夏休み特別企画〜アウトドアでのレジャーと事故〜【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2022年08月04日 10時00分

8月に入りました。世の中の子供たちは夏休み真只中かと思います。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患者数が7月後半から急増して第7波を迎え、国内の1日当たりの罹患者数が過去最多を更新する日が出る中での夏休みとなっています。とはいえ、密を避けるなどの感染対策はもちろん続けつつ、夏休み中に何かしらのレジャーを計画している方が少なからずいるのではないかと思います。今回は夏休み特別企画として、「アウトドアでのレジャーと事故」についてClose Upです。新型コロナウイルス感染症の流行以降愛好者が増えていると思われるアウトドアで行うレジャーについて、どのような事故が起きているのか、どうすればその事故を防ぐことができるのか考えていきます。

コロナ禍でのレジャー

8月に入りました。子供たちの夏休みはちょうど15日ほどが過ぎたところでしょうか。とはいえまだ25日以上休みは続きますね。なんとも羨ましい限りです。

さて、大人たちの夏休みはというと、来週8月11日の山の日あたりから翌週にかけてという方が多いのではないかと思います。子どもたちほど長い夏休みとはいきませんが、まとまったお休みということで、何かレジャーをと考えている方もいるのではないでしょうか。

コロナ禍におけるレジャーということで、ここ数年は、屋外で密を避けて行うことができる、いわゆるアウトドアが流行しているようです。中でも、もともとアウトドアのレジャーとして人気があったキャンプをする人口が増えたと聞きますが、そのキャンプの形態も、ひとりでする「ソロキャンプ」や、家の庭やベランダなどでキャンプの気分を味わう「おうちキャンプ」または「家キャン」など様々なものがあり、それぞれ人気のようです。

 

キャンプ中のテント内での事故

その、コロナ禍が後押しして人気が高まっているキャンプですが、過去にキャンプ中にテント内で実際に起きた事故の概要を見てみましょう。

・テント内でバーベキュー中にカセットこんろ用ガスボンベが破裂して爆発
キャンプ場のテント内で炭火を使用したバーベキュー中に、そばにあったカセットこんろ用ガスボンベ1本が破裂し、ガス爆発が起きた。テント内にいた5名が顔や手足にやけどで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、ガスボンベ1本が炭火で加熱され、内圧が上昇して破裂した可能性がある。

・テント内で一酸化炭素中毒
キャンプ場のテント内で一酸化炭素中毒が起きた。テントに宿泊していた家族5名のうち、外出していた1名がテントに戻ったところ他の4名が体調不良となっており、消防に通報した。4名は病院に搬送され、うち2名は一時重症となり、2名は軽症であった。警察と消防の調べでは、消防通報時刻頃の気温は約16℃で、暖をとるためにテント内で炭を燃やし、換気不足により不完全燃焼となり、一酸化炭素中毒が起きた可能性がある。

いずれも、テント内で火気を使用していたのが原因の事故です。真夏のキャンプではなかなかないことのように思われますが、地域や場所によっては真夏でも夜や早朝などは気温が低くなるため、このような事故が起きる場合もあります。

また、テントは可燃性の素材でできています。燃えにくくする加工をした素材で作られているとは思いますが、何れにしてもテント内での火気の使用は要注意です。

 

バーベキューでの事故
-カセットこんろは正しく使いましょう

また、アウトドアというと、バーベキューが思い浮かびます。屋外での調理や飲食は、家や店などの屋内とはまた違った開放感があり人気です。前項で触れたキャンプとバーベキューは、セットで行われることも多いかもしれません。

バーベキューをする際には、炭をおこして行う、アウトドア用ガスこんろを使用して行うなど様々なケースがあるかと思います。ちなみに、前項の1つ目の事例は、カセットこんろを使用した調理中の事故でしたが、ここでは同じくカセットこんろを使用しての調理の際に起きた事故を見てみます。

・高校の文化祭でカセットこんろを使用した調理中にガスボンベが破裂
高校の文化祭で、校庭の中庭でカセットこんろを使用した調理中にカセットこんろ用ガスボンベの破裂が起きた。こんろの火が消えたため、生徒がガスボンベを取外したところ、ガスボンベが破裂した。生徒1名が手に負傷した。消防の調べでは、カセットこんろの五徳を裏返した状態でフライパンを使用して焼きそばの調理をしていたため、カセットこんろ用ガスボンベが加熱されて内圧が上昇し破裂した可能性がある。また、カセットこんろは収納箱に五徳を裏返して収納されており、箱から取出してそのまま使用していた可能性がある。


・高校の文化祭でカセットこんろを使用した調理中にガスボンベが破裂
高校の文化祭で、校舎のそばの駐輪場に設けた模擬店でカセットこんろを使用した調理中にカセットこんろ用ガスボンベの破裂が起きた。生徒ら15名が喉や顔にやけどを負い、2名が重傷、4名が中等症、9名が軽傷を負った。消防の調べでは、同模擬店ではカセットこんろ4台と鉄板2枚が使用されており、ガスこんろを2台並べて1枚の鉄板を乗せて焼きそばの調理をしており、カセットこんろ用ガスボンベが加熱されて内圧が上昇し破裂した可能性がある。

いずれも高校の文化祭での事故ですが、調理に慣れた人も慣れていない人も関係なく、友人知人が集まってカセットこんろを使用して調理を行うという意味では、バーベキューと類似の例として捉えることができると思います。

事故事例を見てみると、いずれもカセットこんろの誤った使用によるガスボンベの破裂です。

「カセットこんろ・カセットボンベの安全な使い方」について、一般社団法人日本ガス石油機器工業会のサイトで詳しく紹介されていますので参考にしてみてください。

 

バーベキューでの事故
最近よく耳にするガストーチバーナの事故

ガストーチバーナとは、カセットこんろ用ガスボンベやライター用ガスなどを燃料として使用することができる簡易ガスバーナです。手軽で持運びが容易なことから、アウトドアでもバーベキューの火おこしやあぶり料理などに使用されます。

近頃このガストーチバーナの事故をよく耳にします。その原因のひとつに、廉価で低品質のものの流通があるようです。例えば、年に1、2回のバーベキューの時に使用するだけだから安いものでいいやと、値段だけで選択し、低品質で安全性が十分でない製品を購入してしまうと、運が悪ければそのガストーチバーナの不具合などが事故の原因となってしまうことがあります。また、ネット通販などで購入した海外からの輸入品などでは、万が一の不具合や事故が起きた場合、製造者、販売者の連絡先が不明であるといった事例もあるようです。

廉価であることは魅力ですが、ガストーチバーナは火気を使用する道具、かつ、私たちが手に持って使用する道具です。万が一の事故があれば、自分や周囲の人がやけどなどで大けがをする可能性があります。そのような目に遭わないためにも、できるだけ信用できる製品を、説明書をよく読んで正しく使いましょう。

なお、「トーチバーナーの安全な使い方」についても、一般社団法人日本ガス石油機器工業会のサイトで詳しく紹介されていますので参考にしてみてください。

 

日焼け止めスプレー使用後にまさかの着火でやけど

さて、話は変わります。いや、紫外線を防ぎながらアウトドアを楽しむ、蚊や虻などに刺されないようにアウトドアを楽しむと考えたら、これまでにお話ししたキャンプやバーベキューの場でも、これから紹介するような事故が起きる可能性はあると言えます。いずれも「火気」がキーワードとして関連しているので、全く話が変わるというわけではないかもしれません。

過去、小麦色に日焼けした肌がもてはやされた時代がありましたが、今は老若男女を問わず、皮膚を紫外線から守るために日焼け止めを使用する方が増えているようです。日焼け止めにはいろいろなタイプがあり、その形状は肌に塗るクリームやジェルであったり、肌に噴射して使用するスプレー式であったりとさまざまです。

海外の事例として、スプレー式の日焼け止めにより、以下のような事故が起きたことがあるそうです。日焼け止めで事故…お肌のトラブルくらいしか思い浮かばないのですが、どのような事故が起きたのでしょうか。

・日焼け止めスプレー使用後にグリルの火で着火
スプレー式の日焼け止めを使用後に近寄ったグリルの火でスプレーに含有されていた可燃性物質の噴射剤に着火した。日焼け止めを使用した1名がやけどを負った。使用した日焼け止めスプレーのノズルに何かの問題があり、日焼け止めが皮膚に過剰に噴射され、同時にスプレーの噴射剤として使用されていた可燃性物質が過剰に噴射された可能性がある。成分が十分に乾く前に火気に近づいたことで、噴射剤の可燃性物質に着火した可能性がある。

事故概要中にある通り、このケースでは容器の不具合により、内容物、噴射剤ともに過剰に噴射されてしまい、可燃性物質を含む噴射剤が乾かないうちに火気に近づいてしまったのが原因とのことです。問題のない製品を安全な環境下で通常使用するのであれば、このような事故は起きなかったはずなので、とても不幸な事故と言えます。

夏に人体に使用することが多いと思われるスプレー缶入りの製品というと、日焼け止めスプレーの他に、制汗剤や冷却スプレー、虫除けスプレーなどが思い浮かびます。スプレー缶入りの製品の中には、噴射剤に可燃性物質を使用しているものがありますので、使用前に容器などの表示を確認して「火気厳禁」「火気と高温に注意」などの表示があれば、付近に火気がないかなど確認してから使用しましょう。

もちろん、前項でお話しした、バーベキューなど屋外での火気使用の場においても同様の注意が必要です。

 

アウトドアのゲームでの演出で火災が発生

最後に、アウトドアでの珍しい事故事例を紹介いたします。今年5月にアウトドアのゲームの演出が原因で起きた山林の火災です。

・サバイバルゲームの演出に使用した発煙筒から火災
山林でサバイバルゲームの演出に使用した発煙筒から火災が起きた。ゲームの参加者が消防に通報した。消防車や防災ヘリコプタが約3時間後に消火したが、同山林約900平方mが焼けた。ゲームの参加者1名が顔や腕にやけどで病院に搬送された。警察と消防の調べでは、当時20名ほどのグループが敵味方に分かれてエアガンを撃ち合うサバイバルゲームを行っていたが、その際に使用していた演出用の発煙筒が倒れ、周囲に延焼した可能性がある。

「サバイバルゲーム」、私には馴染みのないアウトドアレジャーなのですが、愛好家がいるようです。発煙筒を使用した演出ということなので、煙がもうもうと立ち上がる状態を再現していたのでしょうか?

発煙筒は、火薬を使用した火工品で(火薬を含まない非火薬製品もあります)、大量の煙を吹上げるため、撮影やイベントの演出、消防・防災訓練の際の煙の演出などとして用いられることがあります。本来、発煙筒は筒を地面に立てて使用するものですが、この事故では筒が倒れてしまったため、その火気で山林に延焼したものと思われます。

サバイバルゲームを行っていた山林での火気使用が許可されていたかどうかは不明ですが、可燃物(ここでは山林の草木など)のそばでの火気の取扱いには十分気をつける必要があります。

 

まとめ

夏休み特別企画「アウトドアでのレジャーと事故」いかがでしたでしょうか。紹介した事例では、「火気」がキーワードとして関連している事故が多くなりました。

みなさんがこれからレジャーを行おうとしている場所についても、「火気厳禁」、「火気使用禁止」、「バーベキュー禁止」、「焚火禁止」、「花火禁止」など、火災を防ぐために、火気の使用を禁止する掲示がしてあるところがあるかもしれません。

レジャーとはいえ、決まりを守って、けがなく安全にアウトドアを楽しみ、楽しい夏休みにしましょう。

そうそう、酷暑ですから、アウトドアを楽しむ際にはもちろん熱中症対策も忘れずに!

 

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さんぽニュース編集員 伊藤貴子