投稿日:2024年6月6日 10時00分
6月に入りました。今のところは晴れの天気が続いていますが、例年通りであれば梅雨入りもそう遠くないと思われます。そんな雨の季節が終われば、また暑い夏がやってきます。今回の「RISCAD CloseUP」では、本格的な夏を前に再確認しておきたい内容をお送りします。それは、モバイルバッテリの自動車内放置の危険性についてです。過去のこのコーナーでも触れたことがありますが、最近起きた事例とともにもう一度確認してみましょう。それでは、RISCAD CloseUP「モバイルバッテリの車内放置に注意」スタートです。
暑かったゴールデンウィークに起きた2件の事故
今年のゴールデンウィーク、地域によっては真夏日となったところもありました。そんな中、以下のような事故のニュースを耳にした方もいらっしゃったのではないでしょうか。
2024/5/4 長野・自動車内に置かれたモバイルバッテリの火災
パチンコ店の駐車場に駐車中の自動車内でモバイルバッテリの火災が起きた。同店の店員が消防に通報した。消防が消火したが、同車両の一部が焼けた。同車両の持主は車両を離れており、けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同モバイルバッテリが車内のダッシュボードに1-2時間放置されていたことで、日光でモバイルバッテリが加熱されて出火した可能性がある。
2024/5/5 長野・自動車内に置かれたモバイルバッテリの火災
コイン式駐車場に駐車中の自動車内でモバイルバッテリの火災が起きた。同駐車場の利用者が消防に通報した。消防が消火したが、同車両の一部が焼けた。同車両の持主は車両を離れており、けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同車両内に置かれていたリチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリから出火した可能性がある。
いずれの事故も長野県で起きたものですが、5/4の事故は佐久市で15時頃に、5/5の事故は長野市で10時頃に起きたものです。
各地域の、事故があった時刻頃の天候と気温を気象庁のサイトで確認してみました。
佐久市の事故は、夏日となった日のちょうど気温が一番高くなる頃の事故で、長野市の事故は、日中が真夏日となる日の、気温が上がり始める頃の事故です。いずれも晴れの日ですから、車内に日光が差し込んでいた可能性や、車体に日光が当たって車内がとても暑くなっていた可能性があります。
暑い日の車内温度は何℃くらいになる?
外気温については上記の通りですが、では、モバイルバッテリが置かれていた車内の温度は何℃くらいであったのでしょうか。
といってもこの事故に関するそのような情報はないので、ここではJAF(日本自動車連盟)のサイトを参考にしてみましょう。
春の車内温度(JAFユーザーテスト)のページでは、外気温23.3℃の日の車内について、以下のような情報が紹介されています。
(1)ダッシュボード付近 …… 70.8 ℃(時間:11時50分頃)
(2)車内温度(運転席の顔付近) …… 48.7℃(時間:14時10分頃)
(3)測定日の外気温 …… 23.3 ℃(時間:13時40分頃)
(4)フロントガラス付近 …… 57.7℃(時間:11時50分頃)
(JAF(日本自動車連盟)、春の車内温度(JAFユーザーテスト)、「各部測定箇所別/ピーク時の温度と時間」より引用)
条件としては、日中の最高気温が23.3℃ということで、長野県の2件の事故の際の気温と比較すると低いのですが、23.3℃の外気温を記録する13:40の約2時間前である11:50の時点で、車内のダッシュボード付近は70℃を超えたという結果が出ています。
また、別の記事(真夏の車内温度(JAFユーザーテスト))では、気温が35℃での車内温度について、サンシェード装着や窓開けなどの対策をした場合の車内温度が比較して示されています。詳細についてはここでは省きますが、ダッシュボードの温度は、条件によっては80℃近くまで上昇したとのことです。
モバイルバッテリは高温にさらされるとどうなる?
エレコム株式会社 「モバイルバッテリー選びの役立つ基礎知識」 モバイルバッテリーの正しい使い方は?充電方法や注意点を解説の中で「温度の高い場所に置かない」という項目がありますが、この中に「モバイルバッテリーなどに使われているリチウムイオン電池の最高許容周囲温度は45℃程度です。」とあります。
先ほどのJAF(日本自動車連盟)の情報では、日中の最高気温が23.3℃の日でも、車内温度(運転席の顔付近)は50℃近くなるとのことでした。そしてダッシュボードは70℃を超えてしまう可能性もあるーそのような車内に、最高許容周囲温度が45℃程度であるモバイルバッテリを放置すると、どのような現象が起きるのでしょうか。
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)のサイトの製品安全のページを参照してみましょう。
モバイルバッテリー「6.高温下に放置して発火」
ここでは、高温下に放置したモバイルバッテリが発火するという再現実験の映像を見ることができます。
最初に紹介した2件の事故のうち、佐久市の事故ではモバイルバッテリはダッシュボードに置かれていたとのことです。長野市の事故ではモバイルバッテリが車内のどこに置かれていたかまでは分かりませんが、いずれの事故も、車内で高温にさらされたモバイルバッテリから出火した事故である可能性が高いとみられます。
これからの季節、モバイルバッテリの車内放置はしないように気をつけましょう。
まとめ
【参考情報】(本文登場順)
・気象庁
・JAF(日本自動車連盟)
春の車内温度(JAFユーザーテスト)
真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)
・エレコム株式会社
「モバイルバッテリー選びの役立つ基礎知識」
モバイルバッテリーの正しい使い方は?充電方法や注意点を解説
・NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)
製品安全
モバイルバッテリー「6.高温下に放置して発火」
【参考記事】
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置いていませんか、こんなモノ−真夏の車内は危険な温度−【注目の化学災害ニュース】2019年8月のニュースから RISCAD CloseUP
さんぽニュース編集員 伊藤貴子