カセットこんろ用ガスボンベの破裂事故を防ぐには【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2023年01月12日 10時00分

2023年最初の「RISCAD CloseUP」です。年末年始、鍋料理でカセットこんろを使用された方は多いのではないかと思います。昨年末と年始に起きた2件のカセットこんろ関連の事故で、2名の方が命を落とされました。カセットこんろは、家庭内での調理はもちろん、アウトドアや、ひいては災害時にも使用できるコンパクトで便利なものです。しかし、その燃料となるのはLPガスなどの可燃性ガスであり、扱いを間違えると事故につながることがあります。今回は「カセットこんろ用ガスボンベの破裂事故を防ぐには」と題し、Close upです。

年末と年始に起きたカセットこんろが関連する事故

2022年12月と今年2023年1月に、以下のようなカセットこんろが関連する死亡事故が起きました。

2022/12 兵庫・飲食店の鉄板の上でカセットコこんろ用ガスボンベが破裂
飲食店でカセットこんろ用ガスボンベの破裂が起きた。テーブル席にいた客1名が胸部打撲による心臓の損傷で意識不明の重体となり、病院に搬送されたが、3日後に死亡した。店員や別の客にけがはなかった。警察と消防の調べでは、死亡した客はテーブルに鉄板が設置された席に座っており、鉄板でお好焼きを焼いて食べた後、店側が鉄板の上に設置したカセットこんろで焼肉を食べていた。鉄板の温度が十分下がっていないうちにカセットこんろを置いて使用したため、ガスボンベが加熱されて破裂した可能性がある。

2023/1 愛知・カセットこんろ用ガスボンベが破裂して火災
9階建ての県営住宅の1階の部屋でカセットこんろ用ガスボンベが破裂して火災が起きた。消防車など17台が約1時間後に消火したが、同室が焼けた。同室の住人1名が全身やけどの重傷で病院に搬送されたが、翌日に死亡した。警察と消防の調べでは、死亡した住人の救急搬送時の話や、同室からカセットこんろ用ガスボンベの破片が見つかったことから、調理中にカセットこんろ用ガスボンベが破裂した可能性がある。

事故による負傷はそれぞれ胸部打撲による心臓の損傷と全身やけどであり、事故の状況も違いますが、いずれも事故に遭われた方が亡くなられたというのが、痛ましい限りです。

2022年に起きたカセットこんろが関連する事故

ここで、私たち「さんぽのひろば」が2022年にウオッチしたカセットこんろ関連の事故を見ていきたいと思います。

2022/10 長野・アパートでカセットこんろ用ガスボンベが破裂
アパートの2階の部屋でカセットこんろ用ガスボンベが破裂した。同室の窓や網戸が吹飛び、外壁の一部が破損した。同室の住人1名が顔や手足にやけどを負って病院に搬送されたが軽傷であった。警察と消防の調べでは、調理に使用していたカセットこんろ用ガスボンベが破裂した可能性がある。

2022/11 静岡・飲食店でカセットコンロ用ガスボンベが破裂
飲食店でカセットコンロ用ガスボンベの破裂が起きた。同店の店長1名が顔や腕にやけどで軽傷を負った。店内には店員1名と客5名がいたが、避難してけがはなかった。警察と消防の調べでは、負傷した店長がカセットこんろで油を加熱していた際に、カセットこんろ用ガスボンベが破裂した可能性がある。

2022/12 福岡・共同住宅でカセットこんろ用ガスボンベが破裂
木造アパートの2階の部屋でカセットこんろ用ガスボンベが破裂した。同室の住人2名が負傷して病院に搬送されたが、いずれも軽傷であった。他の部屋への延焼などはなかった。警察と消防の調べでは、負傷した2名はカセットこんろで鍋を調理して食事をし、使用後のカセットこんろをIH調理器の上に置いていた。何らかの原因でIH調理器の電源が入り、カセットこんろのガスボンベが熱せられて破裂した可能性がある。

これら3件の事故では、負傷した方はみな幸い軽傷ということでした。

ここにあげた事例を含め、ガスボンベの破裂原因までは明らかになっていない事故は多いのですが、過去の事故を振り返ると、カセットこんろ用ガスボンベが加熱されて内圧が上昇したことにより破裂した可能性がある事故は多く見受けられます。

カセットこんろ用ガスボンベの破裂事故への注意換気

NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)のサイトに、以下のプレスリリースが掲載されていました。

 「使い方を誤ると破裂のおそれ~鍋の季節はカセットボンベの事故に注意~」
  (PDF資料)
  (ポスター)「カセットボンベの破裂に注意」
   (NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)サイトより)

これらの資料は平成29年12月発表のものですが、およそ5年が経過した現在でも、カセットこんろ用ガスボンベ破裂の事故は毎年数多く起きていて、2022/12の兵庫での事故や、2023/1の愛知での事故のように、不幸にも命を落とす人も出ています。

そしてもし、破裂したガスボンベから漏洩したガスに着火すれば、ガス爆発が起きて被害が拡大する可能性もあります。

カセットこんろを安全に使用するために

カセットこんろを使用する際に注意すべきことは色々がありますが、今回は特に、カセットこんろ用ガスボンベの破裂事故を防ぐためにはどのようなことに気をつけたらよいのか考えてみましょう。

これまで私たち「さんぽのひろば」がウオッチしてきた事例では、カセットこんろ用ガスボンベの置き場所に問題があったり、カセットこんろの使用方法に問題があったりしたことが原因となり、ガスボンベが加熱されて破裂するなどした事故が多く見受けられます。そのような加熱によるガスボンベの破裂事故を防ぐため、以下の点は特に気をつけたいところです。

カセットこんろ用ガスボンベやガスボンベを装着したカセットこんろを異常に加熱されるような場所に置かない

調理器具付近:調理中の火や熱でガスボンベが加熱される可能性があります

調理器具等の上:調理器具を使用するつもりがなくて置いても、誤って調理器具を作動させてしまうことなどでガスボンベが加熱される可能性があります

直射日光が当たるなど、高温になる場所:ガスボンベが高温になり異常な膨張が起きる可能性があります

カセットこんろ使用中に装着したガスボンベが加熱されるような使い方をしない

こんろを覆うような大きな鍋や鉄板などの調理器具を使用:熱がこもり、ガスボンベが加熱される可能性があります

こんろを2台以上並べて使用:熱がこもり、ガスボンベが加熱される可能性があります

一般社団法人日本ガス石油機器工業会のサイトに、より詳しくてわかりやすい情報がありますのでぜひ確認してみてください。

 「カセットこんろ・カセットボンベの安全な使い方」
   (一般社団法人日本ガス石油機器工業会サイトより)

また同サイト内では、カセットこんろとカセットこんろ用ガスボンベの経年劣化についても触れています。使用しても使用しなくても、道具はいずれ古くなります。使用期限を守り、経年劣化が原因となる事故も防ぎましょう。

 「カセットこんろとカセットボンベは経年劣化します。」
   (一般社団法人日本ガス石油機器工業会サイトより)

【参考情報】

【参考記事】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子