投稿日:2020年12月03日 10時00分
「自然災害への心構えと備え」と題し、過去の事例などから拾い上げた、知っておいて損はないと思われる自然災害対策の情報を紹介する企画の第3回目。今回は、水害時のLPガスボンベ流出への備えについてClose UPです。
水害の原因
自然災害の中でも、水害はその名の通り、水に起因する災害のことを示します。水害の原因は、豪雨をもたらす気象現象がほとんどで、台風はもちろん、近年よく耳にするようになった線状降水帯の出現、そして日本特有の梅雨・秋雨などの前線停滞などがあげられ、これらのうちの複数が重なって豪雨の要因となることもあります。また、海に関する水害の原因としては高潮などの潮位異常があげられますが、それは海水面が台風や低気圧、そしてそれらに伴う強風などの影響を受けることで発生するのだそうです。
ここ数年、梅雨から秋の半ばにかけて、水害が多発している印象があります。
水害による被害
水害というと、大雨による河川氾濫で洪水が起き、住宅が浸水するというような被害が想像されます。その結果、住宅の床下浸水、床上浸水による家具、家電等の生活用品の水没、そして住宅の敷地の浸水によるエアコンの室外機、駐車場に駐車中の自動車などの浸水、水没などが起きる可能性があります。
話は少しそれますが、それほどの災害規模になれば、インフラも被害を受けていると考えられます。例えば、停電、断水などが起きている可能性があります。
前回のこのコーナーの「自然災害への心構えと備え−自然災害と一酸化炭素中毒−」では、台風や地震による停電の際に起きた、誤った発電機使用による一酸化炭素中毒事故の事例をご紹介しました。台風や地震に限らず、豪雨などの影響で発生した水害という自然災害でも、停電が起きた場合には発電機を使用する可能性はありますから、先月の記事もぜひご一読いただきたいと思います。
敷地内にあれども、普段直接触ることがないもの
ここで唐突なサブタイトルをつけてみましたが、ここからが今回の本題である、LPガスボンベのお話です。ご自宅でLPガスを使用されている方にとって、LPガスボンベというのは「敷地内にあれども、普段直接触ることがないもの」ではないでしょうか。また、ガスが使えないと困るけれど、普段それほどその存在を意識しないものとも言えるかと思います。
このように普段はあまり気にせず生活していると思われるLPガスボンベですが、LPガス販売店が点検・交換などの維持管理をしており、ボンベが転倒したりしないよう、固定などの措置も行っています。
しかし、洪水などの水害が原因で、固定が緩んで移動してしまったり、流されてしまったりといったことが起きる可能性があります。実際に過去の水害で、事業者が所有する各種高圧ガスボンベのみならず、家庭で使用されていたLPガスボンベが流出した事故も起きています。
流されるかもしれないガスボンベに私たちができること
LPガスボンベの点検や維持管理については、法律によりLPガス販売店と消費者それぞれが行うべき箇所が決められています。具体的には、
LPガスボンベからガスメーターの出口まではガス販売会社が、ガスメーターの出口からガス器具までは私たち消費者が点検や維持管理をすることになっています。
しかし、いざ災害が起きた、または迫っているとなれば別です。お住いの地域の河川氾濫などの情報が入り、水害が発生する可能性があるという情報を得た時、私たちがガスボンベの安全のためにできることはあるのでしょうか。
高圧ガス保安協会のサイトに「台風・前線接近等に関する注意喚起」が記載されていますので、以下に引用させていただきます。
台風・前線接近等に関する注意喚
LPガス消費者の方へ
- LPガス容器は、チェーン等で容易に転倒しないように固定されているかご確認ください。
- 付近の設置物が、強風等で飛んでLPガス容器、バルブ、配管等に当たることがないよう、それらの物を屋内にしまうなどの対策をお願いします。
- ガスの漏えい、容器の流出等に備え、緊急時の連絡先(LPガス販売店)をご確認ください。
- 避難する場合は、事前にLPガス容器のバルブを閉めて避難してください。
- 避難所となる施設においてLPガスを使用される場合、事前にLPガス設備の動作確認や安全確認を行ってください。必要に応じて、LPガス販売店にご確認してください。
引用:高圧ガス保安協会
>「出版物・情報提供」>「注意喚起」>「台風・大雨に係る注意喚起」
このように、台風や洪水などの自然災害の発生または発生するおそれがあるときは、LPガスボンベが倒されたり流されたりしないか、しっかりと固定されているかを確かめ、避難前にはLPガスボンベのバルブを閉める必要があります。このような措置をしておくことで、万が一LPガスボンベが流されてしまったとしても、その先の事故のリスクを減らすことができるのです。
もちろん、可能であればということで、全ては人命最優先であることはいうまでもありません。
「知識」の重要性
私たちは、インターネットなどの普及により、かつてより多くの情報を簡単に手にすることができるようになりました。そのため、わからないことがあればいつでも調べられるという感覚になりがちです。しかし、災害発生などの緊急時は、電話回線に障害が起きたり、インターネットがつながらなかったりといった事態が起きることも想定されます。調べたくても調べる術がなくなる可能性があるのです。
そんな時に役立つのが、「知識」であると思うのです。私たちは、どこかで聞いたこと、読んだことがある情報を蓄積することができます。
この記事に限っていえば、お住いの地域によっては水害の心配がほとんどない場合もあるかと思いますし、そもそも流される心配があるLPガスを使用していないという方も多いかと思います。でも、非常時のLPガスボンベの取扱いについての「知識」を持つことで、他の災害が起きた時にも応用できる可能性があります。
災害はないにこしたことはありません。しかし、万が一のために非常用持出袋を用意してあるように、緊急時にすべきことを「知識」として蓄えておくことは大事であると思うのです。
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【編集後記】
シリーズ「自然災害への心構えと備え」はこの第3回目をもっていったん区切りをつけることといたします。シリーズで触れることができたのはほんの少しの内容ですが、災害時に対処すべきことの知識の一端となれば幸いです。
さんぽニュース編集員 伊藤貴子
