2021年の事故を振り返る【週刊化学災害ニュースまとめ】 RISCAD LookBack

投稿日:2021年12月23日 10時00分

2021年も残すところあと約1週間となりました。みなさんにとってこの2021年はどのような年であったでしょうか。昨年から引き続き、新型コロナウイルス(COVID-19)に翻弄された2021年。新型コロナウイルス感染予防対策としてのワクチン接種がスタートし、夏には、コロナ禍でその開催やどうなることかと危ぶまれた東京オリンピックが1年遅れで開催されました。そして10月頃から、専門家ですら不思議がるほどの勢いで新型コロナウイルスの罹患者数が減少。オミクロン株の台頭に怯えつつ、果たして今後、新型コロナウイルスはどうなるのか、第6波は来るのか、そんなことを考えながらこの年末を迎えているわけです。

さて、「さんぽのひろば」2021年最後の更新となるこの「RISCAD LookBack」、私たち「さんぽのひろば」がウオッチしてきた、2021年に日本国内で起きた事故について、「2021年の事故を振り返る」と題し、事故事例をピックアップしてみたいと思います。

 

相次いだ地下駐車場の消火設備関連の二酸化炭素中毒の事故

まずは地下駐車場での消火設備に絡む二酸化炭素中毒の事故です。同様の事故が、2021年を迎える少し前、2020年12月末にも起きていました。

該当の事故事例を、2020年のものも含め発生順にみてみましょう。

2020/12/22 愛知・ホテルの地下駐車場で消火設備の誤作動により二酸化炭素中毒
ホテルのタワー式立体駐車場の地下で二酸化炭素消火設備から二酸化炭素が放出されて二酸化炭素中毒が起きた。同駐車場内で作業中であった作業員1名がガスを吸込んで死亡し、別の作業員や同ホテルの従業員計10名がガスを吸込んで病院に搬送され、1名が重症、9名が中等症や軽症となった。警察と消防の調べでは、同駐車場は車両を昇降機に乗せて昇降させるタワー式立体駐車場で、死亡した作業員1名は、2機ある昇降機のうち1機のチェーン交換などの改修作業中であった。同設備の誤作動か、作業で火気を使用する工程があり、同駐車場に設置されていた二酸化炭素消火設備の誤作動を防ぐため、別の作業員が設備を一時停止しようとしたが、誤って作動ボタンを押し、消火設備から二酸化炭素が放出された可能性がある。

2021/1/23 東京・地下駐車場で消火設備点検中に二酸化炭素中毒
高層ビルの地下1階の駐車場で二酸化炭素消火設備から二酸化炭素が放出されて二酸化炭素中毒が起きた。同駐車場内で同消火設備の点検作業中の作業員6名のうち、3名が現場に取り残された。消防が救助して、病院に搬送したが、うち2名が死亡し、1名が一時重体となった。警察と消防の調べでは、同消火設備の点検作業中に、消火設備の誤作動または誤操作により二酸化炭素が放出され、周囲に充満した可能性がある。

2021/4/15 東京・地下駐車場で二酸化炭素消火設備の誤作動により二酸化炭素中毒
4階建てのマンションの地下1階の機械式立体駐車場で二酸化炭素消火設備から二酸化炭素が放出されて二酸化炭素中毒が起きた。消火設備が作動したことで同駐車場のシャッタが閉じ、駐車場の天井の石膏ボードの張替作業中の作業員6名のうち、5名が駐車場に取り残され、うち4名が死亡し、1名が重体となり病院に搬送された。1名は自力で脱出してけがはなかった。警察と消防の調べでは、工事のために取り外していた消火設備の感知器の部品を取り付ける際に消火設備が誤作動し、「火災発生」のアナウンスとともに噴出器から二酸化炭素が放出され、シャッタが下りて二酸化炭素が駐車場内に充満した可能性がある。消火設備を手動で作動させるボタンは地上1階に設置されており、事故前に押された形跡はなかった。

これまで頻繁に耳にすることはなかった地下駐車場での消火設備に絡む二酸化炭素中毒の事故ですが、半年もしない間に同様の設備での二酸化炭素中毒の事故が3件発生し、計7名の方が亡くなるという痛ましい結果となりました。

 【参考記事】
   二酸化炭素中毒とは?【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

産業に影響を及ぼした半導体工場での火災

つぎに、国内での半導体不足の原因の一端を担ったと言っても過言ではない、2020年と2021年に起きた半導体製造工場での火災を発生順にみてみましょう。

2020/10/20 宮崎・半導体部品工場で火災
5階建ての半導体部品製造工場の4階で火災が起きた。消防隊員約70名が、化学消防車やはしご車など10台で3日半以上かけて鎮火したが、同工場が焼け、屋根や壁の一部が崩落した。消火中、皮膚に刺激を感じた消防隊員が複数名いたため、消火活動が一時中断された。同工場の従業員約400名は全員避難し、けが人はなかった。発生した異臭により、周辺住民が頭痛などで体調不良となった。工場周辺の市道などの通行が規制された。警察と消防の調べでは、IC製造に使用する可燃性物質に延焼して消火活動が難航した可能性がある。異臭は電気ケーブルの被覆などの塩化ビニルが燃焼して発生した塩化水素が原因の可能性がある。同工場では半導体集積回路(IC)を製造しており、工場内にはモノシランガスが保管されていた。消火後、放水によりできた水溜から低濃度のフッ化系物質が検出された。その後の調べで、未反応のチタンを除去する装置の端子部分が接触不良などにより発火して筐体に延焼し、工場内の可燃物に延焼して被害が拡大した可能性がある。また、クリーンルーム内の空気循環システムで火災の熱風が循環し、被害が拡大した可能性がある。

2021/03/19 茨城・半導体工場でめっき装置から火災
半導体製造工場でめっき装置から火災が起きた。消防が約5時間半後に鎮火したが、同工場約600平方mと装置17台が焼損するなどした。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、クリーンルーム内のめっき装置で過電流が発生し、出火した可能性がある。

世界的な半導体不足のなか、コロナ禍によるリモート需要が急拡大し、半導体不足に拍車がかかりました。そのような時期に重なった国内の2つの工場での火災は、日本の産業にとって更なる痛手となりました。

その他、工場などでの事故

最後に、編集員伊藤の印象に残った2021年の事故事例をあげてみます。

・ボイラから50m離れたところに停められていた車両が全焼

2021/04/26 埼玉・セメント工場の自家発電用ボイラで爆発
セメント製造工場の自家発電用ボイラで爆発が起きた。同工場での火災の発生はなかったが、爆発でボイラ熱源の木製チップや石炭が飛散し、隣接するパチンコ店の駐車場に駐車中の車両1台が全焼し、車両約20台の窓ガラスが破損した。付近の雑木林が焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、全焼した車両と同ボイラは約50m離れていた。同ボイラは木製チップと石炭を燃料として、工場の電源確保のため、年に2回の修繕を行いながら約25年間使用されていた。爆発時は作業員が遠隔管理中であった。

・鎮火まで20日という長い時間を要した粉塵爆発からの火災

2021/05/11 福島・亜鉛工場で分級ファンの不具合による粉塵爆発、火災
亜鉛工場で粉塵爆発、火災が起きた。付近の住民が消防に通報した。高温の亜鉛粉末は放水による消火や冷却ができず、消防が砂をまくなどして約20日後に鎮火した。同工場の側面や屋根、設備などが損傷した。敷地内の別の建屋への影響はなかった。協力会社社員1名が全身やけどで重傷を負い、2名が顔へのやけど、1名がけがで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、同工場は24時間操業で、錆止塗料や化粧品材料の金属亜鉛粉末を製造していた。亜鉛粉末の大きさを風で選別する分級ファンを稼働させた際に異音がしたため、重傷を負った協力会社社員が停止させようとしたが爆発した。分級ファンに不具合が起き、亜鉛粉末に着火した可能性がある。

 【参考記事】
   RISCAD Update 2021年5月第4週【週刊化学災害ニュース】

・相当量のエックス線被曝

2021/05/29 兵庫・製鉄所で装置の点検中にエックス線被曝
製鉄所で装置の点検中にエックス線被曝が起きた。社員2名が腕の腫れや体調不良で病院に搬送された。検査の結果、エックス線被曝が判明し、2名は治療のため入院した。装置のあった建屋はエックス線を遮蔽する構造で、外部へのエックス線の漏洩はなかった。警察と消防の調べでは、同社員2名は、エックス線照射により鋼板のめっきの厚さを測定する装置の整備後に体調不良となっており、同装置から漏れたエックス線を浴びた可能性がある。点検作業中、同装置は停止していた。

・同一のトナー工場での粉塵爆発(*と**は同一工場での事故)

2021/07/21 長野・プリンタトナー工場で粉塵爆発*
鉄骨造4階建てのプリンタトナー製造工場で粉塵爆発から火災が起きた。消防車7台が約2時間半後に鎮火したが、同工場の一部と機械などが焼けた。同工場内にいた従業員10数名は全員避難してけが人はなかった。警察と消防の調べでは、同工場ではプリンタ用トナーなどを生産しており、トナーを乾燥させる設備で静電気により粉塵爆発が起きた可能性がある。

2021/8/12 長野・プリンタトナー工場の乾燥機で粉塵爆発**
プリンタトナー製造工場の乾燥機で粉塵爆発が起きた。火災の発生はなかったが、同工場2階にあった生産用設備1台と3階の外壁の一部約45平方mが損傷した。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同工場では2021/7に静電気が原因の可能性がある粉塵爆発が発生して操業を停止していたが、安全対策を行い、8/7から再稼働していた。

 【参考記事】
   RISCAD Update 2021年8月第2週【週刊化学災害ニュース】

・花火工場での爆発事故

2021/10/05 北海道・花火工場の火薬庫で装置の通電点検中に爆発
煙火製造工場の火薬庫内で煙火打揚装置の点検中に爆発が起きた。従業員が消防に通報した。消防が約1時間半後に消火したが、火薬庫2棟が全焼し、隣接する車庫と事務所の壁の一部が焼けた。従業員1名がやけどで重傷、社長と別の従業員の計2名が軽傷を負った。警察と消防の調べでは、負傷した3名は、開催予定の花火大会の準備をしており、火薬庫内にあった煙火打揚装置の通電確認作業中に出火した可能性がある。また、火薬庫内に保管されていた煙火に着火して被害が拡大した可能性がある。

・物流倉庫での火災

2021/11/29 大阪・物流倉庫の火災で鎮火に5日以上
鉄筋コンクリート造6階建ての物流倉庫で火災が起きた。消防車延べ445台、ヘリコプタ2機が消火活動したが、同倉庫は窓などの開口部が少ないため放水が届きにくく、また、内部に熱や煙がこもり消火活動が難航し、5日と約8時間後に鎮火した。同倉庫延べ約56,000平方mのうち、約38,000平方mが焼け、保管されていた医薬品や食品、工具などが焼損した。出火時、同倉庫内には従業員100名がいたが全員避難してけが人はなかった。近くの別の会社の従業員1名が煙を吸込んで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、1階の中央部分に積まれていた荷物運搬用の紙製パレット付近から出火した可能性がある。

編集後記

2021年も多くの事故が起きました。事業所での事故のみならず、私たちが遭遇する可能性がある火災、交通事故なども、ゼロにするというのは非常に難しいことであると思います。しかしながら、起きてしまった事故の情報を共有することで、どのような時に、どのようなことがきっかけで事故が起きるのか、また、事故が起きやすい場所、どこに気をつけておくべきかなどの知識を備えておくことはできます。

「さんぽのひろば」は、2022年も事故を少しでもなくすお手伝いができるよう、尽力していきたいと思います。

今年もご愛読ありがとうございました。読者のみなさまの安全な2022年を心よりお祈りいたします。

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子