冬に発生しやすい家庭内の事故ー年末年始に向けて再確認ー【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2021年12月02日 10時00分

12月に入り、2021年も残すところあと1ヶ月です。年末年始、みなさんはどのように過ごされる予定でしょうか。ここのところ国内での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況は落ち着きをみせており、ほっとしていたところですが、先週から話題になり始めた、オミクロン株の台頭が気になるところです。年末年始、みなさんはどう過ごされる予定でしょうか。昨年に引き続き、自宅で過ごされる方も多いことと思いますが、家庭内でも予期せぬ事故が起きる可能性はあります。今回は冬の家庭内での事故についてのお話です。みなさん、どれかひとつくらいは心当たりのある内容が含まれているかもしれません。年末年始に向けて、「冬に発生しやすい家庭内の事故」と題し、特に冬に注意すべき家庭内での事故についてお送りします。

火災

近年は暖冬傾向ではありますが、やはり12月ともなれば、地域差はあれ、寒さを感じます。そこで私たちはエアコン、ファンヒータ、ストーブ、床暖房、ホットカーペット、こたつなど、様々な暖房器具を使用して暖をとります。ガスや電気を使用した暖房器具が多くなってきてはいますが、灯油燃料などを用いた暖房器具の使用も少なくないかと思います。

言わずもがな、暖房器具を使用する季節に特に気をつけたいのが火災です。

冬は寒いことに加え、空気の乾燥が激しい季節です。ご存知のように、空気の乾燥とは、空気中の水分量が少ないことを意味しますが、空気が乾燥すれば、可燃物の水分量も減少します。そのため、可燃物に着火した場合、湿度が高い季節よりもものが燃えやすくなります。

乾燥下での火気の使用という、火災の発生、そしてその規模の拡大や延焼の危険性が高まる条件が揃う冬。火災が起きないよう、暖房器具のみならず、火気の取扱いには十分注意しましょう。

着衣着火

火災の次も同じく火気に関連した事故です。

「着衣着火」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。文字通り、着ている衣服に火が着くことです。寒い季節、私たちは長袖の洋服を着ます。特に冬にはセーターなどを着る機会が多くなりますが、その素材には、アクリルなどの燃えやすい化学繊維が使用されていることがあります。

家庭内での着衣着火は、燃えやすい素材の衣服の袖口になどに、例えば、ガスコンロやカセットコンロの火などの調理の火気で着火することで起きることが多い傾向にあります。他に冬に家庭内で使用する火気として考えられるものとしては、先にあげた暖房器具があります。また、こちらは冬に限りませんが、アロマキャンドルや仏壇のろうそくなども家庭内で使用する火気としてあげられます。

身体に身につけている衣服に着火する着衣着火は、被災者がやけどを負うケースが多く見受けられます。また、衣服の素材や加工によっては、あっという間に広い面積に燃え広がる表面フラッシュという現象が起きることがあり、その場合には、被災者が重度のやけどを負ったり、死亡したりするケースがあります。

火気を取扱う際には、着衣着火にも十分に注意する必要があります。

一酸化炭素中毒

冬の一酸化炭素中毒については、過去のRISCAD CloseUPで取上げたことがあります。(私たちの身近な場所での一酸化炭素中毒冬に多発する一酸化炭素中毒

それらの記事では、ガス器具や炭火の使用中の一酸化炭素中毒、軽油やガソリンを燃料とする機器を換気の悪い室内で使用したことにより起きた一酸化炭素中毒などについて触れましたが、今回は家庭内での一酸化炭素中毒についてということで、冬に美味しい鍋料理を例にしたいと思います。

室内でカセットコンロを使用して鍋料理をするとします。そこが閉切られた換気の良くない部屋であった場合、その状態でカセットコンロを長時間使用すると、換気不十分により酸素が供給されず、不完全燃焼が起きます。その結果、室内に一酸化炭素が滞留し、それを吸込むことにより中毒が起きることがあります。

「サイレント・キラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれる一酸化炭素は、無色・無臭で、知らず知らずのうちに私たちの身体に影響を及ぼします。一酸化炭素中毒の身体症状としては、頭痛、吐き気、めまい、意識障害などがありますが、それらの症状がゆっくり進行するため、体調変化に気づくのが遅れ、自覚なく長時間一酸化炭素を吸い続けたことで突然意識を失うなど、重篤な症状に陥ったり、死亡したりするケースがあります。

もっとも、ここ2年ほどで、新型コロナウイルス感染症予防のため、密を避けよ、こまめに換気をせよというのが新常識となったので、それらを守っていれば一酸化炭素中毒は回避することができそうですが、家庭内で起きる可能性がある事故で、気に留めておきたいもののひとつです。
 

消毒用エタノール

最後は、消毒用エタノールに関連した事故についてです。こちらもまた火気が関連する内容ではありますが、消毒用エタノールは新型コロナウイルス感染症の流行を機に私たちの身近な存在になったものなので、別項目といたします。

消毒用エタノールについては、一酸化炭素中毒に同じく、過去のRISCAD CloseUPで取上げたことがあります。(エタノールの特性と分類−消毒用エタノールは引火性液体−消毒用エチルアルコールを取り扱う時に注意すべきこと

最初の記事のタイトルからもわかるように、エタノールを60vol.%以上含有する消毒用エタノールは、消防法上の危険物第4類 引火性液体のアルコール類です。そしてその特性として、気化しやすいこと、気化すると可燃性の混合気を形成することがあります。

アルコール類を多量に噴霧した場合などに、周囲に何かの着火源があれば、気化して可燃性の混合気を形成したアルコール類に着火して火災が起きる可能性があります。

引き続き新型コロナウイルス感染症の予防に努めながら過ごす冬になるかと思いますので、消毒用エタノールを使用する機会は多いと思います。先にも述べたように、冬は火気を使用する暖房器具を使用して暖をとることや、カセットコンロを使用して鍋を調理することなど、室内で火気を使用する可能性が高くなりますので、その取り扱い場所には十分注意したいものです。

まとめ

冬に発生しやすい家庭内での事故、いかがでしたでしょうか。もちろん、家庭内に潜む危険はこれだけにとどまりませんが、よく耳にする事故を例に、今回はその注意喚起の意味を込めた内容とさせていただきました。

2021年もあと約1ヶ月。引き続き気を抜かずに過ごし、安心できる年末年始を迎えましょう。

 

【参考記事】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子