リチウムイオン二次電池の廃棄に関する事故【注目の化学災害ニュース】2019年10月のニュースから RISCAD CloseUP

投稿日:2019年11月07日 10時00分

過去のニュースから、さんぽチームで活発に議論がされた内容をご紹介いたします。
今回は10月第4週のRISCAD Updateの文末でふれたリチウム一次電池とリチウムイオン二次電池ついての記事を振り返りつつ、先月ニュースで話題になった、リチウムイオン二次電池の廃棄に関する事故にClose UPです。

リチウムイオン二次電池の恩恵

今年のノーベル化学賞は旭化成株式会社名誉フェローの吉野彰先生が、リチウムイオン二次電池の開発の功績を讃えられ、受賞されました。吉野先生は産総研関西センター内に所在する「技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター」(LIBTEC(リブテック))の理事長も務めていらっしゃいます。

ノートパソコン、スマートフォンなど、リチウムイオン二次電池が搭載されている機器は、私たちの身の回りに数多くあります。個人的には、「リチウムイオン二次電池」という呼称より、「リチウムイオン電池」の方が耳慣れしています。

二次電池には、自動車のバッテリに使用される鉛蓄電池をはじめ、ニッケル・水素蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池などがありますが、最近は小型で軽量、高電圧なリチウムイオン二次電池が私たちの生活に欠かせない存在となっていますね。ノートパソコン、スマートフォンなどが現在のように小型化・軽量化されたのも、このリチウムイオン二次電池のおかげであることはいうまでもありません。

「リチウム一次電池」と「リチウムイオン二次電池」

ここでは「リチウムイオン二次電池」と呼んでいますが、「リチウムイオン電池」や「リチウム電池」という呼称もよく聞きますよね。恥ずかしながら、リチウム電池というのはリチウムイオン電池の略称だろうと思っていたのですが、先日それが間違った認識であることに気づき、その両者の違いがやっと理解できました。

そうですね、その二つは全く違うものですね。まず、「リチウム一次電池」と「リチウムイオン二次電池」は違うものであることをしっかりと認識しておいた方がいいですね。

それは先日のRISCAD Updateの記事を書く際に、しっかり勉強しましたよ。一次電池とは使い切りの電池で、いわゆる市販の乾電池と同じ用途で使用されるもので、一方、二次電池とは、充電して繰り返し使用できる充電池、蓄電池のことですよね。

リチウム一次電池の代表的なものは、ボタン電池などと呼ばれている電池で、例えば腕時計などに使用されています。腕時計の電池が切れたら、私たちはリチウム一次電池を購入して交換します。

しかし、リチウムイオン二次電池は利用法によっては発火や爆発の恐れがあるので、一般的には安全機構を内蔵した状態、例えばバッテリーパックなどの状態で販売されており、私たちが電池単体として購入することはほとんどありません。

一次電池が使い捨て電池で、二次電池が充電池であることを理解すれば、両者が同じものではないかという、私のような無知な勘違いはなくなりますね。

リチウムイオン二次電池の廃棄 -充電池にも寿命は来る-

充電池であるとはいえ、繰り返し使用していたら寿命は来るので、いつかリチウムイオン二次電池を廃棄する時は来ます。最近、誤って廃棄されたリチウムイオン二次電池が原因となったごみ収集車の火災等の事故が多発しているというニュースを見ました。

誤って廃棄とのことですが、例えば私が暮らす市では、「乾電池は市庁舎等に設置してある回収箱へ入れる。ボタン電池、充電式電池は電器店へ」という指示があります。この場合はリチウム一次電池とリチウムイオン二次電池について、自治体としてごみ収集は行なっていないということかと思います。

リチウム一次電池については、過去に、家電量販店で盗難防止用タグから取り外された廃棄予定のボタン電池が原因となった火災が起きたことがあり、その際にRISCAD Updateで絶縁の必要性に触れたことがありました。

では、廃棄予定のリチウムイオン二次電池については何か注意すべきことはあるのでしょうか。

リチウムイオン二次電池は、破損・変形により、発熱・発火する危険性がありますので、強い衝撃を与えたりすることは避けなければなりません。

誤って廃棄されたリチウムイオン二次電池がごみ収集車内で火災の原因となるのは、何かしらの強い衝撃を与えられていると思われます。

ごみ収集車で回収されたごみは、車内で押しつぶされて圧縮されます。そしてごみ処理場まで運搬されると、今度は車内から押し出されます。もしリチウムイオン二次電池がごみに混入していた場合、いずれの工程においても、衝撃で破損・変形をする可能性があります。それにより、リチウムイオン二次電池の発火、破裂等が起きて火災につながる危険性があるのです。

これまでも、エアゾール缶が原因となるごみ収集車火災はよく聞かれましたが、車内でエアゾール缶が破損・変形して可燃性のものが漏れ出して着火するということなので、リチウムイオン二次電池による火災も、その原因は同じようなことですね。ごみ収集車内では、ごみ同士の摩擦や、車載のごみ破砕、圧縮のための金属板の摩擦など、点火源になるものは様々あります。また、分別されているはずのごみですが、火災の原因となるものが誤って混入している可能性も否めませんね。

まず、お住まいの自治体でのリチウムイオン二次電池の廃棄方法を確認しましょう。

モバイルバッテリなどの小型のリチウムイオン二次電池は、リサイクルするために家電量販店などでの回収を行っていますので、そちらも確認してみてください。

寿命が来てしまったリチウムイオン二次電池も、リサイクルして使用できるのであれば廃棄するよりも有意義ですね。

【編集後記】

リチウムイオン二次電池が搭載されているものと言われて思い浮かぶものは何がありますか?
まずは本文中にも出てきた、ノートパソコン、スマートフォン、モバイルバッテリなどはすぐに頭に浮かびます。少し調べてみると、他にはロボット掃除機、加熱式たばこや電動工具、デジタルカメラなどが該当するそうです。これらの共通点は、やはり充電して使用できるということでしょうか。お使いの電子機器が使用できなくなったときには、充電して使用していたかどうかでリチウムイオン二次電池搭載の有無を判断するのも手かもしれませんね。

さんぽニュース編集員 伊藤貴子