし、灯油を購入して運ぶのが大変であること、この冬のように灯油価格が高騰していると燃料コストがかかることなどがネックになります。例年だと、エアコンは夏にしか使用しないのですが、この冬は、石油ファンヒータで部屋を暖めてからエアコンに切替えるようにして、灯油の消費を抑えています。

冒頭でも触れたように、今はさまざまな暖房器具があります。寒い冬を快適に過ごすための暖房器具ですが、関連する火災は多く発生しています。

暖房器具が関連する火災

ここからは暖房器具が関連して起きることが想定される火災とその予防策を考えてみましょう。

  • ストーブをつけて、その上や周辺に洗濯物を吊るして干していたところ、洗濯物がストーブの上に落下して着火し、火災に至った。
    ストーブ付近に洗濯物を干さない。
    干したときには水分を含んでいる洗濯物が、乾くと水分が蒸発して軽くなり、落下しやすくなる

  • ストーブをつけたまま就寝してしまい、寝返りを打った際に布団がストーブと接触し、火災に至った。
    布団に入る前に必ずストーブを消す。
    就寝時は火災の発生に気付きにくく、大きな火災につながる可能性がある。

  • ストーブを使用しながらロボット掃除機を稼働させて清掃をしていたところ、ロボット掃除機がストーブを倒して付近の可燃物に着火し、火災に至った。
    ロボット掃除機を稼働させるときには、ストーブを消す。一時的に部屋を出る際なども同様。
    ロボット掃除機によって、ストーブが想定外の移動をする(押されて倒れる、可燃物の近くに移動するなど)ことがあることを念頭に置く。

  • 薪ストーブを使用して消さずに部屋を出たところ、閉まっていなかった薪ストーブの扉から火の粉が飛散して付近にあった可燃物に着火し、火災に至った。
    薪ストーブは安全であると思われがちだが、直火を使用した暖房方法であることを忘れない。適宜消火するなど、扱いには十分注意する。

  • ストーブを消火せずに給油をしたところ、灯油がこぼれて着火し、火災に至った。
    灯油は危険物第四類に属する引火性液体である。
    ストーブを消火せずに給油できる機種は限られているとは思うが、危険物を燃料に使用していることをしっかりと認識し、正しく給油を行う。

  • ガスを燃料とした暖房器具を使用していたところ、ソケットとプラグの接続に緩みがあり、ガスが漏洩して着火し、火災に至った。
    場合によってはガス爆発からの火災という大きな事故につながる可能性がある。
    シーズンの使用開始前には必ず器具類の点検を行う。

 

電気ストーブと石油ストーブ、どちらが危険?

前項のように、暖房器具が関連することで起きる可能性がある火災は多く想定できます。一口に暖房器具と言っても、灯油を使用するもの、電気を使用するもの、ガスを使用するものなど、種類は様々です。

ここで、総務省消防庁「令和3年版消防白書」を参考に見てみたいと思います。
 

(令和3年版消防白書資料)住宅火災の発生源別死者数(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成
(総務省消防庁「令和3年版消防白書」より引用、第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。))
ストーブを発生源とした住宅火災での死者は84名、全体の9.3%で、そのうち電気ストーブを発生源とした住宅火災での死者は36名、石油ストーブは37名、ガスストーブは4名となっています。

この資料を見て、個人的に意外に思ったことがありました。電気ストーブと石油ストーブを発生源とした火災の死者数がほぼ同数であるということです。私は灯油を燃料とした石油ストーブを発生源とした火災の方が多く発生していて、被害が多いのではないかと予想していたのです。

この年がたまたまそのような傾向であったのではないかと思い、前年の「令和2年版消防白書」の同資料を見てみました。
 

(令和2年版消防白書資料)住宅火災の発生源別死者数(放火自殺者等を除く。)

(備考)「火災報告」により作成
(総務省消防庁「令和2年版消防白書」より引用、第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。))
この資料によれば、ストーブを発生源とした住宅火災での死者は94名、全体の10.5%で、そのうち電気ストーブを発生源とした住宅火災での死者は45名、石油ストーブは42名、ガスストーブは1名でした。

こう見ると、消防白書を参照したこの2年については、電気ストーブと石油ストーブを発生源とした火災の発生数に大きな差異はないようです。とはいえ、この資料が示しているのは、死者が出た火災ということなので、電気ストーブと石油ストーブを発生源とした火災全体の件数が同様の傾向にあるかは不明です。

 

暖房器具の危険度認識の傾向

他に何か関連する資料がないか探したところ、少し興味深いものを見つけました。東京都生活文化局が都民に対し、ストーブの使用実態や認識等について調査などを実施した結果として、「平成25年度調査報告書 ストーブの安全な使用に関する調査報告書」が公表されていました。
 

暖房器具の危険度認識

(東京都生活文化局「平成25年度調査報告書 ストーブの安全な使用に関する調査報告書」より引用、図1.17 暖房器具の危険度認識)
この資料を見ると、石油ストーブが最も危険であると認識される傾向にあることがわかります。一方、電気ストーブについては、危険度はさほど高くないと認識されているようです。灯油を燃料とした石油ストーブを発生源とした火災の方が多く発生しているのではないかと予想した私の認識も、この調査結果と同じ傾向にあるということがいえそうです。

しかし、消防白書によれば、電気ストーブと石油ストーブを発生源とする死者が発生した住宅火災の発生数に大きな差はなく、その危険度には大きな差はないと考えることができるので、私たちの多くが感じている電気ストーブと石油ストーブの危険度と、実際の危険度には乖離があることがわかります。

電気ストーブも石油ストーブもそれぞれ同様に火災の危険があるということで、火災を起こさない、火災に遭わないよう、扱いには十分注意しましょう。

 

実は春が一番火災の多い季節

冒頭で、冬場は火災が多く発生する時期であると述べましたが、実際にそうなのでしょうか。ここでまた総務省消防庁「令和3年版消防白書」を参考に見てみたいと思います。
 

四季別出火状況

(総務省消防庁「令和3年版消防白書」より引用、資料1-1-12 四季別出火情報)
この資料によれば、確かに冬季に火災は多く発生しているものの、実は冬季よりもむしろ春季に多くの火災が発生しているということがわかります。春季は乾燥に加え、強風が吹く気象条件が発生しがちであることにその理由があるようです。

冬のみならず、立春を迎え春の足音が聞こえ始めるこれからの季節も、より一層火災に注意する必要があります。今回は寒い時期に使用する暖房器具と火災のことを中心に話を進めてきましたが、春先はまだまだ暖房器具を使用する気温が続きますから、同様に注意が必要です。

 

【参考情報】

【参考記事】

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子