リチウムイオン二次電池が関連する事故を防ぐために−廃棄編−【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2021年08月05日 14時00分

前回このコーナーでは「リチウムイオン二次電池が関連する事故を防ぐためにー使用編ー」というタイトルでその使用等における注意点について触れました。今回は、リチウムイオン二次電池を使用した後の廃棄に焦点を当て、「リチウムイオン二次電池が関連する事故を防ぐためにー廃棄編ー」と題し、その廃棄時の注意点についてClose UPです。

リチウムイオン二次電池廃棄に関する事故

前回は、私たちの生活になくてはならないものとなっている、リチウムイオン二次電池を使用する際の注意点について触れました。生活になくてはならないものとなったということは、それだけ私たちの身の回りに存在するリチウムイオン二次電池の数が多くなったということを意味します。リチウムイオン二次電池が普及すれば、その役割を終えて廃棄されるリチウムイオン二次電池が増え、そしてそれに伴い、廃棄関連の事故も増加します。

まずは、リチウムイオン二次電池の廃棄に関連する事故には、どのような事例があるのか確認していきたいと思います。(以下、後で引用する環境省の資料での表記に合わせて「リチウムイオン二次電池」を「リチウムイオン電池」と記載します。)

2020/2 福岡・リサイクル工場の資材集積所で火災
リサイクル工場の資材集積所で火災が起きた。消防が出動して約3時間半後に鎮火したが、廃材入りのポリエチレン製袋が100袋以上焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、焼けた袋の中にはリチウム電池などの廃電池類などが入っていた。

2020/5 神奈川・高速道路でトラックの積荷の廃棄リチウムイオンバッテリの火災
高速道路を走行中のトラックで積荷のリチウムイオンバッテリの火災が起きた。消防が消火したが、同トラックの荷台部分が焼損した。けが人はなかった。同高速道路が一時車線規制された。警察と消防の調べでは、同トラックの荷台にはドラム缶4本が積載されており、いずれも中には廃棄するリチウムイオンバッテリが容量一杯に入っていた。

2020/6 東京・清掃工場の廃棄物処理施設で火災
清掃工場の不燃廃棄物処理施設内のピットで火災が起きた。消防が約6時間後に鎮火したが、同ピット内の廃棄物約400立方mが焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、不燃廃棄物に混入していたリチウム電池から出火した可能性がある。

2021/7 茨城・廃品回収業者の金属資材置場で火災
廃品回収業者の金属資材置場で火災が起きた。付近にいた人が消防に通報した。消防車6台が消火したが、同置場に積まれたリチウムイオン電池や廃家電など約50tが焼け、木造平屋建ての倉庫3棟が焼けた。けが人はなかった。

このように、廃棄物回収業者での移動中、保管中の事故事例や、自治体の廃棄ルールに従わずに廃棄したことによる廃棄物処理施設での事故事例などがみられます。
 

廃棄物収集車、廃棄物処理施設での事故事例

次に、リチウムイオン電池が関連した廃棄物収集車、廃棄物処理施設での事故事例についての詳細を見ていきたいと思います。

環境省「令和2年度リチウムイオン電池等処理困難物適正処理対策検討業務結果(業務報告書等抜粋)」から、リチウムイオン電池をはじめとした、二次電池に起因した収集車両、破砕施設の火災等の発生状況に関する調査結果を以下に引用します。
 
二次電池に起因した収集車両、破砕施設の火災等の発生状況(単一回答)
(環境省、令和2年度リチウムイオン電池等処理困難物適正処理対策検討業務結果(業務報告書等抜粋)
3. 市町村における廃棄物処理に係る二次電池等の取り扱い及び二次電池等に起因する火災等事故実態調査
 表3-7 二次電池に起因した収集車両、破砕施設の火災等の発生状況(SA)*より引用)
*SA(Single Answer):単一回答の意
二次電池に起因した火災等の具体的な発生場所(複数回答)
(環境省、令和2年度リチウムイオン電池等処理困難物適正処理対策検討業務結果(業務報告書等抜粋)
3.市町村における廃棄物処理に係る二次電池等の取り扱い及び二次電池等に起因する火災等事故実態調査
表3-8 二次電池に起因した火災等の具体的な発生場所(MA)**より引用)
**MA(Multi Answer):複数回答の意
火災等が発生したと回答した自治体での年間発生件数を合計すると、火花発生程度で発煙、出火が確認されなかった事例から、消防が出動して消火を行った規模の事例までを含めると約10,000件近くの事故が起きていることがわかります。なかでも、「出火し、自力で消火した」ケースは4,488件に上っています。リチウムイオン電池が関連した廃棄物収集車、廃棄物処理施設での事故の多さが伺える結果であるといえるかと思います。
 
火災の年間規模別発生件数(令和元年度) (複数回答)
(環境省、令和2年度リチウムイオン電池等処理困難物適正処理対策検討業務結果(業務報告書等抜粋)
3.市町村における廃棄物処理に係る二次電池等の取り扱い及び二次電池等に起因する火災等事故実態調査
表3-9 火災の年間規模別発生件数(令和元年度) (MA)**より引用)
**MA(Multi Answer):複数回答の意

では、リチウムイオン電池はどのように廃棄すればよいの?

前項までの語調だと、リチウムイオン電池を廃棄することが廃棄物収集車、廃棄物処理施設等の火災などの事故につながるというような印象を与えてしまうかもしれませんが、そうではありません。

まずは、自治体の廃棄ルールを確認し、それに従うことが重要です。廃棄物収集車、廃棄物処理施設等での火災には、本来リチウムイオン二次電池が廃棄されるべきでない区分の廃棄物に、破損・変形により、発熱・発火する危険性が高いリチウムイオン二次電池が混入していたことが原因で起きたと考えられる事例が多く見られます。

また、家電量販店などにはリチウムイオン電池の回収ボックス(小型充電式電池リサイクルボックス)が設置されています。回収されたリチウムイオン電池がリサイクルされることで、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)達成の促進につながります。

環境省では、破損・変形により、発熱・発火する危険性が高いリチウムイオン電池の廃棄、リサイクルについて、YouTubeでその適正な排出を啓発しています。

 セーフリサイクル!リチウムイオン電池!(正しい捨て方の動画:YouTube)

おだやかな性格のリチウムイオン電池さんがたまに激しくキレながら、リチウムイオン電池が使用されている製品とその廃棄方法について教えてくれます。すでにルールをご存知の方も、そうでない方も、改めて知っておきたいという方も、視聴してみてはいかがでしょうか。(筆者は非常に興味深く見ることができました。オススメです。)

 

【参考情報】

【参考記事】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子